TONY FOSTER
いわゆる、正攻法なジャズである
まあ、王道といってもいいかもしれない
"IN BETWEEN MOODS"
TONY FOSTER(p), RUSSELL BOTTEN(b), JOE POOLE(ds)
2009年リリース スタジオ録音 (TFM001)


カナダのバンクーバーで活躍するトリオだという。カナダというとジャズのイメージがあまり膨らまない。かつて、BRUNO HUBERTというピアニストのアルバム、"GET OUT OF TOWN"(JAZZ批評 226.)を紹介しているが、「下手」と書いているのでこれは対象外。あとは、カナダ在住の日系ピアニスト、SHARON MINEMOTOの"YOU CAN SEE THE OCEAN FROM HERE"(JAZZ批評 539.)くらいしか思い浮かばないが、これはなかなか良いアルバムだった。やはり日系のピアニストということで日本の匂いがした。コード進行を大切にしたハートフルな演奏が印象に残っている。
このTONY FOSTERは今年35歳になるという。スタイルとしては伝統に根ざしたオーソドックスな演奏だ。まあ、王道を行くと言ってもいいかもしれない。TONY FOSTERのオリジナルが
BCDFの4曲、残る5曲がジャズマン・オリジナルとなっている。

@"TAKE THE 'A' TRAIN" 
この曲の演奏では、最近気になった演奏が二つある。一つがSTEVE KOVENの"RESURGENCE"(JAZZ批評 561.)の中にあるアタック感満載のゴリゴリの演奏。もう一つが5月下旬にあった御茶ノ水「ナル」におけるMAGNUS HJORTH TRIOのライヴ。こいつは過去最高のライヴ演奏だった。そういう演奏が未だに耳の中に残っているものだから、どうしても辛口になってしまう。アレンジに工夫を凝らしているが、いかんせん、演奏が軽い。とはいっても、ジャズの王道を行く演奏だとは思う。何の衒いもなく普通にスイングしている。これはこれで良しという人も多いだろう。
A"CAKEWALK" 
この演奏には我がスタイルを貫いた小気味よさがある。気持ちよくスイングしていてこれは丸。
B"COLORS OF SIENA" 若いのに丸く治まっている。棘もないかわりに毒もない。
C"MR. J" 
D"HOW I MISS THE RAIN" 
E"JAMAL" 
この曲はイタリア人ピアニストのDADO MORONI(JAZZ批評 546.)が書いている。タイトルからしてAMAD JAMALに捧げた曲だろう。明るくてカラッとしたスイング感が満喫できる。
F"IN BETWEEN MOODS" ドラムスのPOOLEは律儀な感じのするドラミングをしているが、ちょっと優等生過ぎる。もう少し灰汁が出てくると面白いと思う。
G"SOMEONE TO WATCH OVER ME / YOU'VE CHANGED" 
メドレーのこの2曲は過去に素晴らしい演奏を紹介している。"SOMEONE TO WATCH OVER ME"はBRAD MEHLDAU "SOLO PIANO LIVE IN TOKYO"(JAZZ批評 219.)で、"YOU'VE CHANGED"はKEITH JARRETTの"THE OUT-OF-TOWNERS"(JAZZ批評 217.)だ。いずれも心に沁みる名演中の名演と呼ばれるものだから比較するのはちと辛い。尤も、比べる対象が間違っていると言えば、そうかもしれない。
H"SERIOUS GREASE"
 スローなブルースだが、グルーヴィに乗っている。ちょっとOSCAR PETERSON的ではあるが。

いわゆる、正攻法なジャズである。まあ、王道といってもいいかもしれない。その分、非個性的と言えるかも。先にも書いたが、棘もない変わりに毒もない。当たらず触らずだ。ただ、この手の演奏は世の中に五万とあるのでその中で生き残っていくにはもう一つこのグループならではの個性が必要だろう。もう少し威勢が良くて個性の強いドラムスに替えてみるのも手かもしれない。   (2009.08.12)

試聴サイト : http://www.tonyfostermusic.com/music.html



独断的JAZZ批評 574.