PEACE TOPICS

『平和新聞ながさき版』不定期掲載

【2006年11月5日】

前畑弾薬庫で木工作業所が全焼


▲全焼した木工作業所(火災翌日)

 10月21日午後4時過ぎ、米海軍前畑弾薬庫(佐世保弾薬補給所)敷地内で火災が発生し、弾薬の運搬や貯蔵に使う木製の台を保管する木工作業所が全焼しました。

 消火作業には、基地内の消防士約60名が出動し、はしご車2台とポンプ車1台だけで作業にあたり、鎮火したのは午後8時40分ごろでした。弾薬庫そのものへの延焼はありませんでしたが、鎮火まで長時間を要し、周辺住民を不安に陥れました。

 全焼した作業所は旧日本海軍が1942年に建造したもので木造一部二階建て。作業所から最も近い弾薬庫までの距離は約60メートル。近くには、航空機用の爆弾を加工する作業場もあったことが報道されており、延焼すれば大惨事につながりかねない火災でした。

 今回の火災で大きな問題となっているのは(1)基地側から自治体への連絡がなかったこと、(2)協定に基づく市消防局からの再三再四、計7回にわたる応援出動の申し入れを基地側が拒否したこと、(3)にもかかわらず消火作業に4時間以上もかかったことです。

機能しなかった「消防協定」

 米軍から佐世保市への火災の通報はなく、佐世保市消防局には午後4時15分に周辺住民から119番通報がありました。佐世保市と米軍は「消防相互援助協定」を結んでおり、消防局側が応援出動を打診したところ、基地側は「弾薬庫と距離があり、必要ない」と拒否。そのため市消防局は消防車3台を弾薬庫のゲート前に待機させました。後日、佐世保基地のペイン司令官は「現場周辺が狭く、進入できる消防車両の台数が限られた」ためと釈明。消防協定が現場指揮者の判断を前提に運用されていることに問題があることが浮き彫りとなりました。

出火原因の特定できず

 市消防局は2日にわたって米軍と共同での実況見分を行ないました。出火場所は作業所の南側で、建物内の電線の過熱が火災を引き起こした可能性が高いとしつつも「長時間の燃焼により裏付けとなる物証が焼損している」として原因の特定は困難と発表しました。
 火災原因を特定できないということは今後も同様なことが起こりうる可能性があるわけで地域住民の不安は増すばかりです。

事実と違う鎮火の遅れの説明

 ペイン司令官は鎮火に約4時間半も要したのは、「作業所内にあった金属の溶接などに使うアセチレンや酸素のボンベから噴き出したガスに引火し、米軍消防隊が消火に手間取ったため」と説明していました。

 しかし市消防局の報告ではボンベ計十数個がコンクリートブロックに囲まれた部屋に損傷なく残り、可燃性ガスに引火した形跡はなかったとし、司令官の説明と大きく食い違うなど、事実解明が求められています。

ここにも地位協定の壁

 今回の事態の背景には街のど真ん中に危険な弾薬庫を抱えながらも佐世保市民の安全確保に対する米軍の意識の薄さがあります。そして何よりも日米地位協定によって基地内の運営や管理に必要な全ての措置が米軍が執れると規定していることです。基地内で起きたどんな事故も米軍の判断で運用が左右され、自治体の関与が規定されていないことが重大な問題です。


【2006年9月25日】

「南極観測船しらせ」

 9月15日、長崎港常盤埠頭に「南極観測船しらせ」が接岸しました。意外と知られていませんが、「しらせ」は海上自衛隊の艦船で、艦種は砕氷艦、所属は横須賀地方隊。ましゅう型補給艦が竣工するまでは海自最大の自衛艦でした。観測隊員以外の乗員はすべて海上自衛官。

 15日・16日に一般公開されましたが、テロ対策のために手荷物などの検査が行われました(台風接近のため17日・18日は中止、「しらせ」も退避し、18日に再接岸)。

 「しらせ」は南極地域観測協力を主目的に、文部省の予算で建造されました。
 南極観測船は、毎年度、分厚い氷を砕いて南極の昭和基地に観測隊員や物資を輸送し、オゾンホールの研究など日本の約50年間の南極観測を支えてきました。1982年に就役した3代目の「しらせ」は、老朽化のため07年度には退役となります。

 そこで文部科学省は後継船の建造計画をたて、07年度までの完成を目指して総額520億円(船体建造費に約400億円、搭載ヘリコプター2機で約120億円)の予算要求を行いました。

