お客は物を買うのではない
今日、私は六人のセールスマンに向かって何を売っているかと尋ねてみたら、六つの答えをもらった。その六人は石鹸、自動車、乾草、穀類を販売している人たちであったが、驚いたことに誰も本当の答えをしてくれた者はいなかった。このセールスマン達は何を販売しているかを知らないので、現在以上の販売成績を期待することはできない。
事実、我々は誰でも、物それ自身よりも、その物の効果を販売する仕事に従事している。例えば、石鹸を販売している人は、石鹸という物を販売しているのではない。石鹸の効果を売っているのである。清潔に因って来るところの幸福感を売っているのである。健康を販売している。顔の色艶を売っているのである。
書籍のセールスマンはロマンスを、娯楽を、戦慄を、興奮を、または知識を販売しているのである。
衣類のセールスマンは、立派な身支度、尊敬を受ける容姿、誰にもひけをとらぬ自信や、人に好かれる印象を与える機会を売っているのである。
すべてこの調子である。何を販売するにしても、ちょっとおかしく聞こえるかもしれないが、物それ自身を販売しているのではない。販売しているのは、そのものの効果である。お客に何かお役に立っている点をである。
この効果という言葉の意味をよく考え出したら、その瞬間から販売に行き詰まりはない。販売成績は上昇の一途あるのみである。
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