CHUCK ISRAELS
何気なくてどこにでも転がっていそうだけど、聴き込むほどに味わい深くなるアルバム
"CONVERGENCE"
HOD O'BRIEN(p), STEVE BROWN(g), CHUCK ISRAELS(b),
2006年6月 スタジオ録音 (PHILOLOGY : W 370.2)

CHUCK ISRAELESとは何とも懐かしい名前のリーダー・アルバムが出てきたものだ。1936年生まれというから、今年72歳になる。1961年から1966年にかけてBILL EVANSのトリオで活躍したことが印象に残るプレイヤーでもある。
このアルバム、ISRAELSの演奏も楽しみだが、競演のHOD O'BRIENの演奏も楽しみのひとつ。O'BRAIENも1936年の生まれというからCHUCKとは同い年ということになる。もうひとり、ギターリストのSTEVE BROWNについて調べてみたが、良く分からない。どうも1942年生まれらしいのだが・・・。Chuck Israel's National Jazz Ensembleのメンバーだというからこの人で間違いないだろう。とすれば、今年66歳ということになるので、皆、似たり寄ったりだ。
66歳と72歳の演奏するトリオであるから、ある程度想像がつく。実際、想像通りにオーソドックスで慎み深い演奏ではある。

@"THE MAN I LOVE" G. GERSHWINの書いた曲だが、最近、この曲をよく耳にする。JAZZ批評 482.のJOOP VAN DEUREN TRIOとJAZZ批評 489.のENRICO PIERANUNZI TRIOがその2枚。一方、このアルバムのトリオはドラムレス・トリオで趣を少し異にする。テーマはベースが執り、サビは4ビートを刻む。アドリブではベースが4ビートを刻みギターがバッキング、その合間をO'BRIENのピアノが楽しそうに歌っている。古いスタイルだが耳に心地よい。
A"SLOW FREIGHT" この曲の出だしを聴くと「パブロフの犬」のごとく条件反射でRAY BRYANTの"ALONE AT MONTREUX"(JAZZ批評 173.)を思い浮かべてしまう。勿論、R. BRYANTのオリジナル・ブルース。一方、このアルバムでは安定した太いアコースティックなベース・ラインに乗ってピアノのO'BRIENが気持ちよさそう。何年、何十年経とうがベースの本分はこういうプレイにあるんじゃない?いつからかベースはギターのように弾くべきと勘違いしたベース・プレイヤーが多くなったが、原点を忘れないで欲しいと思うのは僕だけではあるまい。
B"TRACE ELEMENTS" どこかで聴いたことのある曲だなあともっていたら、案の定、"SATIN DOLL"と同じコード進行らしい。なるほどね!まるで"SATIN DOLL"だもの。
C"LITTLE GIRL BLUE" R. RODGERSの曲。ギターのBROWNが切なく泣かせてくれるし、ISRAELSのベースがとてもいい音出している。化粧をしていない「すっぴんの美しさ」とでも言おうか。

D"TOO MARVELOUS FOR WORDS" ミディアム・テンポの4ビート。実に心地よい。こういうの聴いているとついつい酒が呑みたくなる。一口飲めば、指のひとつも鳴らしたくなるものだ。ISRAELSのベース・ソロも木の香りのするアコースティックないい音色で歌っている。ウーン、もう一杯、おかわり!
E"MINOR TRIBUTARY" 
F"IRV'S AT MIDNIGHT" いいテーマだ。いかにもジャズらしい!まあまあ、じっくりと3人のプレイに耳を傾けていただきたい。すっぴん美人というのは眺め尽くしても飽きないのと一緒だ。太くて包容力のあるISRAELSのベースはこれぞ「ベースの原点」と言いたくなる。
G"DAMERON'S GHOST" まるでWYNTON KELLY(JAZZ批評 11.)のように明るく軽快に弾むO'BRIENのピアノがいいねえ。そうそう、右手一本でこんなに楽しませてくれるのだもの。

タイトルの"CONVERGENCE"には「集中」とか「集合点」という意味があるらしい。まさに、このアルバムは3人が心をひとつにして作り上げた作品と言えるだろう。何気なくてどこにでも転がっていそうだけど、聴き込むほどに味わい深くなるアルバム。こういうのを世の人は「燻し銀」と言うのだろう。
是非、ジャズ初心者にも聴いて欲しいアルバムで、ジャズの楽しさを心行くまで味わって欲しいと思うのだ。そう願いながら、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。
このアルバムと軌を同じくしてもう1枚、ISRAELSのアルバムをゲットしたので、それは次回に。   (2008.07.15)



独断的JAZZ批評 491.