PEACE TOPICS

『平和新聞ながさき版』不定期掲載

【2008年5月15日】

海上自衛隊護衛艦隊の全面改編


▲佐世保基地のイージス護衛艦あしがら

 3月26日、海上自衛隊は発足以来、最大規模となる艦艇の全面改編を行ないました。
 これまで護衛艦は護衛艦隊直轄の護衛隊群と5つの各地方隊直轄部隊に別れていましたが、すべて護衛艦隊の直轄になりました。
 一方、4つの護衛隊群はそれぞれ旗艦と3部隊(7隻)の8隻で構成されていましたが、これがヘリ護衛艦を中心とするDDHグループ4隻とイージス艦を中心とするDDGグループ4隻の2部隊構成と変わりました(表)。

「新しい任務」への対応体制

 防衛「省」への格上げとあわせて自衛隊は、これまでの付随的任務であった「国際協力」を本来任務に格上げし、「ミサイル防衛」も新たな任務と位置づけました。

 海外派兵の任務は主にDDHグループ(第1~第4護衛隊)が担い、「ミサイル防衛」の任務はDDGグループ(第5~第8護衛隊)が担うことになるでしょう。

有事即応体制の強化に

 もう一つの大きな特徴は、これまで一体だった所属先と配備先(定係港)を大きく変えたことです。
 長崎港では佐世保配備の護衛艦の修理が日常的に行なわれていますが、それでは訓練度などが艦によってまちまちになり、佐世保の護衛隊としての機能が十分に発揮できないわけです。そこで定係港はそのままに、所属先を変更することで部隊の中の各艦の修理期を同じにすることができます。その結果、部隊の全艦がつねに同一行動を取ることができ、機動的運用が可能となるのです。

 また各群の旗艦を廃止したことで護衛艦隊司令の指揮系統が一本化され、戦術に応じて複数の護衛隊の編成訓練を行なえるなど、同盟変革に呼応した海上自衛隊の全面改編に他なりません。

各護衛隊群はDDHグループ(DDH×1、DDG×1、DD×2)と
      DDGグループ(DDG×1、DD×3)からなる。
所属 艦名 番号 排水量 定員 定係港
護衛艦隊 旗艦 さわかぜ 170 3,850 255 横須賀
第1護衛艦隊群
 (横須賀)
第1護衛隊
(横須賀)
しらね 143 5,200 350 横須賀
しまかぜ 172 4,650 260 佐世保
むらさめ 101 4,550 170 横須賀
あけぼの 108 4,550 170
第5護衛隊
(横須賀)
こんごう 173 7,250 300 佐世保
いかづち 107 4,550 170 横須賀
すずなみ 114 4,650 170 舞鶴
さわぎり 157 3,550 220 佐世保
第2護衛艦隊群
 (佐世保)
第2護衛隊
(佐世保)
くらま 144 5,200 350 佐世保
あしがら 178 7,700 300 佐世保
ゆうぎり 153 3,500 220 大湊
あまぎり 154 3,500 220 舞鶴
第6護衛隊
(佐世保)
ちょうかい 176 7,250 300 佐世保
はるさめ 102 4,550 170 横須賀
たかなみ 110 4,650 170 横須賀
おおなみ 111 4,650 170 横須賀
第3護衛艦隊群
(舞鶴)
第3護衛隊
(舞鶴)
はるな 141 5,200 350 舞鶴
あたご 177 7,700 300 舞鶴
まきなみ 112 4,650 170 佐世保
せとぎり 156 3,550 220 大湊
第7護衛隊
(舞鶴)
みょうこう 175 7,250 300 舞鶴
ゆうだち 103 4,550 170 佐世保
きりさめ 104 4,550 170 佐世保
ありあけ 109 4,550 170 佐世保
第4護衛艦隊群
(呉)
第4護衛隊
(呉)
ひえい 142 5,200 350
はたかぜ 171 4,600 260 横須賀
はまぎり 155 3,550 220 大湊
うみぎり 158 3,550 220
第8護衛隊
(呉) 
きりしま 174 7,250 300 横須賀
いなづま 105 4,550 170
さみだれ 106 4,550 170
さざなみ 113 4,650 170

