PEACE TOPICS

『平和新聞ながさき版』不定期掲載

【2010年11月15日】

シリーズ佐世保基地はいま7

海兵隊化する佐世保の陸上自衛隊


▲アーケード内を行進する西部方面普通科連隊の隊員

 陸上自衛隊相浦駐屯地――「普天間代替基地」で米海兵隊の移設先候補としてあげられました。海岸に面した陸自駐屯地は全国に例を見ないものです。

●西部方面普通科連隊の創設

 02年3月、ここに、西部方面普通科連隊(定員660名)が創設されました。わが国最初の「有事即応部隊」で、離島防衛を名目にしています。しかし、(1)「生存型自立訓練」、(2)陣地を確保して本隊を待つという任務、(3)どの部隊とも合流するなど、“海兵隊”的性格をもつ陸上自衛隊の特殊部隊です。

 創設4ヶ月で3人の自殺者を出すなどその過酷な訓練内容が問われ、国会議員の調査も入ったことがあります。

●「尖閣列島有事」も想定

 06年11月、空母キティホークの佐世保寄港後に日米共同演習が行われました。この中で、同部隊は、佐世保基地から海自輸送艦に乗り、硫黄島周辺で「尖閣列島有事」を想定した訓練を展開しました。

 また10年度予算には初めて同部隊を中心とする離島対処の実動演習として約3億円が計上されました。沖縄周辺の離島に外国軍やテロ組織が侵攻したという、あり得ない想定での演習です。

●米海兵隊から直接手ほどき

 06年から同部隊は毎年、米海兵隊基地で約3週間にわたる共同訓練を行い、米海兵隊から直接、強襲上陸の手ほどきをうけています。

 それは銃を持ったまま遠泳したり、足ひれをつけた偵察泳法を学んだりゴムボートを操ったりするものです。さらに米揚陸艦に乗船し、LCACなどの上陸艇を使って夜間強襲上陸を行っています。この訓練コースの内容は海兵隊が西太平洋に配備される前に受ける12週間の訓練を縮小したものといいます。そもそも海兵隊的性格を持つ陸自特殊部隊にまさに海兵隊の能力を身に付けさせる訓練です。

 一方、第12普通科連隊(鹿児島)、第1混成団(沖縄)の部隊も渡米訓練に加わるようになりました。防衛省はこれらの部隊の「海兵隊化」を計画しています。

●武装パレードが恒常化

 西部方面普通科連隊は創設後すぐに軍事パレードを始めました。03年には「市民に自衛隊の真の姿を見てもらいたい」と佐世保で初めての武装パレードを強行。以来、毎年行われています。大量動員された警察に警備され、アーケード内を長さ1mもの「小銃」をかかえて行進する姿は戦前に逆戻りしたかのようです。


【2010年10月15日】

シリーズ佐世保基地はいま6

有事使用のための港湾調査の拠点


▲立神係船池に接岸された4隻の掃海艦

 昨年12月、米海軍佐世保基地を拠点として西太平洋で軍事活動を展開していた2隻の掃海艦「アヴェンジャー」と「ディフェンダー」が正式に佐世保配備となりました。これによって佐世保基地の掃海艦は計4隻と、過去最大数になっています。

 今回の追加配備は米軍の「基地再配備・閉鎖計画」によって、10隻の掃海艦を置いていた米テキサス州イングルサイド海軍基地の閉鎖にともなう措置です。母国の基地は縮小・閉鎖し、「抑止」を口実に在日米軍基地強化を押し付ける、こんな身勝手は許されません。

●米掃海艦の本来の役割

 そもそも掃海艦は機雷処理艦です。「殴り込み部隊」の上陸を阻止するために相手国が海中に敷設した機雷を爆破して強襲揚陸作戦を敢行するのに不可欠な船です。磁気機雷に反応しないように船体は木造で表面は強化プラスチック。それでも鉄製機器・部品が地球磁気によって磁気を帯びてしまうので、海自佐世保磁気測定所(共同利用施設)で定期的に消磁を行っています。

 日常的には強襲揚陸部隊に同行して各種訓練へ参加、また海自掃海艇部隊との掃海特別訓練(陸奥湾、周防灘、日向灘)に参加しています。

●全国の港湾調査を公然と

民間港に寄港した米掃海艦。
「初」は米艦の初寄港
年月 掃海艦 寄港地
07年06月 ガーディアン 与那国祖納港
07年06月 パトリオット 与那国祖納港
08年07月 ガーディアン 宮崎港
09年03月 ガーディアン 佐伯港
09年04月 ガーディアン 石垣港
09年04月 パトリオット 石垣港
09年10月 ディフェンダー 屋久島宮之浦港
09年10月 パトリオット 函館港
10年09月 ディフェンダー 宮古島平良港

