独断的JAZZ批評 751.

WALTER WOLFF
インタープレイを重視しているが、あくまでも内省的なのだ
"PRELUDE"
WALTER WOLFF(p), FRANCESCO ANGIULI(b), ANDREAS FRYLAND(ds)
2010年2月 スタジオ録音 (YOUR FAVOURITE JAZZ : YFJCD 019)

WALTER WOLFFは初めて聴く。今年の初めに松山のジャズ友が勧めてくれたアルバムだ。最近、いい輸入盤にありつけないなあと思っていたところ、ジャズ友からのメールを思い出した。早速、amazonを確認してみたら「在庫有り」だった。注文した翌日には届いてしまうという有難さ!
このWALTER WOLFFは1981年のフィンランドの生まれというから未だ31歳という若さだ。2003年にはオランダに渡り、JURAJ STANIKに手ほどきを受けたという。JURAJ STANIKといえばブルース・フィーリングたっぷりのアルバム"SHAKEN NOT STIRRED"(JAZZ批評 170.)がご機嫌なアルバムだった。これは楽しみだ。

@"A NIGHT TO FORGET" 静謐な空気の中、ピアノが美しい音色を響かせるイントロ。そこへベースとドラムスが加わってイン・テンポに。甘すぎず辛過ぎず、丁度良い塩梅だ。
A"LUNA DI MEZZOGIORNO" 
北欧の澄んだ空気を連想させる哀愁と美しさを湛えた佳曲。まるで白夜に映える月のよう。テーマに続くANGIULIの太くてふくよかなベース・ワークがいいね。何回も繰り返し聴きたくなる。ANDREA BENEVETANOの"TRINACRIA"(JAZZ批評 168.)の中にある"ANIRAM"を思い起こした。
B"WAIT A MINUTE" 
3人によるインプロビゼーション。
C"CASUS BELLI" 
インタープレイが徐々に熱を帯びてきて、そして、引いていく。
D"PRELUDE" 
フリー・テンポのインプロでなんとなく終わってしまう。連続して次のトラックに入るが、Eのための前奏曲という感じもしないでもない。
E"COUNTDOWN" 
3人によるインタープレイからアップ・テンポのビートを刻みだす。煌びやかピアノと重厚なベースの妙。ドラムスのFRYLANDはサポートに徹していて際立つことはしないが、堅実なシンバリングが効果的だ。
F"ACOMETANO" 
ベースのソロで始まる。ビートも強いし、太くていい音色だ。これぞアコースティック・ベースの真骨頂。このグループはインタープレイ的な即興演奏を得意としている。
G"WALT'S WALTZ" 
美しいWOLFFのオリジナル。
H"NEUROTIC SUNDAY" 
変拍子。(テーマは5拍子かな?)
I"LAMNA OSS EJ"
 最後を締める美しいバラード。ピアノ・ソロ。

アルバム全体の印象としては内省的で、いかにも、北欧のジャズという印象が強い。演奏も3者のインタープレイを重視している。インタープレイといっても丁々発止の熱気あふれるプレイが聴けるわけではない。あくまでも内省的なのだ。
このアルバムの中ではAがお勧めで、テーマも美しく白夜に映える月を連想させる。
アルバムの途中、中弛みする。1〜2曲アップ・テンポの熱気溢れる演奏が含まれていれば良かった。   (2012.04.20)

試聴サイト : http://wolff-angiuli-fryland.bandcamp.com/album/prelude




.