MICHEL BISCEGLIA
そして、そのことが2006年の"INNER YOU"に、進化の証として結実したのだろう
"SECOND BREATH"
MICHEL BISCEGLIA(p), WERNER LAUSCHER(b), MARC LEHAN(ds)
2003年6月 スタジオ録音 (PROVA RECORDS : CRD 2013-2)

MICHEL BISCEGLIAのアルバムはつい1ヶ月ほど前に2006年録音の"INNER YOU"(JAZZ批評 428.)を紹介したばかりだ。グループとしてのバランスの良さと十分な技量で5つ星を献上したのであるが、それと前後してこのアルバムが入手可能となり即ゲットした。このアルバムは先のアルバムに遡ること3年、2003年の録音と思われる。メンバーは先のアルバムと同様だ。

@"NEENA" いかにもこのグループらしいテーマに叙情性十分なアドリブ。変に甘すぎないリリシズムは心なしかさっぱりしている。
A"CYDONIA REGIONS(PROVA 9)" 
B"BLUE IN GREEN" ベースがシングルトーンの定型パターンをずーっと繰り返す。そうした中で、徐々にテンションが高まってくるのが分かる。こうした状態が延々と5分ほど続き、その定型パターンからベースが解き放たれると同時に、8ビートの激しい演奏へと変わっていく。いやあ、今までにこんなに激しい"BLUE IN GREEN"は聞いたことがない。このアルバムの一番の聴き所。
C"CASSO BLUES" 超高速の変形ブルース。良く動く指だ。
D"SECOND BREATH" この曲も@に共通した叙情的なテーマで始まるスロー・バラード。しかし、山場を迎えずに何となく終わってしまった感じ。
E"PORTS OF AMSTERDAM" 重苦しいテーマと終始インタープレイで通す演奏に多少辟易してくる。4分過ぎあたりからインテンポになってくるが・・・。9分を超える演奏は長いと感ずる。

F"FOOTPRINTS" WAYNE SHORTERの書いたお馴染みのチューン。今までにも多くのピアニストが名演を残している。ENRICO PIERANUNZI(JAZZ批評 324.352.)、 KASPER VILLAUME(JAZZ批評 373.)、 GEORGES ARVANITAS(JAZZ批評 10.)など。これらに引けをとらない演奏で実力の程が窺える。高速のベース・パターンで始まり、確かな指使いを見せるBISCEGLIAとLAUSCHER。ハードに叩きまくるLEHANのドラミングにも注目したい。
G"SEPTFOILE" BISECGLIAの書いたオリジナル・ブルース。アップ・テンポでスインギーに演奏するがもうひとつ高揚感が足りない。
H"IMAGE" ミディアム・テンポのしっとりとした曲想であるが、この演奏ももう一味足りない。
I"PEGASI(WARK SONG)" 観念的な匂いのするテーマで面白いとは言い難い。
J"N'n SIATA" 何ともすっきりしないまま終わった。

このグループの各人の力量は十分で、コミュニケーションもまずまずだと思う。2003年録音のこのアルバムは2006年のそれと比べると若干、観念的で無機質な印象が残る。端的に言って、ストレートな躍動感が足りない。特に自作曲においてそれが感じられる。そしてグループとしての成熟度も2006年に比べるともうひとつと言わざるを得ない。逆に言えば、この3年の間にグループの成熟度も大いに上がったと言えるだろう。そして、そのことが2006年の"INNER YOU"に、進化の証として結実したのだろう。ただ、このアルバムでもスタンダード・ナンバー、
BFにおける解釈と演奏には非凡なものを感じる。
つい最近の情報によれば、このグループの2002年のアルバム、"THE NIGHT AND THE MUSIC"(ただし、ドラムスはMARC LEHANでなくてLIEVEN VENKEN)が再発されるという。このアルバムは全てスタンダード・ナンバーで構成されているという。このグループがスタンダード・ナンバーをどういう風に料理したのか興味津々である。   (2007.08.19)



独断的JAZZ批評 432.