SEBASTIAN GAHLER
やはり、3人の力量が拮抗しているとアンサンブルが当然のように素晴らしくなる
"MEDITATION"
SEBASTIAN GAHLER(p), NICO BRANDENBERG(b), RENE MARX(ds)
2006年11月 スタジオ録音 (DOUBLE MOON : DMCHR71075)

最近、目の離せないグループにドイツのトリオがある。MARTIN TINGVALL(JAZZ批評 473.)やSEBASTIAN STEFFAN(JAZZ批評 485.)、そして、OLIVIA TRUMMER(JAZZ批評 
498. & 517.)がそれだ。いずれも新しさの中に躍動感とドライヴ感を秘めている。このアルバムを聴いて、またまた活きのいい若手のグループがドイツに出てきたなあという印象を持った。
今紹介した3つのグループと比べるとちょっと異質で、メロディアスであるが決して甘さだけではない。ドイツらしい質実剛健さと硬派ともいえる躍動感を秘めているので、これは買いでしょう。

@"MEDITATION" 
牧歌的な匂いさえする佳曲。先ず曲がよくて、更に、アンサンブルが良いとなればこれは最高!メロディアスでありながら徐々に昂揚感を増していくその様がいい。
A"BOUND" 
Gを除く全ての曲がピアニストGAHLERの曲だ。この曲なんかも一瞬、LARS JANSSON(JAZZ批評 568.)の曲ではないかと見紛うほど美しく、流麗であるが、アドリブでのアンサンブルとクライマックスに向かう昂揚感が良い。ベースのBRANDENBERGも太く締まった音色でよく歌っているし、スイング感満載のMARXのスティック & ブラッシュ・ワークもいいね。
B"LOST" 
定型のパターンが繰り返されるグルーヴィな演奏。こういう演奏が挟まっているから他の曲が余計に生きて来る。3者の繰り出すインタープレイも面白い。
C"DELUSION" 

D"IN THE MORNING" 
ピアノのアルペジオ奏法にのってベースがアルコで応える。確かに、爽やかな朝の雰囲気だ。日が昇り始め、空気がどんどん柔らかくなっていくと同時に生気を帯びて来る。気体の分子が活動し、飛び跳ね衝突を繰り返しどんどん活性化されていく・・・そういう感じだ。
E"JAWBREAKER" 
この1曲が入っているお陰でアルバム全体がきりりと締まった。甘さを排して、ピアノもベースも4ビートで躍動する。途中で、テンポ・ダウンする展開もグッドだ。MARXの小気味の良いドラミングにも耳を傾けたい。
F"CONTEMPLATION" 
最後は同じリフを繰り返して終わる。ここはドラムスのために用意されたリフといって良いだろう。
G"PLASTIC BAG THEME"
 静寂にこだまするピアノ。空の模様が移ろいで行くように静から動へとゆっくりとした昂揚感が広がりを見せる。この曲もこのグループのもうひとつの一面を見せ付けている。

ドイツのピアノ・トリオに共通しているクリアなタッチとグルーヴ感。そして、躍動感。甘いだけではない質実剛健の気風がいいね。このグループは今までのドイツのトリオに比べるとよりメロディアスで聴き易いが、締めるところはガッツたっぷりに締めている。実にリリカルな味付けとグルーヴ感の塩梅がよろしい。
アルバム全体の構成も良くて、リリカル演奏からハード・ドライヴまで塩梅良く配置されていて聴くものを飽きさせない。ドイツには将来性豊かな若手が集まった。これからが更に楽しみで目が離せない。
このグループ、ピアノのGAHLERをはじめ才能豊かな3人が集まった。やはり、3人の力量が拮抗しているとアンサンブルが当然のように素晴らしくなる。こういうアルバムをなるべく多くの人に聴いてほしいと思いつつ、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2009.07.31)

試聴サイト : http://www.myspace.com/sebastiangahlertrio




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独断的JAZZ批評 571.