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vol 17 : 動き出す世界
あれから、俺は蛇に興味を持ちはじめた。
ネットで調べたり、蛇のドキュメンタリーのDVDを見たり。
蛇について知りたくなったんや。
日本では蛇は各地で神様として祀られてる。
でも、外国になれば悪魔として書かれてる事が多い。
それには、あの天界の話に関わってくる事が解った。
俺が水の神に説明を受けたんは、
天界が先に出来て、後で黄泉の国が出来た。
蛇は黄泉の国の神。
天界では地面を這う汚らわしい生物。
でも、始めからそうではなかったらしい。
俺は解らない事だらけの中、自分なりに調べてみたけど、やはり解らない。
そこに大樹から電話が鳴った。
『カン、俺あの後さ、蛇が気になって調べてみたんだ。』
コイツ・・・同じ事しとる。
『でね、解った事があるんだ。確信はないけど。』
「言うてみぃや。」
『うん。始まりは天界しかなかったと考えて、
この世に出ているそれ系の本を漁って読んだんだけど、
天界には神とミツカイと天使が居て、神が自分と同じ姿に作ったのが、
ミツカイ。死んだ霊が神に仕えると天使になる。
神が人間を作った時に男と女を作った。
先に男を作ったんだけど、一人じゃ可哀想だと後で女を。
そして神は、人間の自分への信仰を見る為に、
一つの木になる果物を人間に食べてはならないと約束させた。
神は人間をとても可愛がっていたんだ。』
「スゲー話やな、それ。」
『それを唯一妬んだミツカイが居た。神と同じ力や知恵を持つが故に。
そしてそのミツカイは蛇に化けて女の人間に近付き、果物を食べるように、
唆したんだ。女は食べたら死んでしまうと言って拒んだけど、
蛇は死にはしない、とてもとても美味しいよって。
女は誘惑に負けて果物を食べてしまう。
それはすごく美味しくて、それを見た男は注意するも女に勧められて、
食べてしまう。すると人間は知恵を持ち、自分たちが裸の事に気付くと、
恥ずかしくなって木の葉で性器を隠すようになった。
それを神が知って、神は激怒し人間には命を、
騙したミツカイには蛇の姿のままにした。
そのミツカイが悪魔のサタンと呼ばれている。』
「・・・で、それと黄泉の国と天界のイザコザとどう関係するん?」
『うん。だから黄泉の国は人間の霊の世界だろ?
この世の蛇が死んだら黄泉の国の蛇の国に行く。
その蛇達の先祖が悪魔のサタンで、天界はそれに尾を引いて、
蛇を神とする黄泉の国を神の世界だと認めてないのかなって。』
大樹くん?俺も蛇について調べてたのに、
チミは何故にそこまで考えられんねや?
頭の差か・・・クソ。
「せやけどな、俺らが見たんは俺らの過去っちゅー話で、
今は天界と黄泉の国も仲良しーになってるんちゃうん?
続きなんで教えてくれへんねやろ・・・」
俺は解ってて口に出す。
『そういう世界なのかもしれないよ。
自分で知れ。』
「な~る・・・」
俺は苦笑して返事をした。
俺が調べてた事。
それは、蛇の生体とか蛇の種類とか・・・。
ぜっんぜん天界とか関係ない事ばっかやん。
笑うしかないな。これが天の子かい!
『それとさ・・・あれから俺にぴったり一緒に居る蛇がいるんだ。
真白で目の赤い小さな蛇。』
「それ、どういう事や?」
この電話の後、俺は慌てて自転車に乗って織田家に向かった。
「大樹!」
玄関を開けて靴を脱ぎ、慌てて2階に上がって行く俺に、
声を聞いた千代さんが、
「カンちゃん?」
居間から不思議そうに声をかける。
「あ、お邪魔します!」
挨拶しながら階段を駆け上がって大樹の部屋へ。
ドアを開けると、大樹の部屋に無数の蛇がうごめいてた。
「う・・・っ!」
あまりの光景に大樹に口を手で押さえられ悲鳴を妨げられた。
俺は大樹の手を掴み離させ、
「た、大樹、なんやこれ!」
その質問に大樹は困った顔をしながらもヘラリと笑い、
「うん・・・良く解らない。」
足にうごめく蛇軍団が俺の足にも巻きつき這い上がろうとする。
背筋に寒気が走った。
大樹はドアを閉めて部屋中の蛇を気にせずにデスクの椅子に座った。
蛇は大樹が歩くと自ら道をあけるようにしてうごめく。
「蛇の事、調べてたらなんか増えちゃって。」
「でも大樹・・・こいつら・・・霊。」
よく見ると蛇は体が透けている。
どうやら大樹はこの霊達が見えているらしい。
「そうなんだ。父さんや母さんも見えないみたい。
でもね、ほら・・・。」
大樹が手のひらを見せると、そこには真白で赤い目の小さな蛇が蹲っている。
一瞬透けているも、見れば見るほど形はハッキリする。
「可愛いだろ?」
笑顔で言う大樹に俺は手を顔の前でブンブン左右に振り、
青褪めた。
「慣れたら可愛いよ?」
そう言うと白蛇は俺の方を向くと、
大樹の手から浮いて空気を這い向かって来たんや。
俺の目の前で止まって小さく頭を下げた。
(天の子、我は大樹の次に生まれた大神の子だ。)
「次に生まれた?」
(兄様はこれからお前と様々な事に出くわす。
だから我が守りに来た。)
この蛇・・・ちっこいくせにえらい生意気な口調やんけ。
「カン?」
俺と蛇の会話は大樹には聞こえへんみたい。
「大樹、お前この蛇の軍団の声聞こえるんか?」
俺の質問に大樹は目を見開き、
「えっ!この子達、何か話せるの?」
やっぱり。
うごめく蛇達はゴニョゴニョと話をする。
(人間・・・人間・・・我らをなぜ追うか。)
結果、大樹が調べてた事に不思議に思い蛇達がここに居る模様。
(我らを侮辱するためかっ!)
