MICHEL BISCEGLIA
"THE NIGHT AND THE MUSIC"
MICHEL BISCEGLIA(p), WERNER LAUSCHER(b), LIEVEN VENKEN(ds),
ANGELO BISCEGLIA(g: I)
2002年3月 スタジオ録音 (PROVA : PR 0707-CD5)

MICHEL BISCEGLIAの最も初期のアルバムで2002年録音。2003年録音の"SECOND BREATH"(JAZZ批評 432.)から2007年の"INNER YOU"(JAZZ批評 428.)の間には大きな進歩が見られた。
このアルバムは初期のアルバムということで、スタンダード・ナンバー集となっている。このピアニストがスタンダードをどんな風に料理してくれるのか興味があった。1曲だけギターが参加しているが、苗字が同じなのでMICKEL BISCEGLIAの兄弟だろうか?
選曲ではGEORGE GERSHWINとIRA GERSHWINの競作が6曲(@ADFGI。残りがCOLE PORTERの曲で4曲となっている。

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"OUR LOVE IS HERE TO STAY" ごく普通の演奏なので、何かを期待していると裏切られた感じ。ちょっと単調で、右手の演奏が面白みに欠ける。強弱のメリハリ、右手の音域にもっと幅があると面白いと思うのだが・・・。
A"I LOVE YOU, PORGY" 切ないバラード。D
B"NIGHT AND DAY" 
マレットを使った陽気なドラミングで始まる。こういう曲でもBISCEGLIAのピアノは中音域がほとんどで起伏に乏しい。
C"WHAT IS THIS THING CALLED LOVE" 
2ビートで始まるアップ・テンポの演奏でピアノもコロコロと良く転がるがメリハリがない。
D"THEY CAN'T TAKE THAT AWAY FROM ME" 一転、ミディアム・テンポの陽気な演奏になってほっと落ち着く。これは楽しそうだ。
E"EASY TO LOVE" 
F"SOMEONE TO WATCH OVER ME" この曲の名演というとBRAD MEHLDAUの"SOLO PIANO LIVE IN TOKYO"(JAZZ批評 219.)とMARTIN WIND / BILL MAYSの"GONE WITH THE WIND"(JAZZ批評176.)を思い出す。何が違うのか比較してもらうのもいいかも。
G"NICE WORK IF YOU CAN GET IT" 
H"I LOVE YOU" 
I"SUMMERTIME" この曲のみにギターが入る。

MICHEL BISCEGLIAの初ピアノ・トリオ・アルバムだというので期待していたが、開けてみたら期待ほどではなかったというのが率直な感想。全体的な印象としても起伏に乏しくて単調な印象を免れない。入手困難盤の限定発売ということで雑誌にも「新定番」とか書かれているそうだけど、それほどのアルバムとは思えない。こういう「ニンジン」に飛びついてしまうのは悔しいけど、これは人間の性だよね。
このアルバムを買うなら、2006年録音の"INNER YOU"をお勧めしたい。4年の歳月を経て確実に上手くなっているし、表現力も数段進歩していると思う。この初期のアルバムの段階ではまだまだ「引き出し」が少ないなあと思ってしまう。
2003年の"SECOND BREATH"からベースがWERNER LAUSCHER、ドラムスがMARC LEHANに固定され現在に至っているが、グループとしての成熟度もこの段階ではまだまだ発展途上といったほうだ適切だろう。   (2007.12.14)



独断的JAZZ批評 452.