JOOP VAN DEUREN
ジャズ・ミュージシャンを目指す若いプレイヤーにはじっくりと聴き込んでもらって、教則本代わりに利用して欲しいと思うほどだ
"PRIVATE"
JOOP VAN DEUREN(p), ERIK ROBAARD(b), HANS BEUN(ds)
2006年11月 スタジオ録音 (FERDAR)

ゴールデン・ウィークを利用して8日間の旅行に出ていた。この間、ジャズとは全くの無縁。このHPを開設以来、1週間にわたってジャズを聴かなかったこともなかったことだ。久しぶりに聴くジャズは新鮮でもあった。
このJOOP VAN DEUREN TRIOはオランダのグループだという。そういえば、今回の旅行で訪れたキューケンホフ国立公園のチューリップのように鮮やかで爽やかだ。非常にオーソドックスで気負いのない演奏スタイルで、特に、ジャズ初心者の方には参考になることが多いだろう。ジャズのスタンダード・ナンバーがずらりと並んでいるので、教則本代わりになるかも知れない。

@"THE MAN I LOVE" 
G. GERSHWINの名曲スタンダード。軽快なメロディラインに乗ってベースもドラムスを気持ちよくスイング。
A"WALTZING MATILDA" 
この曲といえば、DON RANDI "WHERE DO WE GO FROM HERE ?"(JAZZ批評 155.)を思い浮かべる。心地よいスイング感が共通点だ。7曲目に"AUTUMN LEAVES"が入っているあたりは多分にRANDIのアルバムを意識しているのかもしれない。
B"BODY AND SOUL" 
しっとり系スロー・バラード。
C"ALONE TOGETHER" 
14小節+14小節+8小節+8小節の44小節の変形歌モノ。コード進行を忠実になぞっているので非常に分かり易い。あくまでもオーソドックスに4ビートを刻んでいく。そういう安心感がある。逆に言うとスリルとか緊迫感という点で物足りないと感じる人も多いだろう。
D"SUMMERTIME" 
これもGERSHWINの名曲。テーマではベースが定型パターンを弾き、アドリブではミディアム・テンポの4ビートを刻む。
E"INTHE WEE SMALL HOURS OF THE MORNING..." 
F"AUTUMN LEAVES" 
クラシカルなイントロで始まる32小節の歌モノの定番。A・A'・B・C形式でさびのBの8小節が特徴的な曲。この演奏もコード進行を忠実になぞっているので教則本としてコピーして練習するのもいいかもしれない。今までに多くのピアノ・トリオが演奏してきたスタンダード。耳にたこが出来るほど聴いても楽曲の素晴らしさとシンプル&ナチュラルな演奏に納得。
G"THE DAYS OF WINE AND ROSES" 
ボサノバ・タッチの軽快な「酒バラ」。タイトルのごとく、ついついワインの量が増えてしまうというものだ。飲兵衛には困った曲だ。ベース・ソロを挟んでテーマに戻る。
H"A CHILD IS BORN" 
これもしっとり系のバラード。
I"HOT NUTS" 
この曲と次の曲がピアニスト、DEURENの書いたオリジナル。ブルージーなテーマに乗って3者がスイング。決めもバッチリだ。
J"TANTE TRUUS CALYPSO" 
少しおちゃらけてみましたと・・・。

兎にも角にも、ズラリと沢山のスタンダード・ナンバーが並んだものだ。「売れ線狙いの企画モノ」と言いたくなるが、シンプルにナチュラルにやっている演奏スタイルには好感が持てる。目くじら立てて非難するほどのことでもない。このアルバムはそういうスタイルであって、このアルバムに緊迫感やスリルを求めるのは土台無理というものだ。
むしろ、ジャズ・ミュージシャンを目指す若いプレイヤーにはじっくりと聴き込んでもらって、教則本代わりに利用して欲しいと思うほどだ。こういう基本的なスタイルは誰かが引き継いでいかねばならないだろう。
長いことジャズを聴いてきた人の耳にも懐かしさと郷愁を誘うアルバムかも知れない。   (2008.05.20)



独断的JAZZ批評 482.