 ところが04年度財務省原案では、「520億円は巨額」「修繕しながら使える」として、要求のあったた55億円(設計費と船体建造費の一部)は盛り込まれませんでした。その一方で内閣官房予算である情報収集衛星(軍事偵察衛星)関連経費632億円、自衛隊の新型ヘリ護衛艦1057億円の建造が認められました。
 その後の復活折衝でようやく設計費4億円と搭載ヘリ製造費26億円の計上が決まりました。しかし建造費は05年度に見送られたため、完成予定は09年5月となり、観測船運航に1年間の空白期間がうまれることになりました。

 まさに軍事優先は科学の発展を蝕む!


【2005年12月5日】

佐世保市の海上自衛隊の「経済効果」~684億円

 佐世保市の親和経済文化研究所は「佐世保市における海上自衛隊の経済効果」についての調査結果を発表しました。04年度の経済波及効果は684億円にのぼると試算し、また同じ地方総監部のある呉市、舞鶴市との比較分析を行なって、佐世保での造船修理部門の強化を提言しています。

低い地元企業への依存度

 佐世保市の自衛隊員は5,100人で、家族を含めると13,000人。人口の5%を占めます。佐世保地方総監部の佐世保市内における04年度決算額は人件費416億円(これは県庁所在地の消費転換率から算出したもの。また物件費は282億円(艦船修理219億円、糧食10億円、光熱水料5億円など)。

 一方、地元企業との契約状況については全契約先のデータが開示されていないため、金額上位20社のデータから分析しています。佐世保地方総監部の物件費決算額は339億円で、このうち上位20社で121億円、うち地元企業は4社28億円と契約率が非常に低くなっています。市内での物件費決算額は282億円なので、市外の企業に大きく依存していることを指摘しています。

これまた低い波及効果倍率

 経済波及効果は長崎県の「産業連関表」(様々な産業が1年間に生産した財・サービスが、産業、家計、移輸出等にどのように配分されたかの一覧表)を用いて試算しています。その生産誘発額は684億万円で、需要増加額(人件費の消費支出298億円+物件費282億円)に対する比はわずか1.18です(呉1.42,舞鶴1.43)。

 佐世保市での効果倍率が低いのは造船・造船修理部門の自給率が低いという産業構造に問題があるとして、「高度な技術を要求される艦船修理に対応できる造船業のレベルアップ」「艦艇建造能力の獲得」を提言しています。

シンクタンクのあるべき姿は?

 たしかに自衛隊は大きな経済効果を生み出しているのかもしれません。しかし発展を阻害している「損失効果」を見落としています。佐世保港の発展の障害となっている海自倉島地区の「損失」と民間活用した場合の経済効果、米軍基地による「損失」と撤去して再開発を行なったときの経済効果を試算し、どちらが市民のためになるか材料を提供するのが地元のシンクタンクの役割ではないでしょうか?

3市における海自の経済効果
親和経済文化研究所作成のものを整理
項目 佐世保市 呉市 舞鶴市
概要 市の歳出決算額(億円) 920 1,053 361
海自隊員数(人) 5,100 5,900 3,400
家族を含む人口(人) 13,000 14,000 8,000
隊員・家族の人口比 5.00% 5.50% 8.70%
消費状況 人件費(億円) 416 468 245
 (消費支出) 298 295 161
 (非消費支出) 118 173 84
物件費(億円) 282 279 65
 (艦船修理費) 219 178 37
 (糧食) 10 13 6
 (輸送費) 1 1 1
 (光熱水料) 5 6 4
 (その他) 47 81 17
合 計 698 747 310
契約関係 総監部決算額(億円) 339 334 66
上位20社の契約額(億円) 121 298 35
 うち地元企業数 4 6 9
 うち地元契約額(億円) 28 86 31
 地元契約比率 8% 26% 47%
波及効果 経済波及効果(億円) 684.26 817.5 322.39
需要増加額(億円) 580.59 574.05 226.18
効果倍率 1.18 1.42 1.43
就業者誘発数(人) 6,168 5,232 2,140

