ENRICO PIERANUNZI
このアルバムは間違いなくENRICO PIERANUNZIの傑作の1枚として語り繋がれるアルバムであろう
"NO MAN'S LAND"
ENRICO PIERANUNZI(p), MARC JOHNSON(b), STEVE HOUGHTON(ds)
1989年5月 スタジオ録音 (SOUL NOTE : 121221-2)

ENRICO PIERANUNZIのアルバム、連続掲載3枚目になった。当初は1990年録音のデュオとソロで終わる予定だったが、同じ年代のピアノ・トリオ盤が入手可能だったのでゲットしてみた。
僕がENRICOを聴き出したのが5年前の2003年頃だったので、1900年頃の演奏は今になって初めて聴くというわけ。だから、ENRICOが何故こうも騒がれるのかといつも疑問に思っていたモノだ。しかし、今、その解が解けた。こうして1900年頃のアルバムを聴いてみると、「これはさもありなん!」と思ったものだ。だって、この頃のENRICOは輝いているもの。ベースのMARCJOHNSONも然り。
ネットでも「ENRICOの最高傑作」と誉れも高いアルバムなのだが、やはり「いいものはいい!」

@"NO MAN'S LAND" 
ピアノの一音一音が躍動している。美しくも繊細な印象はあるが、同時に、力強さや切れの良さを感じる。
A"BORDER LINE" 
B"IF I SHOULD LOSE YOU" テーマ崩しのENRICOの本領発揮。でも基本的な部分はなぶっていないのでこの曲の本来の姿が予測できる範囲。全体に言えることだが、ドラムスのHOUGHTONの録音レベルが控えめすぎるのが残念。もう少し出るときはガツンと出てきて欲しかった。一方、しっかりしたビートで歌うJOHNSONのベース・ワークがいいね。エンディングも洒落ている。
C"BLUES IN C" 
「へえー!」と思わせるグルーヴ感満載のブルース。2コーラスのテーマの後、アドリブでいきなり唸りをあげるJOHNSONの4ビートがご機嫌だ。こいつぁ、いいね。

D"LAND BREEZE" 
コロコロ転がる右手に楔を打ち込む左手のバッキングに力強さがあっていいね。このピアニスト、甘いだけでないところがいい。僕がピアノ・トリオに要求する「美しさ、躍動感、緊密感」がきちんと網羅されている。
E
"THE MAN I LOVE" GEORGE. GERSHWINとIRA GERSHWIN(作詞)の競作になる名曲も味わいのあるテーマ崩しで攻めるところはENRICOならでは。
F
"MY FUNNY VALENTINE" RICHARD RODGERSの名曲もじらすようなイントロからテーマに入っていくが、アドリブではミディアム・ファーストでガッツ溢れる演奏にシフト。ENRICOの左手のバッキングは変化に富んでいて面白い。
G"CHIMERE" 


BE
Fが、いわば、聞き古されたスタンダード・ナンバーであるが、ENRICOのいつもながらのテーマ崩しは新鮮だ。一筋縄でいかないところが面白い。
今回、1989年から1990年にかけて録音されたENRICOの3アルバムを連続でレビューしてみたが、この時期のENRICOの充実度合いが良く分かる。何よりもピチピチとした魚のごとくいきが良くて、MARC JOHNSONとの緊密感も申し分ない。このアルバムに限って言えば、ドラムスの録音レベルがもう少し高ければ言うことなかった。
このアルバムは間違いなくENRICO PIERANUNZIの傑作の1枚として語り繋がれるアルバムであろう。同時期のデュオ・アルバム"YELLOW & BLUE SUITES"(JAZZ批評 487.)とともに推奨したいということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2008.07.01)



独断的JAZZ批評 489.