MICHEL BISCEGLIA
派手さはないがしっとりと心に染み入る演奏で・・・
"INNER YOU"
MICHEL BISCEGLIA(p), WERNER LAUSCHER(b), MARC LEHAN(ds)
2006年8月 & 2007年1月 スタジオ録音 (PROVA : PR 0701-CD1)

初めて聞くピアニストである。
一体、世界にはどれほどのジャズ・ピアニストがいるのだろうか?こうやって我々の耳に触れることの出来るピアニストというと何パーセントくらいだろう?
僕がこのHPで紹介してきたレビューは427。今までに紹介したピアニストの数を数えてみたら、188人だった。ピアノ・アルバムのレビューは約350枚(他の楽器が77枚程度)。これだけのピアニストを紹介してきても世の中には陽の目を見ないプレやーが五万といるのだろう。新登場でいきなり5つ星が採れるというのは実力もさながら運にも恵まれていると言えるのだろう。初見のピアニストでいきなり良いアルバムにぶつかると、これはハッピーな気分になれるものだ。

このMICHEL BISCEGLIAはイタリア系の血を引き1970年にベルギーで生まれたという。前掲のZSOLT KALTENECKERと同い年ということになる。恐らく、次の時代を担っていくプレイヤーになっていくのだろう。


@"SANDINO" 
CHARLIE HADENの書いた美しいバラード。甘さに流されず静かに躍動する様がいい。この演奏も素晴らしいがGONZALO RUBALCABAの"THE BLESSING"(JAZZ批評 99.)にある演奏も負けず劣らず素晴らしいので一聴を!二つの演奏ともピアノ・トリオとしての絶妙なバランスの上に立っている。
A"OUT TO SEA" 
これもいい曲だ。BISCEGLIAの歌心溢れるピアノと木の箱の共鳴があるLAUSCHERのベース、サクサクトしたLEHANのブラッシュ、最高の組み合わせで一体感と緊密感が溢れている。
B"LORENZ FACTOR" 
C"SOFTLY AS IN THE MORNING SUNRISE" 
高速4ビートを刻むお馴染みのスタンダード・ナンバー。後半部の8小節交換が面白い。切れのあるピアノが自由奔放に躍動する。この人もまた、ピアノを知り尽くした感のあるプレイヤーだ。
D"SIMON" 
この曲はRALPH TOWNERの曲らしい。しっとりとした静かな曲だ。時々、入るシンバルの音色に透明感があって良いね。

E"PAISELLU MIU" 
ラテン調でミディアム・スローのリリカルな曲だ。各楽器が持ち味のアコースティックな音色で交歓しあう様がいい。
F"WITH PURPOSE" 
若干、シンバリングが目障りである。
G"BLUES FOR ALICE" 
一転、C.PARKERの書いた陽気なブルース。ベースのウォーキング〜12小節交換を経てテーマに戻る。
H"SIDE SQUARE" 
スロー・バラードにおける重低音のベース・ワークが素晴らしい。この音!この音色!箱が鳴っているではないか!強靭な握力から弾き出される音色だ。重低音がグーンと伸びている。ウ〜ン、満足。絡みつくような切れのあるピアノの音色とブラッシュ・ワーク。これぞピアノ・トリオの真髄。
I"THE TRAVELLER" 
またまた雰囲気がガラッと変わって、カリプソ風。さわやかな青い海を思い起こさせる。

全10曲の中にはBISCEGLIAのオリジナルが4曲、競作が2曲含まれる。
Cのような聞き古されたスタンダードも高速4ビートで奇を衒わずに演奏している。ピアノの技量もサポート陣の技量も素晴らしく、何よりも3者のバランスがいい。派手さはないがしっとりと心に染み入る演奏で、 「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。 
調べてみると、このグループには2003年録音のアルバム("SECOND BREATH" JAZZ批評 432.)があるようで、機会があればこれも聴いてみたいと思った。

今までにピック・アップしたピアニスト以外にも無名のプレイヤーでありながらも素晴らしいプレイを残している人もいる。そこで次回から2回にわたって、ネットで紹介されている初見のピアニストを紹介したいと思う。   (2007.07.25)



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独断的JAZZ批評 428.