【2005年6月25日】

佐世保米兵「共同逮捕」事件


▲日本の主権を放棄した相浦警察署

 またもや日本の主権を侵害する米兵の事件が起こされた。ほんとうに日本は法治国家なのか。米軍に屈した長崎県警の姿勢も問われている。

米軍事警察が傷害米兵の逮捕を妨害

 6月3日深夜、佐世保市椎木町の県道で、米海軍上等兵曹、テリー・ペイス容疑者運転の乗用車が追突事故を起こしました。追突された男性は軽傷を負い、通行人の通報で県警相浦署員が現場に急行しました。上等兵曹は車から出ず事情聴取やアルコール検知を拒否したため、業務上過失傷害容疑で現行犯逮捕されました。

 しかし署員がパトカーに乗せようとしたところ、通訳とともに駆けつけてきた米軍事警察が「腹と鼻を打ち鼻血を出している。基地内の病院に連れていく」 と主張し、パトカーのドアの前に立って連行を妨害しました。そして手錠をかけられた容疑者を4人で守るように取り囲み、米軍車に乗せて連れ帰ってしまったのです。

米軍による主権侵害は明らか

 当初、相浦署は「米軍が強引に基地に連れ帰った。身柄の引き渡しを要請している」と発表しました。基地側は「治療が終わり次第、出頭させる」と説明し、手錠は基地を訪れた署員に、鍵がはずされた状態で返還されました。

 これは明らかに日本の主権を侵害する行為です。米兵は公務外中に基地外で現行犯逮捕されたのですから、日本側は身柄を継続して確保することができ、日本の病院で手当てを受けさせることもできたはずです。マスコミ報道でも「容疑者を取り囲んでの対応は公務執行妨害容疑に抵触する」「公務執行妨害にあたる」との関係者の意見を紹介しています。

「日米共同逮捕」の口裏合わせ

 ペイス容疑者が憲兵隊に付き添われて出頭したのは、逮捕から16時間後でした。容疑者は飲酒の事実を否定。「証拠隠滅の恐れがなくなった」として2時間後に釈放され、捜査は任意捜査となりました。そして驚くべきことに相浦署は「日米地位協定に基づく合意事項により米軍と共同で逮捕した。治療のため米側が連れ帰った。問題はない」と説明を一変させたのです。

 「共同逮捕案」は米軍側から出され、県警がその圧力に屈したのです。当事者である平山博茂副署長は「米軍の警備部隊と話し合う中で、向こうが『共同逮捕だった』という認識を示し、私たちも同調した。『共同逮捕』に変わったのは、理由を後で付けたと解釈されても仕方がない」と話しています(毎日新聞)。外務省日米地位協定室も「地位協定に共同逮捕という言葉はない。1953年ごろの合意事項を警察当局が独自に解釈して、共同逮捕と呼んでいる」(西日本新聞)としています。

安保条約を廃棄して主権の回復を

 米軍が容疑者の「飲酒検査用の血液」を提出してきたのは事件発生から10日以上が過ぎた6月14日のこと。「いつのものか確かめようのない」(同署幹部)ものでしたが、鑑定した結果、アルコール分が検出され、過失傷害容疑に加えて道交法違反容疑(酒気帯び運転)で追送検されました(その後、罰金40万円の略式命令)。

 二重、三重にも主権を踏みにじる米軍と、それに毅然と対処できずに言いなりの警察の姿が浮き彫りとなりました。韓国、中国やロシアに対しては「主権侵害」を高らかに言う政府は、米軍に対しては口をつぐんでいます。主権回復には安保条約廃棄しかありません。


【2005年6月15日】

賃貸住宅提携プログラム


▲赤崎町に建設された米軍向け賃貸住宅

 米軍住宅建設も民営化?従来、国の「思いやり予算」で建設してきた米軍住宅を民間業者が、ビジネスとして建設するという事態が起きています。すでに佐世保市赤崎町には「FLEET AKASAKI」(5階建て36戸)が完成、隣接して新棟の建設が行なわれています。

 住宅不足を解消するため、在日米海軍司令部住宅管理部は「賃貸住宅提携プログラム」を進めています。これは米軍が居住者(米軍人)を保証するという形で、基地外に事実上の米軍住宅を民間業者に建設させるものです。軍人・家族や独身者に対して、質の高い(3LDKを基本に家電製品が完備)、手ごろな家賃の民間住宅を提供することが目的です。
 佐世保基地でも昨年 4月、佐世保商工会議所に関連業者を集めて説明会が開かれています。

 「賃貸住宅提携プログラム」の概要

◎ 住宅基準要件

◎希望要件