巡礼路を歩くために
1.クレデンシャル(Credential)と巡礼証明書(Compostelano)
クレデンシャル(Credential)は巡礼者のパスポートであり、巡礼中に宿泊したアルベルゲや教会等でスタンプを押して貰い歩いた事の証明として利用します。 クレデンシャルは、Camino Francesではスタート地点となるSt.Jean Pied de Portの巡礼事務所で発行して貰うことが出来ますが、途中の教会やアルベルゲ等でも手に入ります。NPO法人日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会友の会では日本製のクレデンシャルを発行しており、現地でも人気となっていますので是非、日本から持参する事をお薦めします。
サンチャゴで巡礼証明書(Compostelano)を発行して貰うためには、徒歩又は馬で最後の100km以上歩いた人、自転車で200km以上走った人に限られます。 バスツアー等で各地を一日数Km歩いた場合は貰えません。巡礼証明書はガリシア語で記載されています。巡礼証明書は、サンティアゴの巡礼事務所で発行しています。
巡礼事務所のHP:「OFICINA DE ACOGIDA AL PEREGRINO」
クレデンシャル(Credential) |
巡礼証明書(Composrela) |
距離証明書(Certificado de Distancia) |
2.バル(Bar) と アルベルゲ (Albergue)
巡礼者にとってバル(Bar)とアルベルゲは(Albergue)は欠かせません。Barは日本のカフェとバーが一緒になった様な店で、CaffeeやBeer、Wineまたタパ(Tapa)と呼ばれる“つまみ”や”ボカディージョ(Bocadillo)のサンドイッチ等があります。 朝食、昼食そして夜までバルには世話になる事でしょう。 ブルゴス(Burgos)やレオン(Leon)等の都会ではタパも種類がありますが、田舎のバルではスペインオムレツのトルティージャ(Tortilla)程度の所が多いと思います。 アルベルゲ(Albergue)は巡礼者用の簡易宿泊施設でレフーヒオ(Refugio)と呼ばれる所もあります。アルベルゲは教会や村が管理する公共の施設(Municipal)と民営の施設が(Privado)があり、Municipalで3~7ユーロ、Privadoで8~15ユーロ程度です。
いずれも、居室は男女同室で2段ベットにマットが敷いてある程度ですが、Privadoのアルベルゲは比較的新しい所も多く設備も良くなっています。またオーナの特色が出て楽しめます。アルベルゲでは、各国の巡礼仲間と情報交換も出来て楽しいのですが、居室も設備も不便でプライバシーも無いことからストレスも溜まるので、都会ではホテルやホステル泊まりとする人も多い様です。
田舎でもホステル(Hostel)と呼ばれるホテルよりも安い宿泊設備もあり、アルベルゲに泊まらずホテルやホステルを利用しながら歩くことは可能です。
3.巡礼の一日
スペインは高緯度であるため、5,6月は日の出が7:00頃、10,11月は8:30頃、日の入りが5,6月が22:00頃、10,11月は20:20頃でした。 アルベルゲは一般的に8:00頃までに出発する事になっていますので、午後の暑さを避けるため早い人はまだ暗い6:00頃か歩き始めます。 特に6,7月であれば早めに出発が必須です。朝食は前日に用意したパンとジュースをアルベルゲで食べて出発するか、少し歩いて早朝から開いているバルを利用する人が多いですが、Via de la Plataでは途中にBarも少なく水と昼食を持って歩くことが必要です。昼食は丁度良い場所にレストラン等があれば利用する事が出来ますが、ボカディージョ等を持参しておく方が無難です。
一日の歩く距離は平均25Km程度ですので、午後2時頃には宿泊するアルベルゲに着き、洗濯と昼寝が日課です。夕食は、公共(Municipal)のアルベルゲでは自炊か近くのレストランへ皆で行きます。 私営(Privado)のアルベルゲでは食事を出してくれるところも多く巡礼仲間と一緒に食卓を囲む楽しさもありました。 スペインはワインが豊富で安く、レオン州ではRioja(リオハ)産の素晴らしいワインが飲めます。
4.これから歩かれる方へのアドバイス
Camino Frances とVia de la Plataを歩いた経験からこれから歩く人の為にアドバイスを記載します。
A:一日の歩行距離は25~30kmとする。日本国内のハイキング等で数日でしたら無理も利きますが、巡礼路は30~40日の長期間となりますので疲労状況を考えても1日の歩行は5~6時間の25~30kmとする事が望ましいと言われています。
St.Jean Pied de PortからSantiago de Compostelaまでの約770kmを、34日で歩くとと平均22.6Kmですから、宿泊場所等の事情から30Kmを超える日もありますが、連日歩く事を考えると25Km程度とする事が望ましいと言えます。 但し、Via de la Plataではアルベルゲ間の距離も長く後半は連日30kmを越える状況となりました。体調管理も十分に考慮が必要です。
B:1週間に1日程度の休養日を考慮する。歩き初めて1週間程度のになると足腰のトラブルや足のマメが悪化し、アルベルゲで休養している人が何人かいます。 現地の医者も、巡礼は連続して歩かない事(1週間に1日程度休む)と勧めておりました。 疲労を蓄積せず、適度な休息を取るため1週間に一日程度は休養日を考慮することが、完歩の秘訣と思います。
C:携行品は必要最小限とする。アルベルゲでの宿泊を考えるとシュラフ(寝袋)、雨具及び着替え等の荷物でザックもかなりの重さになります。 毎日背負って歩く重さとして10Kg以内が望ましいと言われています。現地でも衣類や日用品は購入可能ですので必要最小限で考慮すべきです。
D:いろいろな歩き方を考える。フランス人の道の際は幸いにも途中でバスやタクシー等を利用せずに歩くことが出来ましたが、完全に歩き通すことを必須とは考えていません。 巡礼者の仲間も途中のセンダ(Senda)やBrugos、Leon等の都市部近辺ではバスを利用している人が何人かいました。 途中の村でスッチを楽しみながら、のんびり歩いている人もいます。 また、最後の100kmとなるサリア(Sarria)から歩き始める人や巡礼路を分割して何年かで完歩する計画で歩いている人も大勢います。(近隣国の巡礼者は分割で歩く人の方が多いと言えます) 全区間を歩き通す事だけを目的とするのでなく、それぞれのスタイルで歩く事を考えても良いと思います。
E:歩く目的とサンティアゴへ到着する信念を持つこと。巡礼路は決して素晴らしい風景ではなく、犬に吠えられ牛の糞を踏みながら単調に歩く毎日で、誰でも1度や2度は何のために歩くのか考える事があるでしょう。 ストレスを溜めない事も必要ですが自分自身で歩く目的を持ち、必ずサンティアゴへ行こうとの信念を持っていることが必須です。
F:出来れば一人で歩く時間を持つこと。仲間と話しながらも楽しいと思いますが、長い時間を歩くので一人で歩く時間を持ちいろいろ考えながら歩くことも巡礼の良さと言われています。 米女優のシャーリーマクレーンは自分で歩いた経験から紀行「エル・カミーノ」に”カミーノ(Camino)は霊的な道である”と書いています。私は特に途中でインスピレーションが合ったわけではありませんが、色々な事を考える時間が持てました。 せっかくの巡礼路の時間を有意義に使うべきと思います。