BARRY HARRIS
BARRY HARRIS TRIO "FIRST TIME EVER"
BARRY HARRIS(p),GEORGE MRAZ(b),LEROY WILLIAMS(ds) 1996年10月録音

JAZZ批評 18.ジュニア・マンス、19.レイ・ブライアントとくれば、今、生きているハード・バップの巨人は、このバリー・ハリス。(トミー・フラナガンは2001年に死去)
1996年の録音であるが。この頃バリー・ハリスは病み上がりだったらしい。齢、70歳になるらしい。
そう言えば、最初のオリジナル曲"UNO DOS TRES"でも若干、手がもつれているが、そんなことは気にしない、気にしない。それを補って余りある演奏を全編で繰り広げているのだ。
このCDでは全8曲中、スタンダード・ナンバーの"YOU GO TO MY HEAD","SMOKE GETS IN YOUR EYES"(「煙が目にしみる」)以外は全て、ハリスのオリジナル。ハリスはなかなかのメロディ・メーカーでもある。
特に、3曲目のスロー・バラード"TO WALTER DAVIS JR. WITH LOVE"の美しいことといったらない。ベースのジョージ・ムラーツのベース・ソロも美しい。泣かせますよ。この曲は!

このCDを締めているのは、ベースのムラーツの存在だ。このベーシストは僕の好きなベーシストの一人である。特に、ピアノ・トリオでの伴奏者としてはうってつけの人だと思う。兎に角、よく歌う。スタンダード・ナンバーなど歌ものの伴奏は最高。伸びのある艶やかな音色と正確な音程、ノリのよいベース・ラインと3拍子揃っている。だから、ピアノ・トリオのサイドメンとしてよく呼ばれる。トミー・フラナガン、ドン・フリードマンなどなど、数え上げればきりがない。

"K.G"はハリスお得意のブルース・フィーリング溢れるマイナー調の32小節の歌もの。ベース〜ピアノのソロの後にドラムスとの4BARS(4小節毎のやり取り)と続く。ピアノのソロはあくまでもシンプル、しかし、「おおっ!これぞバリー・ハリスだ」と思わせる1曲。

このように、1950年代後半以降に数多くの名作を残したJAZZの巨人達が、今もなお、かくしゃくとして素敵なジャズ演奏を残してくれるのはうれしい限りである。

余談になるが、「JAZZ最高の楽しみ方」などを書いておられる寺島靖国氏が愛情を込めて書かれたライナーノーツも印象深い。                (2001.08.18.)

<2002年5月25日追記>
向こう受けするような凄みはないが、自然体の美しさ。ベースのMRAZとのコンビネーションが素晴らしい。MRAZの最高傑作とも言えるだろう。自然体のピアノと良く歌うベースの妙を聴いていただきたい。「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。




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バリー・ハリスのメロディ・メーカーとしての再認識を促す佳作。
ジョージ・ムラーツのよく歌うベースも聴き所。

独断的JAZZ批評 20.