独断的JAZZ批評 492.

DON FRIEDMAN
旧交を温めただけに終わらなかっただろうか?
"STRAIGHT AHEAD"
DON FRIEDMAN(p), CHUCK ISRAELS(b), JOE HUNT(ds)
2007年7月 スタジオ録音 (NO COAST JAZZ RECORDS : NCJR01)

今回のDON FRIEDMANの新譜は2007年7月録音で、1961年にリリースされた"A DAY IN THE CITY"のメンバーで復活を果たしたものだ。FRIEDMANは1935年生まれというから今年73歳。前掲のレビューで書いたとおり、CHUCK ISRAELSは1936年生まれの72歳だし、同世代のメンバーが47年ぶりに旧交を暖めたというべきセッションだ。ということは、当時、彼らは26歳と25歳だった!
FRIEDMANは「老いてますます盛ん!」というほどに精力的な活動をしている。2002年録音の"WALTZ FOR DEBBY"(JAZZ批評 119.)や翌2003年録音の"TIMELESS"(JAZZ批評 198.)はその証左であろう。
このピアニストはベースのGEORGE MRAZとの出会いから一皮も二皮も剥けた感じがする。その象徴的なアルバムが1978年録音の"LATER CIRCLE"(JAZZ批評 85.)であると僕は思っている。が、このアルバムがなかなか再発されない。CDでの再発はいつになるのだろう?それともかなわぬ夢なのだろうか?これこそ、FRIEDMANの最高傑作として僕は疑わないのであるが・・・。
ということで、このアルバムのレビューの合間に"LATER CIRCLE"を聴き直してみたが、やはり、良いものは良い!これぞ、FRIEDMANのベスト・アルバムでしょう。

では、本題のこのアルバムに移ろう。

@"STRAIGHT AHEAD" 
テーマの後のアドリブから4ビートを刻みドライブ感を増してくる。73歳になったとはいえ、FRIEDMANの指運びは滑らかで軽やかだ。終盤にはHUNTの健在振りをアピールする元気なドラミングが披露される。
A"CIRCLE WALTZ" 
世間ではFRIEDMANの代表作として認知されている同名タイトルのアルバムを飾る1曲。と同時にFRIEDMANのコンポーザーとしての能力の高さを世に知らしめた1曲。哀愁を帯びながらもベースとのインタープレイが重視されているワルツ。
B"FLAMANDS"
 FRIEDMANのオリジナルで先に紹介した"WALTZ FOR DEBBY"の中でも演奏されている。
C
"SKIPPING TUNE" ISRAELSのオリジナル。ここでもISRAELSの太くて暖かみのあるベース・ソロがフィーチャーされている。
D"MINOR BALLADE" 
タイトル通りのマイナー調のスロー・バラード。テーマの後に軽やかに跳ねるピアノ・タッチが陰気くさくなくて良い。マイナー調であってもベターっと暗くならないのがこのピアニストの持ち味ともいえる。
E"STRAIGHT STREET" J. COLTRANEのオリジナル。一体感がもうひとつかなあ。
F"WHEN IT'S TIME" ATTILA ZOLLERのオリジナル。ドラマチックなイントロからテーマへと繋がっていく。アドリブからはFRIEDMANらしいカラッとした軽やかな演奏に変わる。ISRAELSのベース・ソロも悪くはないと思うのだが、どうも興が乗っていないなあと思ってしまうのだ・・・。
G"PIVOTING MODES" 
H"A DAY IN THE CITY REVISITED"
 "A DAY IN THE CITY"の再演版。

CEFを除く全ての曲がFRIEDMANのオリジナル。
彼らにとって、46年ぶりのレコーディングは旧交を温めたことになったのだろうか?そして、アルバムの完成度という点でも満足のいくものだったのだろうか?逆に言えば、旧交を温めただけに終わらなかっただろうか?
僕の印象としてはグループとしての一体感とか緊密感で若干の不満足感を覚える。もっと刺激的で丁々発止のインタープレイがあればよかった。先に、ベスト・アルバム"LATER CIRCLE"を聴いてしまったことによる影響も多少はあったかもしれないが。   (2008.07.20)