独断的JAZZ批評 394.

RICHARD WYANDS
"LAMENT"・・・指でも鳴らしながら日本酒の冷でもグビッと口にすれば、これは至福の10分間だ
"THEN, HERE AND NOW"
RICHARDS WYANDS(p), LISLE ATKINSON(b), DAVID LEE(ds)
1978年10月 スタジオ録音 (M & I : MYCJ - 30508)

"STORYVILLE"レーベル復刻・第1弾10タイトルの中からの2枚目。今回は1978年録音のRICHARD WYANDS、50歳の時の録音だ。なんと、これが2枚目のリーダーアルバムだというが、本当かしら?
RICHARD WYANDSのCDは僕にとって初めての購入だ。なんとなく今まで機会がなくて買いそびれてしまったピアニストだ。今回、"STORYVILLE"の復刻で購入してみたが、これは正解だった。
兎に角、「何となくいいのである!」 変に大上段に振りかぶったところもないし、かといって、力が抜けているという感じでもない。すごくナチュラルなのだ。最近はこういうアルバムが少なくなった。あえて言うと、TOMMY FLANAGAN的な心地よさに似ている。本当に何気ない1枚で、これは「買い!」である。

@"YES IT IS" 
WYANDSのオリジナル。最初から4ビートで快調に飛ばして気持ちのよい1曲。WYANDSのピアノは音色も生き生きとして爽快感たっぷり。わずかに蛙の声を潰したような唸り声が聞こえるがこれはベースのATKINSONのものらしい。発止とした躍動感と一体感が楽しめる。

A"LAMENT" 
J. J. JOHNSONの書いた美しい曲だ。今まで、すばらしいと思えるこの曲の演奏に出会ったことがなかったが、この演奏はいいね。これまでのピカイチ。因みに今まで紹介したアルバムの中には、HENRI TEXIER TRIO、ALAN BROADBENT TRIO、GREGOR MULLER TRIOなどがある。美しいテーマ演奏だけに終わらず、徐々にテンションが高揚していく様が良い。指でも鳴らしながら日本酒の冷でもグビッと口にすれば、これは至福の10分間だ。少し電気的増幅に頼ったATKINSONのベースだがよく歌っているし、WYANDSとの緊密感もいいので大目に見よう。躍動感のあるベース・ソロはなかなかいいね。ついでにうなり声も堪能頂きたい?!このアルバムの一押し、二押し。僕はほとんどこの曲ばかり聴いている。

B"AS LONG AS THERE'S MUSIC" 
J. STYNEの名曲で3/4のワルツ。ミディム・テンポの明るめの音色で一音一音を紡いでいく。この曲はCHRISTIAN JACOBのJ. STYNE作品集の"STYNE & MINE"(JAZZ批評 244.)でも良い演奏が聴くことができる。
C"LEONORA" 
WYANDSの曲でボサノバ調。
D"NEVER LET ME GO" 
ピアノ・ソロ。この曲もスタンダードと言っていいだろう。数多くのミュージシャンが採り上げている。BILL EVANS(JAZZ批評 298.)、KEITH JARRETTE(JAZZ批評 321.)などがその最右翼であろう。
E"YESTERDAYS" 
これもスタンダード中のスタンダード。名演を数え上げれば枚挙に暇がない。ここでは8ビートで演奏しているところが面白い。
F"BLUE ROSE" 
D. ELLINGTONの書いた曲。陽気で明るいタッチに乗って3者一丸となって進んでいく。
G"LEONORA (TAKE 2)" 
CD用の時間あわせ。録音日時が違うのだろう。録音レベルも少し違っている。
H"BLUE ROSE (TAKE 2)" 

このアルバムは大上段に振りかぶったところも、奇を衒ったようなところもない。じっくりと味わえる何気ない1枚。50歳にしてやっと2枚目のリーダーアルバムを出した遅咲きのWYANDSの歌心を堪能いただきたい。"LAMENT"の快演振りに敬意を表しながら、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2007.02.10)