三本杉が かんざしのように 山のてっぺん ささっていたよ 「ねー お兄ちゃん あの山に もう一度連れてって」 実家に帰れば 兄に頼む 「あの山は もう けものみち 誰も近づかん」 還暦間近な私と 十上 兄ちゃんの会話 |
三本杉が さつまいも畑そばで
家のさつま芋ほり 眺めていたよ
「あれ お母ちゃん どうしたん あちこっち穴だらけ」
亡き母がへの字に 口を結ぶ
「またやられたな むじなども しわざ しょうがない」
大空 日本海 日の丸弁当 忘れられぬ全部
もっこ 揺れてた 五つの 背に
「ねー お父ちゃん 山梨が 食べたいな食べたいよ」
高い山梨の木 見上げ言った
「台風が 実を 落としたら 拾ってあげようかい」
しいの実 栗の木 どんぐり熊笹 忘れられぬ全部
真っ先に見つめる 三本杉
行ってみたいな もう一度
今はもう けものみち
昔 昔の おとぎばなしにしろと言うのかえ