▲掃海艦ガーディアン(米海軍佐世保基地)
4月3日、佐世保配備の2隻の米掃海艦ガーディアンとパトリオットが沖縄県石垣島の石垣港に強行入港しました。港湾管理者である石垣市の大浜市長をはじめとする広範な市民の反対を無視しての寄港でした。
●「友好・親善」は名ばかり
大浜市長は抗議声明を出し、「無用な不安と混乱を与える形での友好交流はありえない。寄港中は石垣市にとって非常事態と言える状況にある」と述べました。県知事も自粛を要請、市議会議長も賛成できない立場を示し、「親善・友好」はすでに成り立ちえません。
艦長らは入港時に200人以上の市民による抗議を受け、また座り込みによって約5時間足止めされ、警察官を盾に強行突破しました。
夕食会など、艦長らと交流した市民は十数人。また兵士の自由行動の日程は予定されていた半分も消化できなかったといいます。
3日の晩、「いしがき女性9条の会」が港湾施設の金網に取り付けていた抗議の布製横断幕が米兵らしき2人に持ち去られました。
ケビン・メア在沖米国総領事は5日、掃海艦の出港直前に「(犯人の写っている防犯カメラの映像は)私の見解では捨てられたごみを片付けたのではないかとみられる」と暴言。ところが掃海艦の出港後に、米海軍犯罪捜査局が八重山警察署に横断幕を渡していました。「掃海艦の艦長から提出された」ということですが、捜査中を理由に艦長名や入手経路などは明らかになっていません。
●目的は影響力誇示と調査
メア総領事は「この地域での米海軍の行動が日米安保体制下の日本の防衛に貢献し、地域全体の安定と安全に寄与する」と軍事的影響力を誇示する狙いがあることを明確にしています。
米海軍は昨年も2隻の掃海艦の石垣寄港を打診し、市長をはじめ地元の反対の声を前に、寄港地を与那国島祖納港に変更しました。
与那国町長は反対表明、県知事も自粛要請を行いましたが、日本復帰後、米艦の初めての民間港への寄港となりました。その際、メア総領事は「入港することでいろんな情報が入る。長らく入港していない港であれば、海図に記載されている水深が正しいかなどを確認する」と調査の一環であることを認めています。
「台湾有事」の際に石垣島を中継基地とする、そのための準備を始めたとも考えられます。
●地位協定第5条の拡大解釈を許すな
国は岸壁に空きがあれば日米地位協定上も、船舶の平等な扱いを定めている港湾法上も入港を拒否することはできないと主張しています。
しかし地位協定第5条は、米軍艦の寄港時に接岸料と水先案内の免除を定めたものです。水先案内については地位協定に基づく特例法が制定されていますが、寄港の許可の権限についての特例法はなく、港湾法に基づいて自治体が判断するべきものです。
また港湾法は軍艦入港を想定してつくられたものではありません。大浜市長が「軍艦まで平等に扱うのは異質。港湾管理者の判断が生かされるべきだ」と異議を唱えるのは当然のことです。岸壁が空いてさえいれば米軍艦が好き勝手に利用できるのであれば、全国の港が事実上の米軍基地になってしまいます。
北朝鮮は、4月4日~8日の間に「試験通信衛星」を打ち上げるとして、2ヶ所の危険海域を国際海事機関に事前通報しました。
北朝鮮が射程6000kmものロケット(ミサイル)を開発したとは思えませんが、衛星打ち上げを名目に、オバマ政権との交渉を有利に運ぼうという意図が浮かび上ってきます。
防衛省は佐世保配備のSM3搭載イージス艦2隻を日本海へ派遣し、米国の早期警戒衛星から探知情報を受けてレーダーで追尾し、日本に落下する恐れがあれば、迎撃する方針です。
麻生首相は、衛星打ち上げであっても、国連安全保障理事会決議に違反するとして、制裁を求めると言っています。
06年7月の北朝鮮の弾道ミサイル発射に対し、国連安保理は「弾道ミサイル計画に関わる全ての活動の停止を要求」する決議を全会一致で採択しました。日本政府が初めて主導的にかかわった決議といいます。決議が具体的に非難しているのは、(1)ミサイル発射自粛を破り、(2)適切な事前通報をせず、(3)今後も発射する可能性を示唆し、(4)NPT脱退表明と核開発を追求していること、です。
しかし6発の短距離ミサイルは北朝鮮沿岸の予定地に着弾(新聞記事の△内)。この方向はアラスカ、失敗したテポドン2はハワイ方向でした。いずれもどこの国への脅威となるものではなく、(津軽海峡上空を通過なら問題だが)米国へのシグナル性の強いものでした。
改めて決議を見ると(1)(3)は日朝間の約束、(4)は当時のミサイル発射とは直接関係がなく、本来、国際非難の対象は(2)だけではないのか。とすれば、今回の事前通報はそれをクリアすることになる? いや、そもそも日本が奔走してあげさせた決議自体が問題ではないのか。
北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、国連安保理が非難決議をあげた06年、実は世界中で70発ものミサイルが発射されています。
米国は射程6800~8200kmの大陸間弾道ミサイルの飛行テストを4回実施しました。廃棄するMXミサイルの核弾頭をリサイクルしてミニットマンIIIに換装するためです。ロシアも「ミサイル防衛」に対抗する潜水艦発射の新型弾道ミサイルのテストを繰り返しています。
インド、パキスタン、イスラエルも中距離弾道ミサイルのテストを繰り返しています。いずれもNPT未加盟であり、事実上の核保有国です。
米ロを含め、これらの国々に対して非難の声が上がらないのはなぜ?
