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教科書水準の著書
関数解析の基礎 近代科学社 (1990) ISBN4-7649-1017-9 C3341
自分で言うのも変だが,数学科の学生はもちろん,工学系の人たちにも,非常によい本であろう.
もともと九州大学工学部における講義が元になっているが,非本質的な数学的細部には立ち入っ
てはいない.つまり,森を見ずに落ち葉や木の幹の苔などにいたずらに執着することを避けたつもり
である.必ずしも成功したとは思わないが,この姿勢が大事なところかも知れない.残念なことに,
初刷にはミスがあり,読者からの指摘によって3刷少なくとも4刷以降では修正が済んでいる.
心残りなのは,ウェーブレットやワルシュ関数を意識して取り込めなかったことである.
フーリエ解析入門 森北出版株式会社 (2000) ISBN4-627-03621-3
C3341
これもよい本のつもりである.ただし,初刷のままなので,いろいろとあるつまらないミスを修正する
機会がない.標本定理や離散フーリエ変換まで一応扱った. 薄っぺらな本ではあるが,演習問題
にヒントつきで重要な話題を含めてある. 数学処理ソフト Maple の使用を前提にした論述もある.
判断の難しいところであるが,ソフトは頻繁と改訂されるので,陳腐化するとすれば,この部分から
であろうが,実際に用いているのは,改訂に無縁なはずの基本的なアルゴリズムだけである.
無限を垣間見る 牧野書店 (2000) ISBN4-7950-0137-4 C3041
もちろん,これも非常によい本である.もともとは九州大学数理学研究科(当時)の公開講座の
原稿であった. 扱った内容は19世紀から20世紀にかけてのいわゆる数学の危機に際して展開
された議論が中心になっており,今日では数学科の入門講義で必ず (しかし軽く,内実は,半世紀
以上も前の書物の孫引きで)触れられる. 例えば,ツォルンの補題と喧伝されるものが実は論文として
は出版されなかったことを知る人は少なかろう.本書も,この点に関しては,ツォルンへのインタヴュー
の文献を挙げるだけだが,それだけでも昨今わが国で出版されている類書との違いは明らかであろう.
また,いわゆる被覆定理の形の若干の例の計算に数式処理ソフト Maple を利用しているのも
本書の特徴である.なお,文末に,遅ればせの自戒であるが,次の文章を入れてある:
個別の工夫で他人と違うことをする程度では独創的というのに値しない.
我々の存在そのものが不可欠であり,無二のものであることを証明できて
初めて独創というのだ.