独断的JAZZ批評 752.

MARTIN BRUNNER
早く書き上げて次のアルバムに移りたいと思うは人情というものだが、ついつい筆が遅くなってしまうのだ
"STILL WARM TO TOUCH"
MARTIN BRUNNER(p), RASTISLAV UHRIK(b), TOMAS HOBZEK(ds)
2011年7月 スタジオ録音 (ARTA RECORDS : F10197)

MARTIN BRUNNERのアルバムは2009年に録音した"BEHIND THE CLOUDS"(JAZZ批評 572.)を紹介しているが、「まだまだ頭でっかちだ」とレビューしている。その時のメンバーは今回のアルバムで一新されている。
チェコスロバキア連邦共和国は1993年にチェコ共和国とスロバキア共和国に分離して現在に至る。首都はプラハだ。チェコのプレイヤーというとベースの大御所的存在のGEORGE MRAZやVIT SVEC(JAZZ批評 126. & 245.)、ピアニストではNAJ PONK(JAZZ批評 236.)の名が浮かぶ。いずれもヨーロッパ的なクラッシクの薫陶とアメリカ的なスイング感を身に着けたプレイヤーだ。
このアルバムもまた前回のアルバムと同様にすべての曲がBRUNNERの手によるものだ。何故にこれほどオリジナルに拘るのだろうか?

@"LET THE RABBIT TO TELL YOUR FORTUNE" テーマが実に凝っていて、とても口ずさめるものではない。
A"FLASH" 
これも似たような曲想のテーマで、クラシック的というか現代音楽的というか、幾何学模様というか・・・。もっとシンプルになるといいね。
B"IN THE COLOUR OF WINTER" 
またまた似たような曲想のテーマ。面白くも何ともない。
C"JOE, THE OLD BUDDY" 
D"CITY DANCE" 
ここまで全部同じ一つの曲だと思えば、腹も立たないか!
E"FLYING" 
F"ELGA MEETS OLGA" 
冗漫なベース・ソロが延々と続く。
G"COME TO LIGHT" 
H"WARM UP" 
I"THE HITCHHIKER"
 よくぞここまで似たような曲想の曲ばかりを揃えたものだ。もう、何をか言わんやだ。

日頃から「いいテーマに、いいアドリブあり」と思っている僕にはBRUNNERのオリジナルはどの曲も面白くない。己の作曲の才能に溺れているわけではないだろうけど、ここはスタンダード・ナンバーの一つや二つを入れてみることが必要だったのでは?演奏パターンが皆、似たパターンというのもいただけない。
例えば、同じ若手でもデンマークで活躍しているスウェーデン人のMAGNUS HJORTHのアルバム"OLD NEW BORROWED BLUE"(JAZZ批評 555.)なんかはオリジナル曲のレベルがとても高い。歌心に溢れていて、聴くものに感動を与えてくれるからね。そういう意味でも、BRUNNERももっとスタンダードを勉強して良い曲作りをしてほしいと思う。
実は、こういうアルバムが一番、レビュー泣かせ。決して下手なわけではない。でも、聴いていて感動しないし、ちっとも面白くない。聴かないことにはレビューを書けないということで、泣き泣き聴くことになる。早く書き上げて次のアルバムに移りたいと思うのは人情というものだが、ついつい筆が遅くなってしまうのだ。おまけにトータル70分にも及ぶ長尺ものだ。聴くのにも一苦労する。   (2012.04.26)

試聴サイト : http://www.youtube.com/watch?v=3TWDuQczCxU&feature=related



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