どこの国であれ、ミサイル発射は中止すべきであり、その費用は国民生活にまわすべきです。
国連憲章は全ての国々が対等であることを謳っています。北朝鮮のミサイル発射を非難するなら、他の国に対しても同じ非難をするべきでしょう。いたずらに対立を煽って政権維持と金儲けを企む輩がいることも含めて、曇らない目で真実を見つめよう。
11月20日、「ミサイル防衛」用に改造された「イージス艦ちょうかい」のテストが行なわれ、標的ミサイルの迎撃に失敗しました。
ハワイ・カウアイ島から発射された標的ミサイルを、数百キロ離れた「ちょうかい」のイージスシステムが探知・追跡し、迎撃ミサイルSM3を発射しました。しかし命中する直前に標的を見失いました。原因は不明です。
「ちょうかい」は昨年の「こんごう」と同様、ハワイで2回、標的ミサイルを追尾し、迎撃シミュレーションを行なってきました。
報道では「今回の訓練は前回と違い、標的の発射時間を事前にイージス艦に知らせず、実戦に近い形で実施した」(共同通信)としています。「こんごう」の迎撃テストでは標的の発射時刻が伝えられていたことになります。実戦では使い物にならないことが示唆されるにもかかわらず、「システムは機能した」として、「ちょうかい」は複数のSM3を新たに搭載して帰国し、佐世保基地に「実戦配備」となります。
SM3は1発20億円。「ちょうかい」の改造費用はSM3込みで246億8697万円、今回のテスト費用は61億5936万円です。
迎撃ミサイルPAC3の「実戦配備」が着々と進む中、空自は9月17日、米本土の陸軍基地で初めてPAC3のテストを実施し、迎撃に成功したと発表しました。
PAC3の購入費用は1発8億円。かかった費用はこれ以外に約15億4000万円で、このうち約12億円が米軍に支払われたといいます。
PAC3は日本ではSM3で撃ち損じたときのためとされています。つまりターゲットは射程1300キロ程度の中距離弾道ミサイルで、落下速度は秒速3キロを超えます。しかし今回のテストの標的は短距離用で射程はわずかに120キロ。落下速度もたかがしれています。
実は米軍が行なったPAC3のテストで中距離ミサイルを迎撃した例はありません。またPAC3システムは完成したものとして、米会計監査院の評価対象からは外しています。
米はPAC3を隣国の短距離ミサイルの迎撃に有効とし諸外国に購入させ、中距離ミサイルに対する自国の最終段階での対処としてTHAAD(サード)システムの開発を進めています。
北朝鮮の短距離「スカッド」は日本にはとても届かず、中距離「ノドン」は仮に届いたとしてもPAC3では迎撃できない(実績は全くない)。日本のPAC3配備の目的は北朝鮮を最大限に利用し、国民の目をそらしながら、自衛隊を米軍と一体化させて運用できるシステムづくりを促進することではないでしょうか?
次期米大統領のオバマ氏は基本的に「ミサイル防衛」推進の立場ですが、選挙公約では「どのようなミサイル防衛システムであれ、配備する前に有効であるか検証が必要である。ブッシュ政権はミサイル防衛の能力を誇張し、政治的な目的のために配備を急いだ」と述べていました。いまこそ徹底した検証が求められています。
「ミサイル防衛」とは、「脅威」という打ち出の小槌を振れば巨額な税金が軍需産業に転がり込むシステムでもあります。こんな壮大な無駄遣いは一刻も早くやめさせましょう。
▲原潜ラ・ホーヤ寄港に抗議(佐世保市8月4日)
この8月、核攻撃能力の認証を受けたことのある原潜ヒューストンが2年以上にもわたって、「微量」とはいえ放射性物質を垂れ流していたことが発覚しました。04年には原潜ラ・ホーヤが佐世保でケーブル火災事故、05年には原潜サンフランシスコがグアム沖で座礁事故を起こし1人が死亡、98人が重軽傷。今年5月には横須賀配備予定の原子力空母ジョージ・ワシントンが深刻な火災事故。原子力艦船が安全だと主張する「神話」は崩れ去ったのです。
ヒューストンの放射能漏れはハワイのパールハーバーで定期点検中に発覚しました。船体からの水漏れを調査した結果、原子炉容器からの漏水がバルブを通して流れ、微量の放射性物質が発見されました。それは7月24日のことで、翌25日には米海軍がパールハーバー滞在時に放射能汚染水を漏出した可能性があるとハワイ保健省に警告しています。
ところが日本政府・外務省に連絡があったのは1週間以上たった8月1日のお昼頃、ちょうど7月28日から佐世保に寄港していた原子力空母ロナルド・レーガンが出港する最中でした。明らかにレーガン滞在中の通知を控えたと考えられます。
