リチウムの可能性

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2019年10月9日、吉野彰氏(1948−現在)が「ノーベル化学賞」を受賞しました。

「リチウムイオン二次電池を開発した。」というのが受賞理由です。

・・・というわけで、リチウムについて少し見ていきましょう!



リチウムは、スウェーデンの化学者ヨアン・アルフェドソン(1792−1841)によって、

1817年にペタル石と呼ばれる鉱石から発見されました。

19世紀の初期にスウェーデンで鉱石から新元素が発見されたことには「十分あり得る!」と頷けますね。

そう言えば、ノーベル賞の授賞式が行われるのもスウェーデンです。

これらをつなぐキーワードは「火薬」です。・・・詳しくは授業にて♪



単体のリチウムが単離されたのは、1821年のこと。

イギリスの化学者ウィリアム・ブランド(1788−1866)によってです。

酸化リチウムを電気分解することにより、単体のリチウムを得ました。

電気分解で新元素の単体を得た人物として最も有名なのはハンフリー・デービー(1778−1829)です。

デービーもイギリス人であり、この時代は、イギリスで電気分解が盛んだったのでしょうかね。

デービーは、水酸化ナトリウムからナトリウムを、水酸化カリウムからカリウムを、それぞれ単離しました。

ブランドがリチウムを単離したのは、水酸化リチウムからでなく酸化リチウムですが、

これは、ナトリウムやカリウムに比べると、リチウムの反応性がやや穏やかであることに関係しているのかも。



20世紀になると、工業レベルでのリチウム製造が確立します(1923年)。

当時の主な用途は、航空機のエンジンなどに用いる「グリース(潤滑剤)」でした。

機械の可動部分は、そのままだと摩擦熱を発生してしまうので、

機械を滑らかに動かし、摩擦を減らさなくてはなりません。・・・そこで、真っ先に思いつくのは「油」です。

ただ、油だけだと、流動性が高く、すぐになくなってしまうので、粘りを出すために石鹸を混ぜておくのです。

高校化学で学ぶ石鹸として、高級脂肪酸のアルカリ金属塩がしばしば扱われます。

ナトリウムやカリウムを用いた石鹸は、主に洗浄用に使われますが、

リチウムはアルカリ土類金属に近い性質をもつため、洗浄用よりはグリース用に使われます。

アルカリ金属の炭酸塩は水に溶けやすいですが、アルカリ土類金属の炭酸塩は水に溶けにくいのと似ていますね。



現在、リチウムが最も利用されている分野は「窯業」です。陶器やガラスの添加剤として使用されています。

昔のガラスは、カリウムを混ぜていましたが、

原材料である炭酸カリウムを得るためには、木を伐採し、燃やして灰を得る必要がありました。

森林破壊につながるため、カリウムの使用をやめ、代わりに用いたのがナトリウムです。

炭酸ナトリウムを得るための製法「ソルベー法(アンモニアソーダ法)」は高校化学でもお馴染み。

科学が進歩すると、ガラスにも色々な用途が生じます。その1つがレンズ。

リチウムは、ナトリウムに比べて電荷密度が大きいので、ガラスを構成する酸素イオンを大きく分極させます。

その結果、屈折率が大きくなるので、特殊なレンズを作ることができるのです。



リチウムの用途として窯業に肉薄している分野が「電池」です。

太陽光発電や風力発電といった自然エネルギーを利用した発電は、

環境にやさしいのですが、そのまま使用するには供給が安定しないという弱点があります。

そこで必要なのが、発電された電気を蓄積しておく二次電池です。

1859年に発明された世界初の二次電池である鉛蓄電池は、高校化学で学びます。

その後、ニッケルを用いた二次電池へと時代が移行していきます。

携帯電話やノートパソコンといった携帯機器の誕生により、より小型軽量な二次電池が求められ、

リチウムを用いた二次電池が普及し始めました。

今後、電解液部分を固体化することで、更なる小型化が進むかも知れません。

電池については、「オリジナル授業」において詳しく取り扱いたいと思います。

「オリジナル授業」について、新年の更新をお待ちください。



将来に目を向けると、「有機金属化学」の分野でもリチウムは活躍するでしょう。

有機金属化学とは、無機化学と有機化学が融合した学問領域です。

有機化合物(炭素化合物)を扱う有機化学では、医薬品、染料、合成樹脂など有機化合物の合成などを行います。

有機化合物の性質は、いくつの炭素原子がどのように結合しているかによって大きく変わり、

炭素骨格を長くしたり、短くしたりして、有機化合物の性質をコントロールしています。

有機金属である有機リチウム化合物の1つメチルリチウムは、メチル基の付加を担う重要な物質です。

有機化合物にメチル基が付加されると、炭素数が1増加し、それに伴い、有機化合物の性質も変化します。

この例のように、有機金属を用いた有機合成化学の分野においても、リチウムは活躍するでしょう。


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