【2008年5月15日】

イージス艦試験で夜間騒音 住民が中止要求


▲レーダー試験に臨むイージス艦ちょうかい(5月7日)

 海上自衛隊の保有する6隻のイージス護衛艦のうち5隻を建造した三菱重工長崎造船所。佐世保基地配備のイージス艦がしばしば修理のために長崎造船所にやってきます。そのレーダー試験にともなう騒音に住民から苦情が寄せられ、中止を求める自治会も出ています。

避けられない航空機騒音

 5月7・8日の午後7時~11時頃、三菱長崎造船所は修理中のイージス艦ちょうかいのレーダー性能試験を実施しました。イージス艦を長崎港の中央錨地に停泊させ、レーダーの捕捉対象として海自のP3C哨戒機を、同艦を中心に島原半島までを含む半径37km、高度6kmの空域に飛ばしました。レーダーで捉えたデータを目視データと照合することでレーダー性能を検証するというものです。

 しかしP3Cは4基のプロペラによる騒音が大きく、これまでも飛行経路下の住民から苦情が出ていました。今回も「頭から押し付けるような不気味な音が頻繁に聞こえる」といった訴えがあり、長崎署には「飛行音は何か」といった問い合わせが8件寄せられたといいます。

 騒音を減らすにはP3Cの飛行高度を上げればいいが、逆に目視できなくなります。また港外では波が高く艦が安定しないため、港内で試験をするしかないといいます。深夜の試験時間を短縮し、住宅が集中する市街地での旋回を控えることで、騒音を低減させることしかできず、騒音被害が必至の試験といえます。

中止を求める声を上げた自治会

 地域住民から「飛行機が何回も飛んでいるが、何事が起ったのか、不気味だ」との訴えを受けた椎木町第2自治会の山本誠一会長は市役所に問い合わせますが「調べたが分からない」と言われました。その後、イージス艦の試験が原因ということを突き止めた山本会長は長崎造船所に問い合せて、レーダー試験が以前から行われていることを確認します。

 山本会長は9日に市役所を訪れ、次の2点を長崎造船所に要請するよう市長に申し入れ、文書での回答を求めました。(1)市民の安全を守るため、長崎港でのイージス艦のレーダー試験を直ちに中止すること、(2)イージス艦レーダー試験の実績や、建造及び修理などの実績について市民に公表すること。

「ミサイル防衛」と海外派兵の準拠点として

 今回、レーダー試験を行った「ちょうかい」は昨年9月19日から長崎造船所に接岸し、「こんごう」につづいて「ミサイル防衛」対応型への改造工事が施されています。「こんごう」改造時も同じ試験が07年6月18・19日に行われました。また高性能レーダーを持つ新型イージス艦の建造中にも、あたご(06年9月)、あしがら(07年9月)が試験を行っています。
 その一方、佐世保の護衛艦の修理も日常的に長崎造船所で行われており、インド洋へ戦時派遣された護衛艦もすべて修理されています。

 これらのことは現在の自衛隊は民間技術者の支援なしでは自衛隊部隊の維持、作戦遂行が不可能であることを示しています。その意味で三菱長崎造船所は海自佐世保基地の補完基地になっているといえます。


【2008年2月25日】

「核兵器非搭載」発言はリップサービスか


▲ラッセンの艦長は核兵器不搭載を明言したが…

 2月15日に長崎港への寄港を強行した米イージス駆逐艦ラッセンのアンソニー・シモンズ艦長が記者会見で「核兵器を搭載していない」という異例の発言をしたことが波紋を呼んでいます。初めて特定の艦船について核兵器搭載の有無に言及したからです。

核兵器搭載を肯定も否定もしない

 米ソ冷戦構造の終結後、米国は平時における戦術核兵器の配備政策を変更しました。攻撃型原子力潜水艦は別として、空母を含む水上艦船のすべてからの核兵器搭載能力を外すというものです。その結果、従来の「核兵器搭載の有無については肯定も否定もしない」という公式見解は次のように変更されました。

 「水上艦船、海軍航空機、攻撃型潜水艦、あるいは誘導ミサイル潜水艦には、核兵器を配備しないのが一般的な米国の政策である。しかし、個々の艦船、潜水艦、あるいは航空機上に核兵器があるか否かについては話題にしない」
(最新版の米海軍公式指示書「米軍の核兵器ならびに核能力に関する情報の公表について」の5.ガイドラインのa. (1) =訳:新原昭治)

