STEVE KOVEN
"TAKE THE “A” TRAIN"は強烈で、この1曲だけのために買ったとしても損したという感じにはならなかった
"RESURGENCE"
STEVE KOVEN(p), ROB CLUTTON(b), ANTHONY MICHELLI(ds)
2006年5月 スタジオ録音 (BUNGALOW RECORDS: SK 003 2)

前掲のレビューに続きSTEVE KOVENの登場である。前掲のアルバムではオール・ラウンド・プレイヤーという印象であっても、「広く浅く」という感じはしなかった。サポート陣に恵まれてトリオとしてのアンサンブルが特に見事だった。
それから4年が経った2006年の録音である。メンバーも同じ。今回はスタンダートと呼べる曲はD. ELLINGTONのEだけで、残りの9曲はKOVENが7曲、CLUTTONが1曲、MICHELLIが1曲という配分でオリジナルを提供している。僕はこのCDをHMVの試聴コーナーで聴いて、即、購入した。その動機付けになったのがEの"TAKE THE “A”TRAIN"だった。試聴する際には自分の知っているスタンダードを先ず最初に試聴することにしているが、こいつには唸った。
ネットの輸入ジャズ・ショップで買えば1300円くらいで出回っていたのだが、HMVの店頭で衝動買いしたら1600円強の値段だった。なにも慌てることはなかったのだが・・・。

@"023" 
この曲だけ電気ピアノを使用している。何故、この曲だけなのか良く分からないが・・・。願わくば、全てをアコースティックなピアノで通して欲しかった。
A"BOGOTA INTRO" 
美しいイントロの1分と40秒。一瞬、BRAD MEHLDAUの"ELEGIAC CYCLE"(JAZZ批評 278.)の中にある"GOODBYE STORYTELLER"を思い起こさせた。そう言えば、花一輪添えてあるジャケット・デザインが共通している。
B"BOGOTA" 
イントロから切れ目なしにテーマに入る。このKOVENはメロディ・メーカーでもある。哀愁をこめたテーマが日本人好みかもしれない。
C"NO BLUES" 
ブルースといえば12小節と相場は決まっているが、タイトル通りで「ブルースにあらず」 1コーラス16小節で繰り返される。
D"LILY" 
これもタイトル通りの可憐な曲。
E"TAKE THE “A” TRAIN" 
アタック感溢れる左手の定型パターンに先ず釘付けになった。その後に続く快い4ビートを聴いて、「これは即、買いだ!」と思った。ご機嫌な1曲。まあ、この1曲だけのために買っても損はないなあと思った次第だ。
F"SIMPLY SLEEPY" 
G"RESURGENCE" 
「さくらの舞」を連想させるような日本的情緒の曲。
H"FITZROY" 
今度はカリプソ風。
I"MOODY ON GARNET" 
ベースのCLUTTONが書いた美しい曲。癒される。

僕にとっては、STEVE KOVENの2枚目にあたるこのアルバムは最初ほどのインパクトはない。1枚目の"LIFETIME"(JAZZ批評 560.)には強烈な印象とともに何回も聴いてみたいと思わせる曲が3曲は入っていたが、このアルバムではEのみだ。全体にやんわりと当たり障りのない編成になっている。
尤も、Eの"TAKE THE “A” TRAIN"は強烈で、この1曲だけのために買ったとしても損したという感じにはならなかった。
余談だが、僕はこのジャケット・デザインがすこぶる気に入っている。   (2009.06.05)

試聴サイト : http://www.myspace.com/stevekoventrio




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独断的JAZZ批評 561.