LNGフェリー

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2023年1月13日、大阪と九州を結ぶ「フェリーさんふらわあ」で、

日本初のLNGフェリー「くれない」が就航しました。

LNGとは、液化天然ガス( Liquid Natural Gas )の略称です。



1912年に大阪商船(現 商船三井)が大阪−別府航路を開設するときに投入したのが初代「紅丸」でした。

当時の船舶は、燃料に石炭を使っていました。

その後に就航した2代目「紅丸」は、重油を燃料としたディーゼルエンジンを搭載し、

現代まで続くディーゼル船の先駆けとなりました。

そして、今回、天然ガスを燃料にした「くれない」の登場です。



【天然ガスは、他の化石燃料に比べて、二酸化炭素の排出量が少ない。】


天然ガスは、石炭や石油に比べて、二酸化炭素の排出量が少ない・・・と言われていますが、

なぜ、そのようなことが言えるのでしょうか?



高校化学で有機化合物について学びます。

炭素原子と水素原子のみからできている有機化合物に「アルカン」というものがあります。

連結した炭素原子の背骨に肋骨である水素原子が結合しているイメージです。

炭素数1のものを「メタン」、炭素数2のものを「エタン」、炭素数3のものを「プロパン」と言い、

以下、「ブタン」「ペンタン」「ヘキサン」・・・と続きます。

炭素数が多くなるほど、分子量が大きくなり、融点・沸点が高くなります。・・・なぜ?

したがって、炭素数が少ないものは気体の状態、炭素数が多いものは固体の状態になりやすいです。



打って変って「地学」の話ですが、

古生代の植物など生物の死骸が土に埋もれ、長い年月を経て形成されたのが石炭です。

そこまで長い年月ではないけれど、中生代頃から形成されてきたのが石油です。

さらに新しい時代になり、まだ石炭や石油にはなっておらず、気化しやすいガス成分だけ溜まったのが天然ガス。

したがって、炭素数が少ないアルカンは、石炭よりも石油、石油よりも天然ガスに多く、

天然ガスの主成分は、炭素数1のメタンです。



理科年表に、エタン(炭素数2)、プロパン(炭素数3)、オクタン(炭素数8)の燃焼熱が載っていました。

これらのデータを使って、“同じ熱量を得るときに発生させる二酸化炭素の量”を比較してみると、

(エタン)<(プロパン)<(オクタン)となりました。・・・どのような計算をしているのでしょう?

つまり、炭素数が少ないアルカンの方が、少ない二酸化炭素排出量で済む・・・ということです。

これが、“天然ガスはクリーンなエネルギー”と呼ばれる所以でしょうか。



【なぜ“液化”なのか?・・・コンパクトにするため】


液化天然ガスは、気体である天然ガスを冷却により液体にしたもので、

これにより体積を小さくできるので、持ち運びがしやすくなります。

まぁ、もちろん、“持ち運び”と言っても、

巨大なフェリーを大阪−別府間で往復させるだけの燃料を積まないといけないので、その量は相当なもの。

写真で確認できるように、タンクの高さが大人の背丈よりも大きく、長さまで考えると、かなり巨大です。

液化しても、これだけの量が必要なのですから、気体のままだと、大変な体積になってしまいます。



ここで、試しに、気体のままだと、どれくらいの体積になってしまうのか、計算してみましょう!

大阪−別府航路の1往復に必要な天然ガスは「50トン」です。

これをグラムに換算すると、(50t)=(50000kg)=(50000000g)です。



天然ガスの成分が100%メタンだとします。

化学で学びますが、メタンの分子量は16です。 つまり、1モルで16g。

気体は、1モルで22.4Lになりますから、16gで22.4Lということになります。

今、50000000gですから、70000000Lになります。



この体積がタンクローリー何台分になるか計算してみましょう!

1台のタンクローリーに積める燃料は30000Lです。

ということは、70000000÷30000を計算すれば良いですね。

答えは、2333.33・・・となります。・・・2000台以上。



液化しないで、気体のままだと、とんでもないボリュームになってしまいますね。

こりゃ、液化する価値ありですね。


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