トニーの特発性大腿骨頭壊死症への挑戦

































加圧リハビリ
その一歩を踏み出さなければ奇跡は起こらない・・・・・


特発性大腿骨頭壊死症−トニーの挑戦


平成17年1月末、右股関節に違和感を感じたが、地元の町医者には原因が判らず、段々と痛みが増した 1年半後の平成18年8月、別の整形外科で特発性大腿骨頭壊死症と診断されました。

医者には、大腿骨頭回転骨切り術を勧められましたが、加圧トレーニングで骨頭の圧潰を防ぎ、保存療法を続けながら、完治を目指しています。

現在の診断所見
 右  Stage2 タイプC−2  
 左  Stage2 タイプC−1  
 特発性大腿骨頭壊死症とは

大腿骨頭の一部が、血流の低下により壊死(骨が腐った状態ではなく、血が通わなくなって骨組織が死んだ状態)に陥った状態。
骨壊死が起こること(発生)と、痛みが出現すること(発症)、には時間的に差があることに注意が必要です。つまり、骨壊死があるだけでは痛みはありません。骨壊死に陥った部分が潰れることにより、痛みが出現します。したがって、骨壊死はあっても、生涯にわたり痛みをきたさないこともあります。
特発性大腿骨頭壊死症は、危険因子により、ステロイド性、アルコール性、そして明らかな危険因子のない狭義の特発性に分類されています。
万一、大腿骨頭壊死症になり、痛みが出現した場合でも、手術などの適切な治療により、痛みのない生活を送ることができますので、過度な心配は禁物です。
本症は厚生労働省の特定疾患に指定されており、医療費補助の対象となっています。特定疾患の申請については、整形外科専門医にご相談ください。


表1 2001年改訂版 特発性大腿骨頭壊死症診断基準
X線所見(股関節の単純X線像の正面像及び側画像より判断する)
 1.骨頭圧潰 〔crescent sign(骨頭軟骨下骨折線像)を含む〕
 2.骨頭内の帯状硬化像の形成 〔1,2についてはStage4(変形性関節症に進行した時期)を除いて関  節裂隙の狭小化がないこと、臼蓋には異常所見がないことを要する〕
検査所見
 3.骨シンチグラム:骨頭のcold in hot像
 4.MRI:骨頭内帯状低信号像(T1強調像でのいずれかの断面で、骨髄組織の正常信号域を分画す  る画像)
 5.骨生検標本での骨頭死像(連続した切片標本内に骨及び骨髄組織の壊死が存在し、健常域との   界面に繊維性組織や添加骨形成などの修復反応を認める像)
診断の判定
 上記項目のうち2つ以上を満たせば確定診断とする。
除外項目
 腫瘍及び腫瘍性疾患、骨端異形成症は診断基準を満たすことあるが、除外を要する。
 なお、外傷(大腿骨頸部骨折、外傷性股関節脱臼)、大腿骨頭すべり症、骨盤部放射線照射、減圧症、などに合併する大腿骨頭壊死、及び小児に発生するPrethes病は除外する。

1 病期
表2 2001年改訂版 特発性大腿骨頭壊死症の病期分類
Stage 1: X線像の特異的異常所見はないが,MRI,骨シンチグラム,または病理組織像で特異的異常 
      所見がある時期
Stage 2: X線像で帯状硬化像があるが,骨頭の圧潰(collapse)がない時期
 ※トニーはこのStage2の部類と診断されている
Stage 3: 骨頭の圧潰があるが,関節裂隙は保たれている時期(骨頭および臼蓋の軽度な骨棘形成はあ
      ってもよい)
         Stage 3A:圧潰が3mm 未満の時期
         Stage 3B:圧潰が3mm 以上の時期
Stage 4: 明らかな関節症性変化が出現する時期
骨頭の正面と側面の2 方向X 線像で評価する(正面像では骨頭圧潰が明らかでなくても側面像で圧潰が
明らかであれば側面像所見を採用して病期を判定すること)
側面像は股関節屈曲90 度・外転45 度・内外旋中間位で正面から撮影する(杉岡法)

