特発性大腿骨頭壊死症とは 大腿骨頭の一部が、血流の低下により壊死(骨が腐った状態ではなく、血が通わなくなって骨組織が死んだ状態)に陥った状態。 骨壊死が起こること(発生)と、痛みが出現すること(発症)、には時間的に差があることに注意が必要です。つまり、骨壊死があるだけでは痛みはありません。骨壊死に陥った部分が潰れることにより、痛みが出現します。したがって、骨壊死はあっても、生涯にわたり痛みをきたさないこともあります。 特発性大腿骨頭壊死症は、危険因子により、ステロイド性、アルコール性、そして明らかな危険因子のない狭義の特発性に分類されています。 万一、大腿骨頭壊死症になり、痛みが出現した場合でも、手術などの適切な治療により、痛みのない生活を送ることができますので、過度な心配は禁物です。 本症は厚生労働省の特定疾患に指定されており、医療費補助の対象となっています。特定疾患の申請については、整形外科専門医にご相談ください。 |
X線所見(股関節の単純X線像の正面像及び側画像より判断する) 1.骨頭圧潰 〔crescent sign(骨頭軟骨下骨折線像)を含む〕 2.骨頭内の帯状硬化像の形成 〔1,2についてはStage4(変形性関節症に進行した時期)を除いて関 節裂隙の狭小化がないこと、臼蓋には異常所見がないことを要する〕 |
検査所見 3.骨シンチグラム:骨頭のcold in hot像 4.MRI:骨頭内帯状低信号像(T1強調像でのいずれかの断面で、骨髄組織の正常信号域を分画す る画像) 5.骨生検標本での骨頭死像(連続した切片標本内に骨及び骨髄組織の壊死が存在し、健常域との 界面に繊維性組織や添加骨形成などの修復反応を認める像) |
診断の判定 上記項目のうち2つ以上を満たせば確定診断とする。 |
除外項目 腫瘍及び腫瘍性疾患、骨端異形成症は診断基準を満たすことあるが、除外を要する。 なお、外傷(大腿骨頸部骨折、外傷性股関節脱臼)、大腿骨頭すべり症、骨盤部放射線照射、減圧症、などに合併する大腿骨頭壊死、及び小児に発生するPrethes病は除外する。 |
Stage 1: X線像の特異的異常所見はないが,MRI,骨シンチグラム,または病理組織像で特異的異常 所見がある時期 Stage 2: X線像で帯状硬化像があるが,骨頭の圧潰(collapse)がない時期 ※トニーはこのStage2の部類と診断されている Stage 3: 骨頭の圧潰があるが,関節裂隙は保たれている時期(骨頭および臼蓋の軽度な骨棘形成はあ ってもよい) Stage 3A:圧潰が3mm 未満の時期 Stage 3B:圧潰が3mm 以上の時期 Stage 4: 明らかな関節症性変化が出現する時期 |
骨頭の正面と側面の2 方向X 線像で評価する(正面像では骨頭圧潰が明らかでなくても側面像で圧潰が 明らかであれば側面像所見を採用して病期を判定すること) 側面像は股関節屈曲90 度・外転45 度・内外旋中間位で正面から撮影する(杉岡法) |
特発性大腿骨頭壊死症の自然経過のポイント |
@ Stage1,2では基本的には股関節の疼痛を生じず、Stage3A以降に初めて疼痛が出現する。 A 骨頭の圧潰進行の頻度はTypeAで16%,TypeBで50%,TypeC-1で61%,TypeC-2で91% であり、病型依存性に骨頭圧潰進行の確率が高くなる。 B IONの手術法の選択 TypeA:基本的に手術を要さない確率が高い。 TypeB:進行例が約半数に認められるので側面像の評価も行って検討する。 TypeC-1:進行の確率がより高くなるので積極的な骨・関節温存手術の適応となる。 TypeC-2:高い確率で進行するうえ、骨切り術の適応外のものもあり、人工股関節置換術の適応も視 野に入れる必要がある。 |
(−)骨頭圧潰なし (+)骨頭圧潰あり |
側面(sagittal)MRI所見 | ||||
新病型分類 | 骨頭圧潰 | A | B | C1 | C2 |
TypeA | (−) (+) |
11関節 1関節(8%) |
5関節 2関節(29%) |
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TypeB | (−) (+) |
4関節 2関節(33%) |
2関節 3関節(60%) |
0関節 1関節(100%) |
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TypeC-1 | (−) (+) |
9関節 12関節(57%) |
0関節 2関節(100%) |
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TypeC-2 | (−) (+) |
0関節 1関節(92%) |
1関節 11関節(92%) |
1関節 8関節(89%) |