独断的JAZZ批評 808.

KEITH JARRETT
今更ながらにKEITH JARRETTである
"SOMEWHERE"
KEITH JARRETT(p), GARY PEACOCK(b), JACK DEJOHNETTE(ds)
2009年7月 ライヴ録音 (ECM 2200 B0018362-02)


今更ながらにKEITH JARRETTである。「今更ながら」と思いつつも、またしても手にしてしまう麻薬のような魅力こそKEITHのKEITHたる所以だろう。
2009年録音というと、既に4年も前。それでも、僕が持っているCDの中でも最新録音盤となる。ディスコグラフィを調べてもトリオとしての最新録音のようだ。(ソロでは2011年録音の"RIO"がある)
最年長のPEACOCKは1935年生まれだから、今年78歳になる。録音当時でも74歳だ。KEITHはそれより10歳若い。ジャズの世界ではまだまだ老け込む歳ではないが、体力が伴っていないと全世界を股に掛けるのは辛いだろう。今年の5月には結成30周年記念の日本公演が催されたが、そこいらが、トリオの見納めだったかもしれない。最近はトリオとしての活動よりもKEITHのソロ活動の方が多くなっている。
このアルバムはスイス・ルツェルンのコンサート・ホールでのライヴ録音盤。

@"DEEP SPACE-SOLAR" 1曲目のこの曲が上手くトレースしない。こういうのって興が覚める。ピアノのイントロから直に"SOLAR"に移る。いつもながら、3者のインタープレイは見事!躍動感もあるし、緊密感もあるし、何より、演奏が熱い。
A"STARS FELL ON ALABAMA" 心に沁みるなあ!日頃のストレスも邪念も捨てて、この1曲に酔い痴れよう!バラードであっても躍動するPEACOCKのベース・ワークとDEJOHNETTEのブラシ・ワークがいいね。
B"BETWEEN THE DEVIL AND THE DEEP BLUE SEA" 
ミディアム・テンポの4ビートを刻んでズンズン進む。DEJOHNETTEのシンバリングが実に心地よい。これぞ、4ビートの王道でしょう。皆が楽しげで最高!KEITHの唸り声もやけに大きい。興が乗っているんだね。ドラムスとの8小節交換を挟んでテーマに戻る。
C"SOMEWHERE-EVERYWHERE" 
アメリカ・クラシック界の指揮者でもあり作曲家でもあるLEONARD BERNSTEINの曲からKEITHのインプロヴィゼーションへとシフトしていく。19分にも及ぶ長尺。最後の10分はKEITHお得意の循環コードでリフを繰り返す。これが長すぎて少々ダレル。
D"TONIGHT" 
これも同じくBERNSTEINの曲。こちらはアップ・テンポでズンズン、グイグイ進む。スイングしまくっているものね!3人のコミュニケーションも十分で、今更、何も言うことがない。
E"I THOUGHT ABOUT YOU"
 毎度、お馴染みのKEITHの唸り声もいつまで聴けるのだろうか?

結成以来30周年のこのトリオはジャズの王道をまっしぐらに駆け抜けてきたと言っても過言ではないだろう。その中には紆余曲折や変遷があったに違いない。
そして今、このグループには30年前の"STANDARDS"の原点に回帰しようという意志が働いているのではないだろうか?
躍動感と緊密感に溢れ、アンサンブルが美しい。歳はとっても実に若々しい演奏だ。これはもう、どこから聴いても一級品のジャズということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2013.06.12)

試聴サイト : http://www.youtube.com/watch?v=Ulmy75pv26I
          http://www.youtube.com/watch?v=nKO-1d_gdr8 
          http://www.youtube.com/watch?v=XYJDGhur4AM



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