月見草


月見草を見ると 思い出す

貧乏人の 子沢山

母は 田畑や山に 賄い仕事

叱ったりせず 無口で地味で

もんぺ姿の 働きどおし

あの時は 確かに 着物 着ていた

花影 母の気配 月見草

 

月見草を 見ると 思い出す

隣の村へ 汽車に乗り

眼医者に連れて行かれ その帰り道

母の実家へ とぼとぼ 歩いた

黄色い花が 二人を見ていた

連れ立って 出かけることは 稀だった

何話したでしょうか 月見草

月見草を見ると 思い出す

我慢ばかりの 母でした

野良着の胸元から のぞいた肌は

日焼けた顔を あざむく白さで

私は似ずに 色黒だった

若き日の母親 あぶり出してくる

花影 母の気配 月見草