人形劇 五頭龍と弁天姫 第一幕
背景なし 暗幕等
【BGM 夕闇のシルエット】
13秒あたりから。
昔々、今から千五百年ほど前のこと、相模の国鎌倉にある、深沢という山の中に、底なし沼があり、そこに五頭龍という恐ろしい龍が住んでおりました。
五頭龍はしばしば里に下りてきては悪さをし、村人達を苦しめておりました。
五頭龍、上手(観客から見て右)から、のっし、のっしと登場。
音楽次第に小さくなる。
中央で立ち止まり、一拍置いて、グイッと正面を向き。観客を睨み付ける。
(五)「ワシがこの沼に住む五頭龍じゃ。 ワシは悪さをして村人を苦しめるのが何よりも楽しみじゃ。そうじゃ、山を切り崩して道を塞いでやろう。」
【崖崩れ】
(五)「わっはっは、愉快愉快、こっちの崖も崩してやれ。エイッ。」 【崖崩れ】
「そうじゃ、今度は洪水をおこして、田や、畑を沈めてしまおう。」
【洪水】
【逃げ惑う人々】
(五)「村人達が逃げておるわ。はっはっは、愉快愉快。よし、次は火の雨を降らせてやろうぞい。エーイッ、どうじゃ。」
【逃げ惑う人々】
(五)「わっはっは。ハアッツ、ハッ、ハ。わっ、はははは。」
五頭龍、笑いながら、上手へ退場。
(背景)村人達が困り顔で話し合っている図 村人登場 。
【BGM 夜空へのレクイエム】
こうして五頭龍はしばしば里へ下りてきては悪さを繰り返し村人達を苦しめていました。中でも村人が一番恐れていたことは、突然、村にやってきては子供を丸呑みにして、山へ帰っていくことでした。
15秒あたり。
男)「こんなに次から次へと災難が続いては、村は死に絶えてしもうわい。どうじゃ、五頭龍様をなだめるため、こちらから人身御供として子供を差し出さねばおさまるめい。」
27秒あたり。
その後、村では毎年、泣く泣く幼い子供を生け贄として五頭龍に差し出し、そのおかげで静かな一年を送ることができたのでした。 が、それも長くは続きませんでした。 どの家も子供を差し出し後継ぎを無くした者も現れ、村人の苦しみは増すばかりでした。
57秒あたり アドリブ推奨。自分の言葉で。一人5~7秒ある、焦らずに 。
(女)「わしゃあ、もういやじゃ。こっだらこと、もう耐えられねえ。」
(女)「おらだって、この乳飲み子を龍に差し出すのは厭じゃ。」
(男)「そうじゃ、子供を人身御供にするのは、もうやめるべえ。」
(男、女)「そうすっべえ、そうすっべえ。」
(長老)「待て待て、みなの衆。 早まってはいかん。こんなことがいつまでも続くわけがねえ。 今に善い神様がお助けくださるはずじゃ。きっとそうじゃ。」
1分40秒あたり。 村人消える。 BGMフェイドアウト 背景撤去(暗幕)