独断的JAZZ批評 842.

GEORGES PACZYNSKI TRIO
総花的に組曲的な展開を施してみたという印象の方が強い
"LE CARNET INACHEVE"
VINCENT BOURGEYX(p), MARC BURONFOSSE(b), GEORGES PACZYNSKI(ds, p on K)
2013年7月 スタジオ録音 (ARTS & SPECTACLES : ASCD 130701)

GEORGES PACZYNSKIのアルバムは今までに3枚紹介している。2006年録音の"GENERATIONS"(JAZZ批評 435.)はジャズ批評誌の金賞に輝いているが、僕の評価は星4つと低調なものだった。ピアノ・トリオなのでピアノが輝いていないと面白くないのだが、このアルバムでは実験的な色彩が強くて躍動感あふれるピアノ・トリオとはならなかった。
この傾向は本アルバムでも強くて、短い演奏時間のトラックを多数集めて、一種、組曲的な展開を施してみたという感じだ。
Nを除く、全ての曲がPACZYNSKIのオリジナルで、Kでは自らのピアノ・ソロを披露して器用なところを見せている。


@"LE GARDIEN DE PHARE" 
ヨーロピアン・テイストのリリカルな演奏でスタートする。本アルバムの中で最長の5分と24秒。
A"L'APATRIDE" 
同じような曲想で終える2分と42秒。
B"LA DERNIERE VALSE DE MADAME DE ..." 
今度はワルツだ。やっとと言うべきか、躍動したトリオ演奏が聴ける2分と40秒。
C"LE POSSEDE" 
これまた似たような曲想。全部を通して一つの組曲と思えば、そうかも知れない。
D"AU COEUR DES TENEBRES" 
低温度感のつまらない曲だ。パス!
E"LA VIOLONCELLISTE" 
出だしから華やかな4ビートを刻む。シンバル・レガートが心地よい2分と42秒。
F"10 AVRIL 2010" 
ここはPACZYNSKIのドラミングに耳を傾けたい。マレットを使用したドラミングが素晴らしい。最も情感あふれるトラック。
G"STRUGGLE FOR LIFE " 
音が良いという以外に書く術のない2分半。
H"L'ETRANGE MACHINISTE" 
PACZYNSKIとピアノのデュオ。温度感の低いやや抽象的な演奏。全然面白くない。
I"TOUT CELA AVAIT BIEN UN SENS ..." 
同じく、PACZYNSKIとピアノのデュオ。前曲と似たような演奏。
J"LE PORTRAIT DE LAURA" 
Gから4曲続けて2分台の演奏時間。心地良いワルツ。
K"LE CARNET INACHEVE" 
この曲のみPACZYNSKIのピアノ・ソロ。
L"IMMOBILE, EN SON DETACHEMENT" 
静かなバラード。ベースはアルコで始まる。静かな演奏というだけで沸き立つものがないまま終わる。演奏時間が2分6秒とライナーノーツに書いてあるのは間違いで、5分4秒が正しい。
M"L'INSCRIPTION EFFACEE" 
フェードインで始まりフェードアウトで終わる2分間にどういう意味があるのか分からない。
N"MOTHER OF EARL" 
BILL EVANSの愛奏曲として知られている佳曲。やはり曲が良いと演奏が締まる。こういう演奏だと録音の良さが相乗効果を上げている。ピアノもベースもブラシもいい音色だ。

PACZYNSKIのアルバムの中では1991年のライヴ録音盤"8 YEARS OLD"(JAZZ批評 439.)がお勧めで、躍動感や緊密感を堪能できるし、ライヴ録音の熱気が後押ししたのか、何にもましてホットである。
それに比較して本アルバムは先に紹介した"GENERATIONS"における温度感の低い演奏の延長線上にあるアルバムと言えるかもしれない。
総じて、演奏時間が短い。2分台の演奏が8曲もある。従い、一つの曲を突き詰めたという印象よりも、総花的に組曲的な展開を施してみたという印象の方が強い。
折角の録音の良さが生きてこないのが残念。   (2014.01.08)

試聴サイト : http://diskunion.net/jazz/ct/detail/1005516314



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