 その一方で、このところ目立ってきているのが国内の港湾調査です。
 もともと佐世保の掃海艦ガーディアン、パトリオットは救難艦ビューフォートの代替として配備されたものです。ビューフォートは全国各地の港湾に関する情報を詳細に調べあげていました。その任務が掃海艦に引き継がれていても不思議はありません。

 寄港の名目は決まり切って「乗組員の休養と友好親善」です。しかし復帰後初の米艦船寄港に沖縄県民・首長は拒否の態度を明確にしました。それでも米軍は日米地位協定第5条を振りかざして入港を強行しました。

 そして与那国への寄港の際には港内の海底地形や陸上部の施設について調査を行っていたことが明らかになりました。宮古島では、在沖米総領事が記者会見で「入港してみないと分からない部分が、港に入るプロセスの中で分かった。今回の経験をふまえ、今後の災害や防衛に生かせる」と公言しました。

 明らかに、有事の際に日本全国の港を自由に効率良く使用するためにデータを蓄積しています。その拠点が佐世保基地なのです。


【2010年9月25日】

シリーズ佐世保基地はいま5

投入された基地建設費1564億円


▲高速道路のインターチェンジ脇に建設中の米軍家族住宅:高層68戸、低層3棟20戸

 日本政府が米国の圧力に屈して在日米軍基地の基地建設費(いわゆる「思いやり予算」の施設整備費)に国民の税金の投入を始めてから32年になります。この間の総金額は2兆1714億円にものぼります。防衛省が笠井亮衆議院議員(日本共産党)の求めで国会に提出した資料で明らかになりました。

 一方、佐世保基地の基地建設費は累計で1564億円を超えました。この5年間で約343億円が注ぎ込まれたことになります。

●この5年間の住宅建設の9割が佐世保!

 この5年間、全国の米軍住宅建設に予算措置がとられたのはちょうど100戸分。うち88戸が現在建設中の佐世保基地のドラゴンハイツ地区です(写真)。この地区にあった米軍住宅は、明治末期から大正末期に建設されたものが提供されていました。老朽化に伴い全面取り壊しとなり、高層68戸・低層3棟20戸の計88戸が建てられます。完成は2011年3月末。

●「すみ分け」予算も着々と

 米軍の横暴による住民との衝突を、新基地を米軍に提供することで回避するという「すみ分け」にも着々と税金が投入されてきました。

 長さ520mの米軍専用岸壁には、この5年間に60億円が注ぎ込まれ、累計は170億円になりました。すでに工事は完了し、11月に米軍に引き渡されるといいます。

 また西海市に建設中のLCAC新駐機場は132億円増の累計149億円になりました。今年度発注済みの工事は試運転場整備(24.6億円)、洗機場新設等(5.9億円)、整備格納庫等(7.6億円)。他に工場や管理棟新設など約20件の入札が予定されています。

 一方、針尾弾薬庫の統合近代化についても、弾薬庫配置の基本検討の入札が行われます。

★この32 年間に注ぎ込まれた基地建設費
施設名 件数 金額
佐世保海軍施設 190 件 577 億4500 万円
佐世保ドライドック地区 2 件 2 億1700 万円
赤崎貯油所 20 件 203 億6200 万円
佐世保弾薬補給所 1 件 6500 万円
庵崎貯油所 5 件 64 億6400 万円
横瀬貯油所 10 件 277 億6400 万円
針尾島弾薬集積所 4 件 13 億7800 万円
立神港区 10 件 99 億6700 万円
針尾住宅地区 550 件 324 億6600 万円
792 件 1564 億3100 万円

●日本の異常さを知ろう

 世界主要国では財政難の中で軍事費削減に踏み出そうとしています。しかし、日本では手をつけようとはしません。2011年度概算要求の中で防衛省は、従来予算を確保するために「削れるものなら削ってみろ」と、姑息にもコンテストで決める「特別枠」に「思いやり予算」を組み込んできました。日米地位協定上も負担義務のない「思いやり予算」は、真っ先に「仕分け」の対象となるべきものです。

 米軍への基地建設や光熱水料、基地内ではたらく自国労働者の賃金の面倒を見ている国はほとんどありません。いえ、「義務」とされる土地所有者への賃貸料を支払っている国もです。


【2010年7月25日】

シリーズ佐世保基地はいま4

したたかに住宅建設を迫る米軍


▲佐世保インターチェンジのわきに建設中の米軍高層住宅。費用は20 億6000 万円の「思いやり予算」

 6月28日から「高速道路無料化社会実験」がスタート。その対象路線の1つである西九州道・佐世保道路のIC近くで米軍住宅の建設が本格化しています。

 この地区にあった米軍住宅は42戸で、明治末期から大正末期に建設されたものが提供されていました。元々は全面立て替えだけで済むものを、IC建設にかかる11戸分を先行させて「代替」建設させました(国土交通省予算28億円)。その上で31戸を取り壊し、8階建68戸と2階建20戸を「思いやり予算」でつくらせるというしたたかさ。来年3月には57戸増え、全体で754戸となります。

