米原潜ヒューストン放射能漏れ事故
佐世保市議会も幕引き図る

 11月27日、佐世保市議会基地対策特別委員会が開かれ、米原潜ヒューストンの放射能漏れ事故について、市議会として政府の姿勢を容認する見解をまとめるための「素案」が示されました。各会派の討議を踏まえて12月議会で見解を決めるといいます。

 「素案」は、米側の最終報告や、市と市議会の質問書に対する「国の回答」を不十分としながらも「緊急連絡網の改善、モニタリングポストの設置、放射能防災訓練への外務省の視察参加など政府の対応は、議会として信頼するに至ったと判断」できるというものです。それゆえ、原子力艦船の入港は認めてもいいと、完全に幕引きを図っています。

 しかし佐世保市・市議会の質問に対する「国の回答」は不十分どころか、米軍言いなりで事件の真相解明には程遠いものです。これでよしとすることは真相を闇に葬ることにもなります。ましてや信頼の根拠とする「緊急連絡網の改善、モニタリングポストの設置、放射能防災訓練への外務省の視察参加など政府の対応」は、ヒューストンの事件とは全く無関係のもので、本来十二分に実施されてしかるべきものです。

 佐世保市長はかねてよりヒューストン以外の原潜入港には容認姿勢を示し、11月19日には早々と幕引き宣言を行ないました。安保条約の下で、軍事機密の下で、一定の制約はあるでしょう。しかし、市民を守る最後のとりでとして執拗に食い下がり、自治体としては最低限、真相が解明されるまで入港を認めないという態度を内外に示すべきです。


原子力潜水艦「ヒューストン」による放射能漏洩事案に対する
意見書並びに6項目要請事項について(案文)

 佐世保市議会は、原子力潜水艦「ヒューストン」による放射能漏洩事案に関し市当局とともに、関係各省庁並びに米海軍と折衝を行なった現時点において、市民に対する事案説明のためのデーターや資料については、全てが提供されたという状況には至っていないものの、その間 緊急連絡網の改善、モニタリングポストの設置、放射能防災訓練への外務省の視察参加など政府の対応は、議会として信頼するに至ったものと判断するものである。
 このことから議会としては、意見書において記述した「原子力艦船の入港を安易に認めるものではない」という状況は現時点においては脱しえたものと考える。
 しかしながら、佐世保市民の安全安心のため、政府におかれては佐世保港において放射能漏れはあってはならないものであり安全確保のためには万全を期するという考え方のもとに、今後ともモニタリングポスト設置による監視体制の強化、並びに放射能防災訓練への米軍の参加要請には特段の努力を要望するものであり、米国並びに米国海軍においては二度とこのような事態を起こさないこと、そして本市の放射能防災訓練への速やかな参加を強く要請するものである。
 また、市当局にあっては市民の安心安全確立のため、引続き議会との連携を維持しつつ要請事項を達成するまで最大限の努力を傾注することを求めるものである。


米軍言いなりの、自主性のない政府の回答
 11月10日付で基地対策特別委員会がまとめた、15項目の質問事項に対する文部科学省・外務省の回答。赤文字が要点。

  1. 放射能が「放出された可能性がある」のか、「放出されていた」のか
    可能性は高いが100%漏れたと証明できない。
  2. バブルから染み出したのは一次系冷却水か、二次系冷却水か
    いかなる液体か断定できていない。
  3. 染み出しは物理的な原因か、人為的か
    米国は原潜の設計や技術に関する情報を提供しないことになっているため回答を得られない。
  4. バルブの位置はどこか、なぜ乗組員の足にかかった水を検査したのか
    情報を得られない。水兵が点検中に仮止めしてあるバルブから水が出て足にかかった。
  5. 染み出し量に関する「米海軍の厳格な設計基準」とはどのようなものか、また基準設計で、もともとバルブから水が染み出すのか
    限りなく「ゼロ」に近い基準を少し超えた量。ファクトシートでも微量の放射能は出ることがあると書いている。
  6. 設備の状態に関する記録のチェック体制はどうなっているのか
    詳細は知らされていない。米軍はしっかりやっているという。
  7. なぜ2年間も漏えいが発見できなかったのか
    専門的実験所で専門的な調査をやって、最大2年間の可能性となった。専門の研究所でなければ放射能の含有を発見できなかった。
  8. なぜ漏えいの始まりが06年6月と特定できたのはなぜか
    7.の延長線上で、推計の最大値から。
  9. 世界初の原潜ノーチラス号の運航以来、今回と類似した事案はなかったのか
    「染み出し」があったかどうか物理的に証明は不可能。これまで人体・環境に影響を与えることは一切なかった。
  10. 今回の染み出しがヒューストンに限定される理由は何か
    物理学的説明は受けていない。米軍は詳細な調査・分析の結果結論づけたという。
  11. 染み出た水に含まれていたのはコバルト58か60か
    明らかにされていない。
  12. 今回の放射能に残留性はあるのか
    核種によって残存性が違うが、試算でも人体・環境に影響がないとしている。
  13. 米海軍がヒューストンに講じた、バルブの厳格な性能基準が確実に満たされるような措置とは何か
    ヒューストンは、問題が完全にクリアしないと出てこない。これまでの米軍との付き合いの中で、米軍は事案が生じた際、きちっと対応してきている。
  14. 日本政府が安全性を再確認できたとする理由は何か
    最終報告で、原子力艦の安全に関するコミットメントを再確認するとしている。米海軍のナンバー2に原子力安全部長を据えている。
  15. 日本政府のいう「引続き、その安全性確保のため万全を期す」とは何をさし、どのような措置を行なうつもりか
    文部科学省はモニタリングなどの体制強化。米国との政治レベル、軍レベルでも事あるごとに注意喚起を行なっている。

(2008年11月28日)

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