私の 右に 座った(ひと)

「えくぼがあるね」と 言いました

畳を 拭いていたら その言葉

ふっと思い出して 手が止まる

打ち消し 力を 込めて拭く

還暦迎えた 春でした

 

小さな 針で つついたような

片方えくぼの ことなんか

久しく 気付く(ひと)は いなかった

忘れようと窓辺 見上げれば

鳩さえ つがいで 濡れそぼる

リラ冷えする朝 雨でした

 

鏡に 向かい 作った笑い

すぐさま ゆがんで 涙顔

天国(あのよ)に 逝った(ひと)も ほろ酔いで

笑顔好きといった 照れながら

毎日 えくぼを 見せていたら

どんなによかった ことでしょう

 

  

※リラの花の咲くころに、思わぬ寒さが訪れることがある。

この寒さのことを「リラ冷え」と呼ぶ