1匹の茶色がかった蛇が口を大きく開けて歯をむき出しにし、
大樹に襲いかかろうとした。
「大樹!」
俺は大樹を助けようと手を伸ばすも、
白い小さな蛇がすかさず大樹に襲いかかる蛇の体に噛み付き、
振り落とした。
大樹は目が点になっている。
(この者達はお前らを救う者。手出しは許さん。)
部屋中にうごめく蛇達は再びブツブツ同じ事を言うてる。
大樹は目の前の白蛇を抱きしめ頬ずりし、
「君、助けてくれたんだね。ありがとう!蛇さん!」
ぶっ!大樹・・・蛇さんってキャラやない蛇やぞオイ。
「ねぇ、カン。この蛇さんも何か言ってるの?」
慣れとは恐ろしく、部屋中の蛇に段々無関心になりだした俺は、
ベッドに上がって胡坐をかいて座り大樹の説明に答えた。
「そいつ、お前の弟らしいで。」
「お、弟?」
「大神からお前の後に生まれたんやと。」
それを聞いた大樹は目をうるうるさして白蛇を見つめ、
「俺に弟が・・・うぅ。」
泣く大樹に俺は呆れモード全開やけど、
白蛇も呆れモード全開で目を細めとる。
(兄はいつもこうなのか?天の子よ。)
(せやで、そいつは泣き虫の感動野郎や。)
俺と蛇との会話は大樹には聞こえない。
「カン、弟の名前なんて言うのか聞いてよ。名前で呼びたいんだ。」
涙を拭いながら微笑みかける大樹に、しゃーなく聞く。
(で、名前はあるん?)
(白蛇神〔はくじゃかみ〕と呼ばれている。)
「しろ」
「シロっ?」
(はくじゃかみ)
「うん、しろ。」
(はくじゃかみだと言って・・・っ!)
「シロ~!」
俺は意地悪です。
大樹は頬ずりし、名前をシロだと思いこみ嬉しい感情を露にした。
頬ずりされながら白蛇神は俺を睨む。
ケケケ
そして大樹を守るシロが織田家の一員となった。
俺はベッドの上で寝転がりながら、未だ威嚇する蛇達を見つめ、
時折わざと噛まれてみてやるも痛みもなく、
噛んで離さない蛇をブンブン振ったりして、次第に疲れて落ちる蛇を、
自分の横に寝かせてやり頭を撫でてやる。
大樹はパソコンに向かって再び調べ物に没頭。
シロが俺の目の前にニョロニョロとやって来た。
(天の子よ。我はシロではない。訂正しろ。)
(えぇやん。シロのが愛嬌あるし、偉そうに見えんしな~その方が。)
(・・・)
俺はからかいながら話す。
(天の子よ)
(俺はそんな名前ちゃう・・・。俺はカンや。
戌尾 柑。)
天の子。
この名前を呼ばれる度に今の自分が追い詰められる感覚になる。
俺は天の子やない。
戌尾 洋子の子や。
(天の子よ。我は神。その様な態度は許しがたい。)
へっ!
(だから?それで?神やからなんなん。神やからあだ名で呼ぶなってか?
そんな気持ちでよう大樹守りに来たなぁ。)
ムカつく。
(あだ名の意味わからんくせに神気どりすんなや。シロ。)
あだ名。
それは、そいつにしかない名前。
愛着わかす為の名前。
(・・・)
シロは口を大きく開けて歯を剥き出しにし威嚇する。
ふんっ。どーせ痛ないんやし噛めば?
シロは俺のプリチーな小鼻に噛みついた。
ぜーんぜん痛く・・・
「いったぁああああ!」
歯の食い込む痛さに鼻を押さえて転げまわった。
なんでや?なんで痛いん?そんなはず・・・。
「カン!どうしたの?!」
俺の叫び声に驚いてこっちを向く大樹に俺は青筋立てて、
「し、シロが、シロが噛んだぁああああ!有り得へん!」
「シロが?」
大樹が俺に近付き鼻を見る。
「歯型いって赤くなってる。シロ、だめじゃないか。
カンにごめんなさいは?」
大樹、そういう問題やない!
(だから言ったであろう。我は神だと。天の子よ。)
大樹にメッと叱られながらも俺に堂々たる態度。
「俺は・・・俺はカンや言うとるやろ~がぁああああ!」
俺はシロを捕まえようとするも空中を泳ぎ馬鹿にするかのように逃げるシロ。
「待て!待てゴルァ!」
俺は追い回して机の角に足の小指ぶつけ蹲る。
「ぬぁあああああ!」
「ちょっつ!二人とも、やめなよ。」
(フン。)
蹲る俺の体のアチコチに噛み付く蛇達。
俺とシロにアタフタする大樹。
馬鹿にするシロ。
馬鹿にされる俺。
俺達の周りが動きだした。
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