スポーツでは避けて通れない疲労・・・これについて語ってみます。
疲労の原因はいろいろある。ざっと生理学的にまとめて見ましたまとめると・・・(CPやADPは個人で調べてください)
@CP(クレアチンリン酸)の枯渇。
A無機リン酸(P)やADPの蓄積による筋小胞体のCa機能の障害。
BCaポンプによる、筋小胞体へ入るCaイオンの働きが阻害される為に起こる、筋収縮の障害(Mg-ATPaseの枯渇によるCaイオンの機能障害)。
C乳酸産生でKの漏出、Naの筋内への流入。
D筋肉内のグリコーゲンの枯渇による乳酸の低下。
E活性酸素の増加。
F筋・靱帯の弾力性の低下。
G筋温の上昇。
H血液濃縮による循環不全。
J高所では空気中の酸素の酸素濃度の低下による糖分解の抑制(無酸素状態の為、解糖系で乳酸出来ると思いきや、乳酸低下により疲労 が起こる)。
K肝のグリコーゲン量の低下により脳への糖の供給量の減少
L脳の疲労(Kとは違い精神的な疲労)。
M末梢神経の疲労。
N末梢血管での血液流量の動態。
O肺での酸素化の障害。
と、ざっとこれだけ考えられます。これを一個づつ説明すると大変なので説明は、省略します・・。
ただ学生時代カエルで実験した、疲労曲線で有ることは確か・・当時は、疲労は収縮高の減少、および収縮弛緩課程の遅延であると結論づけている。これが発生する理由は、刺激頻度大、負荷大、低温又は内部条件(pH変化)であって直接的原因では無いが、乳酸の発生(下記B・Dに相当)により筋肉が弛緩遅延を起こすものと考えられる。
ましてや私の年代になると、N末梢血管での血液流量の動態が大きく関与してきます。これは、俗に言う動脈硬化等に依る血管運動の障害ですね。これは筋肉に必要な酸素やエネルギーを供給出来ない状態です。後はM末梢神経の疲労も大きいかと・・これは、脊柱管狭窄症や頚・腰椎ヘルニア等で神経障害を有する場合、末梢神経は過剰に興奮して居るわけで早期に疲労してしまいます。これが長期に渡ると神経障害が増悪する場合も有ります。O肺での酸素化の障害も大事です。これは一番の原因はたばこですね。
また細胞レベルの話になると・・・
@ 細胞膜の興奮性低下
A 興奮収縮連関(活動電位 → 化学変換)の効率低下
BATP分解による化学エネルギーを、機械的仕事に変換する(化学反応 → 力学変化の変換)効率の低下
Cエネルギー源の枯渇
D乳酸生成に伴う筋内pH減少による代謝全般の遅延(酵素には至適pHがあるため) となる。
理論的にはエネルギー源が枯渇する前に、@.A.Bによって筋は収縮しなくなる。
基本、人間は電気信号で動くものですので、電位変化やそれに伴う電解質(K、Na、Ca)などのバランスが崩れる事により動けなくなる訳です。現実的には、エネルギー源が枯渇するまで活動できるのは・・・マラソン選手くらいだと思います。単純にマラソン選手の場合、30kmからのブレーキは、このエネルギー源の枯渇と言われています。それまで、いかにエネルギーを節約して走るかが鍵となるわけです。
あと大事な事を忘れてました。筋肉の組成割合ですね。速筋(白筋)・遅筋(赤筋)の割合ですね。これは遺伝的にある程度は決まってますので、瞬発力が有るけど持たない・・とか持久力は有るけどスピードが無い。これはある意味ご先祖様からの問題ですから、速筋(白筋)の割合が多い人に、耐久性を要する競技をさせることは、どだい無理な話です。この逆のパターンも言えます。
臨床的には・・・病気による、廃用性症候群で起こる遅筋の速筋化なんかもよく見られる現象です。座るだけで疲れる・・。です。
最後に個性です。簡単に言うと自分を追い込める性格かそうでないか。がんばれるかがんばれないか・・・です。
なので一般に言われてるように・・
筋疲労=乳酸で筋肉パンパン(その世界では、パンピングとかパンプしたとか表現される)と言うのは生理学的にはあまりあり得ない話。
じゃあなぜパンパンになるの?通常は乳酸等の老廃物が筋内に溜まって起こる現象とされていた。ちょっと違うらしい・・・・。
ではなぜ、筋肉(以下;筋)は疲労すれば弛緩(筋収縮に対して弛緩という)しなくなり、筋肉パンパンとなるのか?
諸説ありますが原因の一つは、筋内のATPの枯渇があります。
筋が収縮する為には、カルシウムイオン(Ca2+)が必要です。対して弛緩する為にはATPが必要です。
ATPと言えば言わずと知れたエネルギーです。これが筋弛緩にも利用されている訳です。
従って、無酸素運動で乳酸バンバンなんて言っても解糖系では2ATP(3.08kcal)しか発生しませんので、筋収縮で使われた場合弛緩させる為のATPまでは残っていない訳ですね。
その乳酸バンバン状態で乳酸代謝を向上させるトレーニングは????
乳酸の代謝をコントロールする物質として、MCT(乳酸輸送担体)と言う物質がある。
これには、MCT1とMCT4があり、MCT1は筋より血液(血管)へ乳酸を放出する物質。
MCT4は、血液より筋中に乳酸をエネルギー源として取り込む物質です。
取り込まれた乳酸は、ピルビン酸に置き換えられてミトコンドリア内で再利用されるわけですね。そうすると上記のATPが再合成される。
MCT1の上昇は、持久的トレーニングで可能です。これは簡単ですね。
対して、MCT4はダッシュに代表される、スプリントトレーニングなど高負荷トレーニングで増やす事が可能だそうだ。
じゃあどの程度でやれば良いか?実は競技特性に応じて負荷のかけ方が違うようで一概には言いにくい。勉強不足もありますが・・。
確実に言えることは、最大速度で繰り返し行い、疲労困憊になるくらい行うこと。
目安は80%VドットO2max(VドットはVの上に ・)ですね。
これは専用の測定機器が必要で、強化プログラム下で行われてるアスリートでなければ計算出来ませんが、生理学的予測最大心拍数で当てはめることが出来ます。
計算式は:{(220-年齢)−安静時心拍数}×0.8+安静時心拍数・・となります。
これをどのような練習形態を取るかは、競技それぞれですが、インターバルを入れながら最大強度を維持する必要があります。
例えば水泳であれば7秒ダッシュ、25mダッシュとか、シャトルランとか・・最近では広島の前田投手の50mダッシュなんて有名です。
それを60分とか40分とか行うようですが、一流選手ではないので普段の練習時、意識してやれれば良いのでは?