独断的JAZZ批評 807.

EDWARD SIMON
腕利きが集まると普通に演奏するのが厭になるのだろうか?という疑問を呈したくなる
"LIVE IN NEW YORK AT JAZZ STANDARD"
EDWARD SIMON(p), JOHN PATITUCCI(b), BRIAN BRADE(ds)
2010年12月 ライヴ録音 (SUNNYSIDE : SSC 1343)


EDWARD SIMONのアルバムは今までに4枚紹介している。そのうちの2枚が今回のメンバーと同じ。残る2枚のうち1枚が"SIMPLICITAS"(JAZZ批評 384.)でベースにAVISHAI COHEN、ドラムスにADAM CRUZを迎えている。残る1枚が"DANNY BOY"(JAZZ批評 678.)でPHILIP DONKIN(b)とSTEPHEN KEOGH(ds)が参加している。皮肉なことに、この2枚に5つ星を献上していて、このメンバーと同じアルバムはどちらも半星ほど欠けている。
JOHN PATITUCCIにしろBRIAN BRADEにしろ、今を時めく強力サイドメンであることに間違いはない。良きメンバーが揃えば、必ず良いアルバムが出来るとは限らないのが面白いところだ。
このアルバムは僕が持っているアルバムの中では初めてのライヴ盤。いずれの曲も長尺。わずか5曲でトータル60分にもなる。

@"POESiA" このアルバムと同じメンバーで2008年に録音した同名タイトルのアルバム(JAZZ批評 564.)にも入っているSIMONのオリジナル。リリカルなテーマで始まるが、次第に高揚感が高まってきてPATITUCCIのベース・ソロへと繋がっていく。PATITUCCIのベース・ワークは饒舌でテクニック抜群であるが、僕の好みではない。
A"CHOVENDO NA ROSEIRA" 
冗長気味なベース・ソロで始まる。その後、変拍子の定型パターンを刻みだす。僕はこの変拍子というのが苦手だ。全然、耳に、身体に心地よくないのだ。
B"PATHLESS PATH" 
この曲も、同じメンバーによる2006年録音の"UNICITY"(JAZZ批評 376.)に挿入されているSIMONのオリジナル。アブストラクト色の強い演奏でスタートする。内省的なインタープレイから徐々にインテンポになって高揚感が増してくる。サポートに徹するベースとドラムスから生まれる緊張感、緊迫感が見事。15分を超える長尺ではあるが聴き応えあり。これはこのアルバムのベストでしょう。
C"GIANT STEPS" 
J. COLTRANEのオリジナル。SIMONの長めのイントロから徐々にテーマにシフトしていく。
D"PERE"
 変拍子の定型パターンをベースとドラムが刻んで進む。モーダルな演奏だ。ここではBRADEのドラム・ソロが用意されているが、ピアノとベースのリズムが合っていないようで合っているところが聴きどころだが、気分としては隔靴掻痒の気分だ。
 
先に書いたように、5つ星を献上した"SIMPLICITAS"と"DANNY BOY"をもう1回引っ張り出して聴き比べてみた。そうすると、この2枚の方がシンプルでナチュラルという感じがするのだ。変拍子をやるわけでなし、奇を衒うわけでもない。普通に素晴らしいのだ。これがいいんだなあ!
対して、このアルバムは、腕利きが集まると普通に演奏するのが厭になるのだろうか?という疑問を呈したくなる。テクニックに溺れるというか、策に溺れるというか、奇を衒うというか、普段と違うSIMONの演奏を見せつけられた気がする。(もっとも、このメンバーではいつもそうであるが・・・) モーダルで変拍子が好きという方には良いかもしれないが・・・。
最初、星4つかなと思ったのだが、Bが良かったので星4.5に変更した。   (2013.06.05)


試聴サイト : http://www.youtube.com/watch?v=NXSG-Jf-7WA



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