過去の寄港時の艦長の発言

 したがって過去に長崎に寄港した米艦船についても艦長はこれに則った発言をしています。
○核があるかないかを私たちは明らかにしない方針をとっているので私はコメントできない。(07年3月、イージス駆逐艦マスティンのエキャッシュマン艦長)
○核兵器を積んでいるか、または搭載能力があるかについては話せない。(06年2月、イージス駆逐艦ステザムのゴンザレス艦長)

ラッセンの艦長への問い合せ

 今回のシモンズ艦長の発言は従来の米海軍の公式指示書と大きく食い違うため、新原昭治さん(国際問題研究者)がラッセンの広報担当あてに電子メールで、その整合性について問い合わせをしています。これに対してシモンズ艦長は、「核兵器の非存在に関しては、ラッセンも含め個々の艦船に核兵器を積んでいるかどうかは明らかにしない」とだけ回答を寄せました。

NBC長崎放送もつづく

 これは従来の見解そのままで、「核兵器を積んでいない」という寄港時の記者会見での発言とは異なるものでした。このためNBC長崎放送局はラッセンの広報官に対して、いったいどちらの発言が本当なのか質問をしています。
「これに対してラッセン側は『個別の軍艦に核を積んでいるかどうか明らかにしないのが、私たちの公式の立場』としか回答せず、『積んでいない』という艦長の発言が本当かどうか明言を避けました。」(2月18日報道センターNBC)

 これらのやり取りを見るかぎり、米海軍には方針変更は一切なく、シモンズ艦長の「核兵器非搭載」言明は、何らの保証もないものです。県知事・市長が拒否する中で、被爆地への3年連続強行寄港に対する市民の反発を和らげるためのリップサービスに過ぎなかったようです。

 同時に見逃せないのはシモンズ艦長が、寄港時に地域住民と結びつくことで寄港反対運動を押さえ込むという意味の発言をしていることです。そこには日本中の港を自由に使うための長期的な戦略が見えてきます。それに負けない反対世論を構築することが求められています。


【2008年1月5日】

渇水の中、米海軍佐世保基地は


▲崎辺駐機場で「戦術淡水化システム」用の機具をトラックに積み込む兵士(米海軍ホームページ)

 2年半ぶりの渇水に見舞われた佐世保市では11月23日から市内のほぼ全域で水道管の止水栓を絞って流量を半分に抑える減圧給水が実施されています。

米軍と自衛隊は対象外

 しかし市水道局による給水制限は米海軍佐世保基地や海自佐世保基地・陸自相浦駐屯地は大口の需要者でありながら立入制限や技術上の問題で対象外となっていて、佐世保市は「自主的な節水」を求めるに留まっていました。

 しかし米海軍佐世保基地の1日の使用料は家族住宅を含めて約2400トンで、市全体の3%を占め、陸海の自衛隊も1日約1400トンを使用しています。強制的に給水制限される市民からすれば「自主的な節水」を求めるだけでは「不公平」という声が上がっていました。
 そこで佐世保市は米海軍と陸海自衛隊に対して節水計画書の提出を求めました。

節水率から見える無駄遣い

 米海軍の計画書では、11月5日以降、施設(飲食店を除く)水道の水圧半減、洗車場の閉鎖、消火栓テストの延期などを実施し、前年同期に比べ34%の節水効果を上げたといいます。
 そして12月17日からはレストランでも50%の減圧給水を実施し、食器を紙皿や紙コップに切り替え、運動施設のシャワー利用時間も短縮するといいます。

 「34%の節水」というのは驚異的なことです。それは余裕があったからできたことでしょう。逆に言えば、日常的にいかに無駄に使っていたかということ。なにせ家族住宅を含めて基地内の光熱水料は日米地位協定に違反して、国民の税金で肩代わりしているのですから事実上使い放題です。05年度の水道料金は佐世保基地だけで2億円にのぼっています。

