ホームミサイル防衛イージス艦のBMD改造

BMDイージス艦ちょうかい

1.「ミサイル防衛」対応型への工事開始

 07年8月22日に、改造工事を終えた「こんごう」が出港しました。しばらくして2隻目の「ちょうかい」は07年9月19日に三菱長崎造船所に接岸しました。実は06年12月末から07年4月にかけて年次検査を行なったばかりでした。


左:MD改造工事が始まった「ちょうかい」
右:建造中の新型イージス護衛艦「あしがら」(07年11月3日)

 改造工事ではイージスシステムをベースライン5からベースライン7(フェイズ1)に変更し、BMD3.6戦闘システムを搭載します。購入するSM3は9発で、うち1発は09年3月までに日米合同の迎撃テストに使われます。


中央錨地でレーダー試験に臨む「ちょうかい」(08年5月7日)

 08年4月から試運転が始まったようです。5月7日・8日の午後7時〜11時頃、三菱長崎造船所は修理中のイージス艦ちょうかいのレーダー性能試験を実施しました。イージス艦を長崎港の中央錨地に船尾を港口に向けて停泊させ、レーダーの捕捉対象として海自のP3C哨戒機を、同艦を中心に島原半島までを含む半径37キロ、高度6キロの空域に飛ばしました。レーダーで捉えたデータを目視によるデータと照合することでレーダーの性能を検証するというものです。

 その後、公試などで出入りが激しくなりました。最終的には08年6月22日頃に長崎港を離れています。

2.迎撃試験実施へ

 「ちょうかい」は9月9日にSM3発射テストのために佐世保を出港し、ハワイに向かいました。

 9月22日、防衛省はイージス護衛艦「ちょうかい」に付加した「BMD機能が有効に発揮できることを確認するため」の迎撃ミサイル発射試験を11月17日の週に、ハワイ・カウアイ島沖で実施することを発表しました。

 10月末、「ちょうかい」は標的ミサイルを追跡する演習を実施しました。日本での報道は一切ありません。
 標的ミサイルはハワイ・カウアイ島のバーキング・サンズにある太平洋ミサイル評価施設から発射され、「ちょうかい」はレーダーによってミサイルを追跡、そのデータを戦術データリンクを介して周囲の他の艦船と陸上の指揮施設に送信しました。さらに「ちょうかい」はイージス戦闘システムを利用して迎撃ミサイルの発射シミュレーションを行ないました。

 11月1日、米海軍はミサイル防衛庁の開発計画とは別に独自の迎撃テストを実施しました。このときに海自イージス護衛艦「ちょうかい」が参加し、標的の観測、追跡、迎撃シミュレーションを行いました。
 ハワイ・カウアイ島の太平洋ミサイル評価施設から2発の標的ミサイル(短距離弾道ミサイル)が発射され、第3艦隊の2隻の駆逐艦(ポール・ハミルトンとホッパー)のそれぞれのイージスシステムは独自に2つの標的を追跡、識別し、それらの情報を統合して、それぞれのイージス艦からそれぞれの目標に向けてSM3を発射しました。同じ情報は「ちょうかい」にも伝えられ、迎撃態勢に入るという「相互運用」を行なったのです。

 ポール・ハミルトンからのSM3は標的ミサイルに命中して破壊しましたが、ホッパーからのSM3は迎撃に失敗しました。原因は冷却されていなければ効果的でないセンサーが冷却されなかったためです。2つのSM3とも寿命に近づいており、冷却剤漏れがあった可能性が指摘されています。

3.迎撃テストは失敗 コードネーム:星のハヤブサ


「ちょうかい」から発射されるSM3(ミサイル防衛庁ホームページ)

 11月20日、迎撃テストが行なわれ、標的ミサイルの迎撃に失敗しました。

 米ミサイル防衛庁がJFTM−2として位置づけたテストでは午前11時21分(日本時間)にハワイ・カウアイ島のミサイル評価施設から標的ミサイルが発射され、「ちょうかい」のイージスシステムがこれを探知・追跡し、3分後に1発のSM3ブロック1Aを発射しました。しかし約2分後、命中する数秒前に標的を見失って失敗におわりました。原因は今のところ不明といいます。

 報道では「今回の訓練は前回と違い、標的の発射時間を事前にイージス艦に知らせず、実戦に近い形で実施した」(共同通信)としています。前回の「こんごう」の迎撃テストは標的の発射時刻が伝えられていたことになります。実戦では使い物にならないことが示唆されるにもかかわらず、再テストをする(莫大な費用がかかる!)ことなく、「システムは機能した」として「ちょうかい」は複数のSM3を新たに搭載して帰国し、「実戦配備」となります。

 12月8日、「ちょうかい」は帰国し、佐世保基地に戻っています。

 09年10月27日、防衛省は迎撃に失敗した「ちょうかい」について、日米の調査の最終結果の概要を発表しました。それによると、原因はSM3の「軌道や姿勢を制御する弾頭部の軌道姿勢制御装置の一部に生じた不正常な作動」であり、それは「弾頭部を放出した後に発生した極めて稀な事例であり、設計や製造工程に起因する問題ではないと判断」したとし、今後もSM3を推進する構えです。