独断的JAZZ批評 846.

GEORGE MRAZ / DAVID HAZELTINE TRIO
弾き慣れた曲を肩肘張らずに演奏したという感じ
"YOUR STORY"
DAVID HAZELTINE(p), GEORGE MRAZ(b), JASON BROWN(ds)
2012年11月 スタジオ録音 (CUBEMETIER : MJCD 21351)

DAVID HAZELTINEのアルバムとしては1998年録音の"WALTZ FOR DEBBY"(JAZZ批評 56.)を紹介しているが、酷評に近かった。
本アルバムもベースにはGEORGE MRATZが参加している。1970年から現在に至るまで、MRAZは引っ張りだこで色んなアルバムに登場したものだ。ピアノ・トリオと言えば、このベーシストが参加していれば星半分は確実にアップすると思われていたのではないだろうか。ファンとしては、もう少し仕事を選んでほしいと思った時期もあった。
そのMRAZも今では69歳になった。HAZELTINEも55歳でベテランと言われる年齢になっている。

@"AROUND THE CORNER" ピアノの巨匠・BARRY HARRISが書いたブルース。いかにもHARRISが書いたという曲想がいいね。アドリブではミディアム・テンポの4ビートを刻むが、MRAZのベースに往年の伸びやかで艶のある音色が失われているのが惜しい。ブリッジを低くしてアンプの増幅を強くしたのか?MRAZももうじき70歳を迎えるし、握力も衰えてきたのだろう。この人、大の親日家で、来日回数も50回を超えるという。
A"TURN OUT THE STARS" 
B. EVANSの書いたバラード。MRAZのベース音がくぐもって聴こえる。
B"BARBARA" 
BROWNのブラシがサクサクと気持ち良い。4ビートを刻むようになるとスティックに持ち替える。
C"FOR B.C." 
MRAZのオリジナル。タイトルのB. Cとはニューヨークでベースとピアノのデュオを専門に扱ったジャズ・クラブの元オーナーらしい。
D"YOU MUST BELIEVE IN SPRING" 
B. EVANSの愛奏曲でもある。MRAZのベース・ソロが展開されるが、弾き方がチマチマしている。昔はこんなことはなかった!
E"YOUR STORY" 
このアルバム、二つ目のEVANSの曲。
F"I DIDN'T KNOW WHAT TIME IT WAS" 
スタンダードとして定着しているR. RODGERSの曲。心地よい4ビートを刻む。HAZELTINEが生き生きと弾いている。このアルバムのベスト。
G"WISTERIA" 
H"EV'RY TIME WE SAY GOODBYE" 
今度はC. PORTERだ。最後をしっとり締めるバラード。MRAZのベースが電気臭い音色になっている。

お目当てのGEORGE MRAZのベース・ワークに往年のキレがない。音色もどんよりとした音色になってしまった。年齢からくるものなのかもしれないが残念だ。
MRAZの絶好調時はTOMMY FLANAGANとの"ECLYPSO"(JAZZ批評 90.)やBARRY HARRISとの"FIRST TIME EVER"(JAZZ批評 20.)など良いアルバムが目白押しだが、ベスト・ワンを選べと言われたら躊躇なくDON FRIEDMANとの"LATERE CIRCLE"(JAZZ批評 550.)を僕は選ぶ。機会があったら、是非聴いてもらいたいアルバムだ。
本アルバムは所謂、スタンダード集と言っても良いだろう。弾き慣れた曲を肩肘張らずに演奏したという感じ。HAZELTINEのピアノも可もなく不可もなくという感じで無難に仕事を終えたと言ったら言い過ぎだろうか?でも、これではリスナーは満足しないね。   (2014.01.23)

試聴サイト : http://www.youtube.com/watch?v=XEpoSOg74Rk
          http://www.youtube.com/watch?v=Bp8wW7ayOBc



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