EDWARD SIMON
このピアニストの持ち味は美しく、シンプルに、大らかに歌うことで生きてくると思う
"POESIA"
EDWARD SIMON(p), JOHN PATITUCCI(b), BRIAN BLADE(ds)
2008年2月 スタジオ録音 (CAM JAZZ : CAMJ 7819-2)

EDWARD SIMONの2006年録音の"UNICITY"(JAZZ批評 376.)以来の同じメンバーによる録音である。ベースにJOHN PATITUCCI、今回もアコースティック・ベースとエレキ・ベースの両方を操っている。ドラムスには切れ味鋭いBRIAN BLADEという豪華メンバーの取り合わせだ。
更に2年遡る2004年にはベースにはAVISHAI COHEN、ドラムスにADAM CRUZという組み合わせで"SIMPLICITAS"(JAZZ批評 384.)という傑作アルバムを出している。個人的には後者の方が好みだ。躍動感溢れストレートな表現が気に入っている。特に、ABISHAI COHENのベース・ワークは聴きものだった。
このアルバム、SIMONが6曲を提供し、残る3曲をPATITUCCIの
ADJOHN COLTRANEのBが占めている。

@"MY LOVE FOR YOU (take 1)"
 SIMONのピアノ・ソロ。実にしっとりとした佳曲で、こういうピアノを弾くピアニストの素性がわかるというものだ。きっと心優しい人なのだろう。
A"WINTER" 
B"GIANT STEPS" 今度はテーマ崩しで始まるが徐々に快い4ビートへとシフトしていく。どうなんだろう?このSIMONとPATITUCCIとの組み合わせというのは?少々饒舌気味で表に出ようとするPATITUCCIよりはサポートに徹することの出来るAVISHAI COHENの方が僕には適役と思えるのだが・・・。
C"ONE FOR J. P." PATITUCCIがエレキ・ベースを弾いている。6弦ベースと思われるが、まさにエレキ・ギターの音色だ。ここでは見事なベース・ソロを披露している。こういうメロディ楽器的なプレイが出来ると、裏方に徹するアコースティック・ベースのプレイが物足りなくなってくるのだろうね。
D"ROBY" 美しいテーマの曲で、こういう曲ではSIMONの持ち味が生きている。
E"POESIA" 好みの問題かもしれないけど、PATITUCCIよりCOHENの方がこのSIMONには合っていると思う。テクニック抜群ゆえに小細工が好きで饒舌なPATITUCCIに対してテクニックはあっても大らかに歌うCOHENのベースの方がダイナミズムがあってより好ましく聞える。
F"INTENTION" 
G"TRIUMPH" 
PATITUCCIはここでもエレキ・ベースに持ち替えている。この演奏はこのアルバムのベストだと思う。@のリリカルなピアノ・ソロとは好対照の曲で、緊迫感溢れるピアノのバッキングに乗って定型パターンが繰り返されていくが、徐々に昂揚感を増していくBLADEのスティック捌きが素晴らしい。まさにBLADEの独壇場だし、BLADEのためにある曲。いやあ、このドラミングは凄いね。
H"MY LOVE FOR YOU (take 2)"
 "take 1"とほとんど変わらぬ演奏であるが、心洗われる演奏にじっくりと耳を傾けたい。
 
僕がBRIAN BLADEの存在に注目しだしたのは、2001年録音のWOLFGANG MUTHSPIEL(g)の"REAL BOOK"(JAZZ批評 62.)からで、「これから売れっ子になること請け合いだ。ブラッシュ・ワークといい、4ビートのシンバリングといい、人を乗せるすべを知っている。今後の活躍が楽しみだ。」と書いている。その後の活躍は記すまでもないが、個人的には北川潔とのトリオが印象に残る。今やジャズ・ドラム界の押しも推されぬ存在になった。
EDWARD SIMONはリリカルな演奏からハード・ドライヴなモード演奏まで幅が広い。でも、このピアニストの持ち味は美しく、シンプルに、大らかに歌うことで生きてくると思う。   (2009.06.23)

試聴サイト : http://www.camoriginalsoundtracks.com/site/index.php?site=&path=cd&idcd=1502&label=CAMJα=P



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独断的JAZZ批評 564.