 佐世保基地の米兵は3,702人(昨年比239人増:10年3月末)。米軍住宅は大幅に不足しているため、基地外に居住する米兵・軍属・家族は約2,200人もいます。民間住宅などを借りるため、家賃・光熱水料は米軍持ち。基地内に住宅ができれば家賃分が浮きます(光熱水料の日本負担は上限が設定されている)。

 地位協定上、米軍住宅建設費用を日本が負担する筋合いはありません。住宅不足は米軍自身の海外展開政策の結果で生じているものです。

 そんな中、米軍は前畑弾薬庫返還の条件の1つとして、これぞ幸いとばかりに400戸の住宅提供をもちだし、日本政府に同意させました。

 一方、米軍は針尾住宅地区周辺の土地を次々と提供させ、その手はついにハウステンボス駐車場にまで及びました。今後、米軍住宅が林立し、さらに米兵・家族が増え、...経営難のハウステンボスは格好の標的とされるかもしれません。

佐世保基地の軍人等の居住数(10 年3 月末時点)
自治体 軍人 軍属 家族
基地内 佐世保市 4,114 2,752 38 1,324
基地外 佐世保市 2,127 937 158 1,032
川棚町 45 8 6 31
波佐見町 5 2 3
佐々町 8 3 2 4
合計 6,300 3,702 304 2,394


【2010年5月15日】

シリーズ佐世保基地はいま3

前代未聞の弾薬庫近代化提供計画


▲針尾島弾薬集積所:手前の岸壁に係船埠頭を、右手奥の山中にトンネル式弾薬庫を、
左手の入江(安久ノ浦)を埋め立てて覆土式弾薬庫を建設する計画。

 米海軍針尾島弾薬集積所と前畑弾薬庫には合わせて約4万トンの弾薬が貯蔵され、西太平洋の補給・中継拠点となっています。湾岸戦争やイラク戦争をはじめ、沖縄海兵隊の日出生台での演習の際にもここから運び出されました。

 いま2つの弾薬庫を統合近代化する計画が進められています。費用は1000億円以上。国民の税金で駐留軍隊の弾薬庫建設を行うのは史上例を見ないものです。

●弾薬庫撤去の住民の願いを逆手にとって

 前畑弾薬庫周辺は新興住宅地域として開発が進み、一番近い民家との距離はわずか70mしかない危険な状況になっています。95年の阪神・淡路大震災をきっかけに住民の弾薬庫「撤去返還」の運動が始まりました。ところが久間防衛庁長官(当時)が針尾島弾薬集積所への「移転・集約」案を提示。市長もこれに賛同してしまいました。07年には、「移転施設の建設と家族住宅不足の解消を条件に前畑弾薬庫を返還する」という合意がなされました。

●弾薬庫近代化はもともと米軍の要求

 前畑弾薬庫は旧日本海軍が建設した堅牢なものですが、周辺海域が浅いために弾薬輸送艦や米艦船が近づけず、長い距離をパージ船で運搬せざるを得ないという欠点があります。一方、針尾島弾薬集積所は戦後米軍がつくった野積式弾薬庫で、除湿などの空調施設を持たないアルミ製簡易倉庫が中心で、環境に左右されにくい低感度の弾薬や部品しか保管できないといいます。そのため米軍は早くから有事即応体制を強化するために、使い勝手の悪い弾薬庫の近代化を検討していました。針尾弾薬集積所に大型船舶も接岸できる岸壁をつくり、あらゆる種類の弾薬を貯蔵できる近代的弾薬庫をつくるという計画が1988年には完成していたのです。

 針尾島弾薬集積所:手前の岸壁に係船埠頭を、右手奥の山中にトンネル式弾薬庫を、左手の入江(安久ノ浦)を埋め立てて覆土式弾薬庫を建設する計画。

●明らかな機能強化

 前畑弾薬庫の機能を集約する主な計画
1 覆土式弾薬庫は安久ノ浦を埋め立てて移設
2 トンネル式弾薬庫は安久ノ浦南側に位置する山側に移設
3 埠頭を安久ノ浦・牛ノ浦間に移設

 新設する弾薬の貯蔵量や能力は前畑弾薬庫と同等といいますが、そもそも軍事機密であるために検証のしようがありません。結局は前畑周辺住民の不安のたらい回しに過ぎず、しかも近代的な設備を整えての集約移転は永久に弾薬庫をおくことにもなりかねません。

 投入された予算は99~10年度に約13億円。現在、移設に関する評価が進められています。

 08年度保管庫移設解析  7億2219万円
 09年度保管庫移設測量等調査 2205万円
 09年度保管庫移設基本検討  1450万円