しかも外務省は「人体に影響ない」「文部科学省の調査で特異な数値は検出されていない」ことを理由に、「公表することはない」と判断していました。高村外相にさえ連絡せず、外相は米CNNのニュースで知ったという始末です。関係自治体への通知も報道後となりました。
ヒューストンの放射能漏れ事故の詳細や原因はいまだに公表されていません。にもかかわらず事故後も同型艦のラ・ホーヤ、ブレマートン、コロンブスが相次いで日本に寄港しています。
F15戦闘機の墜落事故の際、米空軍が原因究明まで同型機の飛行停止を命じたのとは大きな違いで、米軍は深刻な事故と考えていません。
ここで浮かび上がってくるのは今回の「公表」のねらいです。これまでの「原子力艦船は事故は起こさない。安全だ」の一点張りの姿勢から、「たとえ漏れたとしても微量で人体に影響はなく安全だ」と明らかに米海軍の方針転換をおこなったといえます。それは「事故は起らない」はもはや通じないので、何とか原子力空母を日本に受け入れさせる意図からと思われます。
これに対して米原潜の寄港地のある沖縄県うるま市議会は8月11日、「米国原子力軍艦を寄港させないこと」を強く求める米軍への抗議決議と国への意見書を全会一致で可決しました。
また佐世保市議会も8月21日に全会一致で可決した意見書で「安全性の確立がなされないままの原子力艦船の入港を安易に認めるものではない」という姿勢を示しています。
今回の事故発覚後、佐世保市長はヒューストンの入港は拒否するものの、他の米原子力艦船の入港は容認する姿勢でした。しかし基地との共存共栄を掲げる保守会派でさえ、米軍や国の対応について「市民の苦労がわかっていない」などと憤りや不満の声を上げ、「入港を安易に認めない」というところまで行き着いたのです。
▲大村航空基地の哨戒ヘリSH-60K
6月1日、海自大村航空基地で、第22航空隊の新編を記念して基地の開放と一般公開行事が行われました。
大村には昨年から、新型の哨戒ヘリSH-60Kの配備が始まり、現在8機となっています。攻撃兵器として従来の魚雷に加えて、対潜爆弾や対艦ミサイルも搭載でき、戦闘能力も大きく増強されています。
3月の海上自衛隊の大改編で艦艇以上に大きく変わったのが航空部隊でした。その中でも最大の改編がヘリコプター部隊です。
これまで哨戒ヘリは航空集団所属と地方隊所属に分かれていましたが、そのすべてが航空集団の2つの航空群(館山・大村)の下に置かれ、従来の9航空隊から5航空隊に集約されました。そのうち4つの航空隊が4つの護衛隊群に対応し、海外派兵を中心とする任務を負うことになります。
また救難ヘリはP3C哨戒機を実戦運用する3つの航空群(鹿屋・八戸・厚木)と教育航空集団下の3教育航空群(下総・徳島・小月)に計7個の救難飛行隊が置かれていました。これらが6個に集約され、2航空群(館山・大村)の下に置かれました。
すなわち、全ヘリコプターが館山と大村の指揮下に集約され、館山航空基地が東日本の拠点、大村航空基地が西日本の拠点となったのです。そして航空集団司令官が全部隊の訓練度や評価の管理を行い、指揮系統が一元化されるとともに機動的な運用が可能となります。これも日米同盟変革に呼応した全面改編です。
★第22航空群(大村)の改編状況は次のとおり:
哨戒ヘリ部隊
第22航空隊(大村) :大村の第122・第124航空隊と佐世保地方隊/大村航空隊の統合・再編
第24航空隊(小松島):呉地方隊/小松島航空隊(徳島市)の編入・改編
救難ヘリ部隊
第72航空隊(大村)
第72飛行隊(大村):小月教育航空群/小月救難飛行隊の廃止・新編
徳島航空分遣隊(小松島):徳島教育航空群/徳島救難飛行隊の編入・改編
鹿屋航空分遣隊(鹿屋) :第1航空群/鹿屋救難飛行隊の編入・改編
所属 | 部隊名 | 機種 | 配備先 |
第 21 航 空 群 |
第21航空隊 | SH-60K | 館山 |
第23航空隊 | SH-60J | 舞鶴 | |
第25航空隊 | SH-60J | 大湊 | |
第73航空隊 | UH-60J | 館山 | |
第73航空隊 | 館山 | ||
大湊飛行分遣隊 | 大湊 | ||
硫黄島飛行分遣隊 | 硫黄島 | ||
第 22 航 空 群 |
第22航空隊 | SH-60J/K | 大村 |
第24航空隊 | SH-60J | 小松島 | |
第72航空隊 | UH-60J | 大村 | |
第72飛行隊 | 大村 | ||
徳島航空分遣隊 | 小松島 | ||
鹿屋航空分遣隊 | 鹿屋 |