独断的JAZZ批評 532.

KEITH JARRETT
このトリオの先に待ち構えているのは、KEITH JARRETT、その人の孤高の世界だけという気がしてならない
"YESTERDAYS"
KEITH JARRETT(p), GARY PEACOCK(b), JACK DEJOHNETTE(ds)
2001年4月 スタジオ録音 (ECM RECORDS : UCCE-1112)

このアルバムは2001年に録音されたJARRETTのアルバムの中で、僕にとっては4枚目にあたる。毎年、1作程度しか発表しないJARRETTとしては珍しいほどの枚数だ。しかも、このアルバムと"ALWAYS LET ME GO"(JAZZ批評 105.)は4月の日本ツアー時に録音されたものだ。
一方、"MY FOOLISH HEART"(JAZZ批評 441.)は7月22日、そして、その6日後の7月28日に"THE OUT-OF-TOWNERS"(JAZZ批評 217.)を吹き込んでいる。
このアルバムのライナー・ノーツを書いている杉田宏樹氏によれば、4月録音の"ALWAYS LET ME GO"は4月23、24の渋谷オーチャッドホールと30日の東京文化会館のライヴで即興演奏が主体の演奏となっている。このアルバム"YESTERDAYS"は4月30日の東京文化会館から8曲、残る1曲が24日のオーチャッドホールでのサウンド・チェック時の録音だという。
注目すべきは、4月の日本ツアーの5回のコンサートにフリー・インプロヴィゼーションの日とスタンダードの日を織り交ぜていることだ。このアルバムは、謂わば、「スタンダードの日」に当たる。

@"STROLLIN'" 流れ出てくる音楽はいつもながらに磐石で揺るぎがない。DEJOHNETTEの軽妙なシンバリングとPEACOCKの図太いウォーキングが聴ければ、もう、トリオとしては文句のつけようがないというものだ。でも、これくらいの演奏はこのトリオとしては当然至極のこととして捉えてしまう。
A"YOU TOOK ADVANTAGE OF ME" リズミックなKEITHのイントロから一斉にテーマに雪崩れ込む。ここでもチンチカチンチカとシンバルを刻むスティックの音色が快い。ドラムスとの8小節交換を挟んでテーマに戻る。
B"YESTERDAYS" しっとり系のバラード演奏。PEACOCKのベース・ソロはいくつ歳をとっても強靭だ。
C"SHAW'NUFF" 磐石なリズム陣のサポートに乗って、ピアノが楽しそうに歌う。

D"YOU'VE CHANGED" 
E"SCRAPPLE FROM THE APPLE" CHARLIE PARKERの書いた曲。若干、中だるみ。
F"A SLEEPIN' BEE" 心地よいミディアム・テンポ。
G"SMOKE GETS IN YOUR EYES" イントロからテーマへ。KEITHのピアノはあくまでも美しい。
H"STELLA BY STARLIGHT" この1曲だけは24日のコンサート前のサウンド・チェック時の録音だという。演奏の終わりに3人の会話が収録されている。

スタンダード・ナンバーの中にHORACE SILVERの
@やCHARLIE PARKERのCEなどが挿入されている。どんな曲をやってもそれなりに自分たちのサウンドにしてしまうところが凄い。
謂わば、いつも聴き慣れたKEITHのサウンドなのだが、それでも聴き飽きさせないのは流石というほかない。もう、この辺まで来るとトリオとしてやるべきことは全てやり尽くしたという感じもしないでもない。これ以上のトリオの妙味というのは出難いのではないだろうか?
1983年録音のアルバム、"STANDARDS, VOL.1 & VOL.2"(JAZZ批評 321.)から結成30年を近々迎えようとしているこのトリオの先に待ち構えているのは、KEITH JARRETT、その人の孤高の世界だけという気がしてならない。   (2009.02.01)

試聴サイト : http://www.cduniverse.com/productinfo.asp?pid=7814202



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