Stage1
 骨壊死が起こると壊死領域周囲に繊維性修復組織を伴った反応性界面が現れる。この時期にはX線検査では異常所見はなく、MRIによって壊死巣に対する反応性界面が認められ診断につながる。
 骨壊死領域辺縁の修復反応は、T1強調像における帯状硬化像(おびじょうこうかぞう)としてみられる。組織学的に、T1強調像の帯状低信号像は反応性界面であり、帯状低信号像より近位は無反応性壊死層である。
Stage2
 修復が進めば壊死領域への血管結合組織の侵入によって、骨吸収と骨形成の過程が生じる。反応性界面の周辺では、以前に死んだ海綿骨が部分的に繊維組織や層板骨によって覆われ、帯状硬化像としてX線学的に捉えられる。
Stage3
 壊死海綿骨の吸収により境界部の壊死骨は強度が低下して関節圧力に耐え切れなくなり、軟骨下骨折や最終的な圧潰を起こす。
 Stage3は圧潰の程度で臨床症状や関節機能に差があるため、3mmを境にAとBに細分されている。
Stage4
 関節の圧潰は最終的に関節軟骨の変形を引き起こし、変形性股関節症へと移行する。

2 病型
 新しい病型分類(図1)は、従来のX線学的な分類を基に改定され、特徴的なX線所見とMRI所見の両方または何れかにより壊死域の荷重部に占める割合で決定される。

図1 2001年改訂版 特発性大腿骨頭壊死症の病型分類


Type A:壊死域が臼蓋荷重面の内側1/3未満にとどまるもの
     または壊死域が非荷重部のみに存在するもの
Type B:壊死域が臼蓋荷重面の内側1/3 以上2/3 未満の範囲に存在するもの
Type C:壊死域が臼蓋荷重面の内側2/3 以上におよぶもの
Type C-1:壊死域の外側端が臼蓋縁内にあるもの
Type C-2:壊死域の外側端が臼蓋縁をこえるもの

注1) X 線/MRI の両方またはいずれかで判定する
注2) X 線は股関節正面像で判定する
注3) MRI はT1 強調像の冠状断骨頭中央撮像面で判定する
注4) 臼蓋荷重面の算定方法:臼蓋縁と涙痕下縁を結ぶ線の垂直2 等分線が臼蓋と交差した点から外側を   臼蓋荷重面とする。

■骨頭圧潰の危険性
 壊死部の荷重部に占める割合が大きいほど、骨頭圧潰の危険性が高い。
【TypeA:0%】 【TypeB:40%】 【TypeC:90%】

特発性大腿骨頭壊死症の自然経過のポイント
@ Stage1,2では基本的には股関節の疼痛を生じず、Stage3A以降に初めて疼痛が出現する。
A 骨頭の圧潰進行の頻度はTypeAで16%,TypeBで50%,TypeC-1で61%,TypeC-2で91%   であり、病型依存性に骨頭圧潰進行の確率が高くなる。
B IONの手術法の選択
  TypeA:基本的に手術を要さない確率が高い。
  TypeB:進行例が約半数に認められるので側面像の評価も行って検討する。
  TypeC-1:進行の確率がより高くなるので積極的な骨・関節温存手術の適応となる。
  TypeC-2:高い確率で進行するうえ、骨切り術の適応外のものもあり、人工股関節置換術の適応も視        野に入れる必要がある。



自然経過
 新しい診断基準、病期、病型分類に基づいて
  (−)骨頭圧潰なし
  (+)骨頭圧潰あり
             側面(sagittal)MRI所見
 新病型分類  骨頭圧潰     A     B     C1     C2
  TypeA   (−)
  (+)
 11関節
 1関節(8%)
 5関節
 2関節(29%)


  TypeB   (−)
  (+)

 4関節
 2関節(33%)
 2関節
 3関節(60%)
 0関節
 1関節(100%)
  TypeC-1   (−)
  (+)


 9関節
 12関節(57%)
 0関節
 2関節(100%)
  TypeC-2   (−)
  (+)

 0関節
 1関節(92%)
 1関節
 11関節(92%)
 1関節
 8関節(89%)