海水淡水化装置を導入

 それでも不公平という批判をかわすためか、米軍は海水淡水化装置を導入しました。強襲揚陸艦エセックスが演習の帰りに沖縄から6台の「戦術淡水化システム」を積み、佐世保港でLCACを使って崎辺駐機場に陸揚げしました。

 このシステムは本来は軍事作戦で使用するもので1時間あたり約5・7トンの淡水をつくり出す能力を持っているといいます。うち5台は米兵や家族ら約3千人が暮らす針尾地区の住宅に運び込まれ、同地区全体の使用量を1日570トンに抑えたうえで、全量をこの装置で賄う計画です。1台あたり月額1万ドル近くかかる運用経費は米軍の負担といいます。

「思いやり予算」の全廃を

 日本政府は向こう3年間の「思いやり予算」をほぼ現状維持とすることを米政府と合意しました。当初は5年間で労務費300億円、光熱水料を250億円を削減する案を打診したようですが、結局08年度は253億円の光熱水料を据え置き、09・10年度は光熱水料を各3億8000万円減額するにとどまりました。
 地位協定違反の「思いやり予算」を全廃すれば否が応でも米軍は節水を行うでしょう。それは在日米軍縮小にも連結します。「思いやり予算」の総額(07年度2173億円)はドイツが支出する米軍駐留経費より高額なのですから。


【2007年5月25日】

米軍佐世保基地に家族住宅1,052戸計画


▲完成した針尾の新家族住宅

 米軍針尾住宅地区に中層家族住宅(6階建44戸)が完成しました。次々と建設される家族住宅、それでも約半数の家族は基地の外に居住しています。

 現在、基地内の住宅は697戸。それを今後10年で1052戸にする長期計画が進められようとしています。実現すれば「基地内に住むことを望むものは誰でもその規模と階級に応じた住宅を分配される」ことになるといいます。

 現在の佐世保基地内の家族住宅の構成は次のようになっています。

※これは高速道路建設にかかって取り壊されるドラゴンハイツ地区11戸の代替。国土交通省の予算で建設。
針尾住宅地区 ドラゴンベール地区 ドラゴンハイツ地区 フィドラーズグリーン地区
 高層住宅 4棟 272戸
 中層住宅 1棟 44戸
 低層住宅 35棟 216戸
 中層住宅 1棟 44戸
 低層住宅 7棟 20戸
 低層住宅 18棟 59戸
 中層住宅 1棟 18戸
 低層住宅 18棟 24戸
 低層住宅 8棟 11戸
 (まもなく入居)※

 米軍は基地内をアメリカの国内基準で整備しているので「ゆとり」をもたせています。その結果、機能強化に伴って増加する人員を受け入れる住宅を基地内につくれずにいます。そのため日本政府は針尾住宅地区周辺の土地を次々と米軍に追加提供し、当初面積の約1・5倍に拡張しました。
 基地内の住宅を1052戸にするためには針尾に約300戸を追加することになります。今後の建設計画は日米間で交渉中ですが、すでに低層・中層・高層のまざった住居の完成予想図ができあがっていて、周囲には運動場や他の施設まで整備されるといいます。(『星条旗』3月14日付)もちろんこれらの建設には当然のように日本政府の「思いやり予算」を念頭に置いているわけです。

 フィドラーズグリーンへの入居が完了後、ドラゴンハイツの11戸が取り壊され、高速道路のインターチェンジ建設が始まります。その一方で、ドラゴンハイツの残り31戸を取り壊して低層・高層88戸を建設することが決まっています(09年3月完成予定)。したがって差し引き57戸が増えることになります。この段階で基地内の住宅戸数は754戸となります。しかし実質的には増加とはならないようです。

 09年4月から針尾住宅地区の1番古い高層住宅(1988年建造の68戸)を閉鎖してオーバーホールを行なうからです。同時に既存の低層住宅すべてが改修のためのローテーションを開始します。幾つかの低層住宅は移動する家族用に空けておき、新規入居はできないようです。

 その一方で、住宅不足を補うために民間による米軍向け賃貸住宅の建設が進んでいます。すでに赤崎町に4棟、大潟町と勝海町に各1棟の計6棟が完成。広さは単身者用の住宅が80m2、家族向けは100m2以上といいます。市営の家族向け住宅が70~80m2ですから、いかに豪華かわかります。