MISHA PIATIGORSKY
硬軟取り揃えている感じだが、あえて言うと、スタイルとしてはリリカル・タイプだと思う
"17 ROOMS"
MISHA PIATIGORSKY(p), BORIS KOZLOV(b), ARI HOENIG(ds)
2009年1月 スタジオ録音 (MISHAMUSIC 2009)


MISHA PIATIGORSKYのピアノは初めて聴く。モスクワの出身で、現在はニューヨークに活動の拠点を置いているらしい。2004年の"THELONIOUS MONK CONPOSERS COMPETITION"に優勝した実績があるそうだが、ジャズの世界ではそういう受賞実績はあまり関係がないのではないだろうか。過去の実績よりも今日の実力が、ジャズの世界だろう。
自身のHPによれば、既にかなりの枚数のアルバムをリリースしている。ALI HOENIGが参加しているのが興味深い。

@"OPEN WINDOW" マイナー調のピアノ・ソロで始まり、いかにもヨーロッパ調の展開と思わせる。
A"17 ROOMS" 
この曲も同様の展開。甘く美しいワルツのテーマで始まる。高音部を多用したリリカル・プレイだ。
B"BLACKFIRE" 
一転して、PHRONESIS(JAZZ批評 541. & 567.)のプレイを彷彿とさせるかのようなテーマ。ハード & モーダルな演奏となる。ここではハードに叩きまくるHOENIGのプレイが素晴らしい。
C"BALLADE OF EDWARD VS. EDWARD OPUS 23" 
リリカルでクラシカルなピアノ・プレイにアタック感の鋭いフレーズを時に散りばめた演奏。比較的饒舌で高音部を多用するあたり、このピアニストの特徴が出ているとは思うが、何かもうひとつ強烈な印象を残すものが足りない。
D"WALTZ FOR AYELET" 
ワルツを刻むHOENIGのブラッシュ & スティック・ワークが印象的。

E"UNITED" 
F"KINDRED SPIRIT" リリカルなテーマ。テーマに続いてモゴモゴとしたベース・ソロがフィーチャーされる。このベーシストもモスクワ出身でニューヨークのジャズ・シーンでは欠かせない存在だそうだ。MINGUS BIG BANDに在籍し、CHARLIE MINGUSが愛用したベースを借り受けて使用しているらしい。
G"BLUES FOR FOOLS" 
HOENIGのドラム・ソロで始まる。僕はこのチューンが一番好きだ。テーマの後にベース・ソロが入り、ピアノがグルーヴィに歌っている。HOENIGのプレイも冴え渡っているし、ここでの4ビートは躍動している。
H"TURKISH FOLK SONG" 
TURKISHとあるように、いかにも中東的色彩を感じさせるプレイだが、なんとなく終わってしまう。
I"IMAGINE" 
こういうリリカル・プレイがこのピアニストの真価かもしれない。ごく普通に"IMAGINE"を弾いているけど、そのごく普通の中にこのプレイヤーの真価が見えるような気がする。

何ていうのかなあ。どの演奏もそこそこで悪くはないのだけど、また聴いてみたいと思わせるインパクトに欠ける。レビュー泣かせのアルバムではある。また、どの曲も演奏時間が短めだ。
このピアニストの真価をどこに求めていいのかよく分からない。硬軟取り揃えている感じだが、あえて言うと、スタイルとしてはリリカル・タイプだと思うし、Iの"IMAGINE"あたりに真価が見えるように思う。   (2009.07.26)

参考サイト : http://www.mishamusic.com/




独断的JAZZ批評 570.