伊藤博文はロシアそのものと交渉しようとしたが、日本首脳部はロシアの極東での勢力伸長を抑えたいイギリスに働きかけ、日英同盟を実現する。また、アメリカ大統領ルーズベルトに和平調停を依頼していた。専制国家の官僚は国家利益より自分の官僚的な立場についての配慮によって行動することから、ルーズベルトはロシアは専制国家は必ず負ける、と
考えていた。
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ロシア皇帝ニコライII世は、ドイツ皇帝ウィルヘルムII世に太平洋を征せよ、と煽られた。ドイツは露仏同盟により挟まれており、ロシアの強大な戦略が重圧となっていた。ロシアが極東へ戦力を割き、しかも劣勢になることで、
ヨーロッパにおいて、フランスはロシアの後ろ盾がなくなり、イギリスの圧力により、ロシアを支援することが困難になっていた。ロシアは専制的な官僚制度の弊害から、宮廷政府と軍事がうまく連携していなかった。ロシア本国の参謀が、派遣したバルチック艦隊の行方を知らなかったのもその一例。
また、ロシア皇帝とヴィッテやクロパトキンなどの首脳は、満州からの撤退と韓国を日本の勢力圏として承認する意思を決めていたが、一部の皇帝側近の極右派が、外国との交渉権も含めて極東太守に与え、日露交渉の余地がなくなったことも、戦争を不可避とした。
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