独断的JAZZ批評 753.

NATHALIE LORIERS
音の空間を上手に使って間を持っているのがいいね
"LES 3 PETITS SINGES"
NATHALIE LORIERS(p), PHILIPPE AERTS(b), RICK HOLLANDER(ds)
2011年11月 スタジオ録音 (DE WERF : W.E.R.F.103)


NATHALIE LORIERSのアルバムは初めて購入した。今までにも何回かチャンスはあったはずなのだけど、結果として初購入になった。ベルギーのピアニストだ。ベルギーのピアニストというとIVAN PADUART(JAZZ批評 190.)やMICHEL BISCEGLIA(JAZZ批評 428.)、あるいはERIC LEGNINI(JAZZ批評 332.)を思い浮かべるが、どちらも男性の割に繊細でナイーブな演奏をしていた。それに比べると、このNATHALIEはむしろ男性的だ。(「女は強し」 なんていう気はさらさらないですが・・・)グイグイ前に突き進むドライヴ感があって気持ちよくスイングしている。一方で、女性的な細やかな叙情性も見られる。加えて、なかなかの美人である。

@"CANZONCINA" イタリアの巨匠、ENRICO PIERANUNZI(JAZZ批評 324.& 487.)にインスパイアーされた曲だという。美しくて躍動するワルツ。
A"JAZZ AT THE OLIMPICS" 
凝ったテーマだけどジャズ・フィーリングに溢れるいいテーマだ。アドリブではベースが4ビートを刻みピアノが絡む。続いて、ドラムスが絡むという具合。
B"LES 3 PETITS SINGES" 
このタイトルはフランス語で「3匹の子ザル」のことで「見ざる言わざる聞かざる」を指している。太いベースの定型パターンで始まる。音の空間を上手く利用した演奏で、なかなかグルーヴィだ。
C"MOON'S MOOD" 
明るい「月」だ。
D"LA SAISON DES PLEURS" 
美しいバラード。良い曲だなあ。女性ならではのきめの細やかさを感じる。
E"CABECEO" 
タンゴのような色彩。
F"GOD IS IN THE HOUSE" 
AERTSのベース・ソロで始まる。このベーシスト、いかにもアコースティックなベース奏者だ。ビートが強くて音色もいいし、アルコもいける。フリーのインタープレイの後にアップテンポの4ビートでガシガシ突き進む。このドライヴ感がいいね。
G"APRES LA PLUIE" 
H"L'AUBE DE L'ESPERANCE" 
これもしっとりとしたバラード。ヨーロッパのピアニストは空間全部を音符で埋めたがるプレイヤーが多いが、このNATHALIEは上手に空間を使って適度な間があるのがいいね。地味だけど好感が持てる。
I"GARDEN PARTY TIME"
 3者のイキイキとしたプレイが聴ける。定型パターンのベースをバックにドラムスとピアノがソロを執る。

全10曲、すべてNATHALIEのオリジナル。色彩にも富んでいて聴く者を飽きさせないし、曲の一つ一つがいいね。こういう編成ならオリジナルだけでもいいかも。
演奏スタイルも大向こうを唸らせるというようなものではなくて、地味であるけど心に響くものを持っている。特に、音の空間を上手に使って間を持っているのがいいね。最近のピアニストって矢鱈と手数が多いプレイヤーが多い中で、ホッとする雰囲気を持っているということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2012.05.05)

試聴サイト : http://www.dewerf.be/dewerf.be/cd103.html



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