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イージス艦のBMD用改造

 イージス艦はもともと米空母をソ連の戦闘機等から守るためにアメリカが開発したものです。大気圏外を飛行する弾道ミサイルの探知・迎撃などは想定されていませんでした。米海軍は既存のイージス艦を「ミサイル防衛」に対応させるために、弾道ミサイルの監視・追跡能力及び迎撃能力を付加する改造工事を進めています。現在、21隻の巡洋艦・駆逐艦に施されています。これはイージスシステムを最新のベースライン7に変更し、迎撃ミサイルSM3を発射可能なBMD3.6戦闘システムを搭載します。さらにSM3を発射できるようVLS(垂直ミサイル発射装置)を改造するものです。

 日本での運用構想では海上自衛隊が保有する4隻のイージス護衛艦を各1隻ずつ、「弾道ミサイル対応型」に改造し、07年度から「配備」することになっています。購入するSM3は各艦につき9発で、うち各1発は日米合同の迎撃テストに使われます。「1艦8発体制」(衆議院安全保障委員会04年10月22日、衆議院予算委員会第一分科会05年2月28日)となりますが、実際に搭載するSM3の数は公表されません。イージス艦改造にともなう予算は04年度から5年にわたって計上されてきました。現在判明している改造費用(SM3の取得を含む)とテスト費用は以下のとおり。

金額は米海軍省を通じた契約金額
艦名 建造所 調達額 配備先 配備期 改造費用 発射試験費用
こんごう 三菱長崎 1199億円 佐世保 08年01月 339億9727万円 59億3313万円
ちょうかい 石川島播磨 1068億円 佐世保 09年03月 246億8697万円 61億5936万円
みょうこう 三菱長崎 1169億円 舞鶴 10年03月 232億7231万円 61億5142万円
きりしま 三菱長崎 1244億円 横須賀 11年03月 234億7547万円 67億1097万円
あたご 三菱長崎 1415億円 舞鶴 未定
あしがら 三菱長崎 1325億円 佐世保 未定

 1隻目のイージス護衛艦「こんごう」の改修は06年7月の北朝鮮の弾道ミサイル発射、同年10月の核実験を受け、日本政府・防衛庁(当時)の強い要望で3ヶ月前倒しとなりました。SM3は機密が絡み、米軍を通じた完全な受注生産となっているため、企業側の技術者や工場ラインが限られています(月産2発)。そのため3カ月前倒しが限度だったといいます。

 改造工事は「こんごう」「ちょうかい」「みょうこう」については三菱長崎造船所で、「きりしま」についてはIHIマリンユナイテッドで行なわれました。

 防衛計画の大綱(04年12月10日)では「弾道ミサイル防衛にも使用し得る」イージス・システム搭載護衛艦として4隻を整備することになっていました。新型イージス艦の2隻「あたご」「あしがら」についての改造計画は未定ですが、いずれ実行されることは間違いありません。
 連邦議会に向けた米文書では「米12会計年度以降、日本の4隻のBMD能力の向上(SM3ブロック1Bへの換装?)と残り2隻へのイージスBMD能力の導入」を明記しています。

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