独断的JAZZ批評 393.

CARSTEN DAHL
北欧の白人ピアニストが一生懸命、BUDの伝承をしようとしているところが味噌だ
"MESSAGE FROM BUD"
CARSTEN DAHL(p), LENNART GINMAN(b), FRANDS RIFBJERG(ds)
1998年12月 スタジオ録音 (CAPRI RECORDS : #74016-2)

"STORYVILLE"レーベルは1952年デンマークのコペンハーゲンにてEMIL KNUDSENによって創設されたという。ヨーロッパ・レーベルの名門と言うこともできるだろう。このレーベルのアルバムが第6弾までに32タイトルが順次発売になるという。このアルバムは2006年末に発売になった第1弾の中からのピックアップ。DAHLのファンとしては探しても見つからなかったアルバムのひとつである。こういう形で古き名盤がそこそこの価格で再発されるのは有難いことだ。

CARSTEN DAHLというピアニストは才能豊かなピアニストであることは間違いないと思うのだが、2面性を持っていて、どちらが本当のDAHLなのか分かり辛い。このアルバムや2004年の"BLUE TRAIN"(JAZZ批評 267.)はハード・バップに根ざしたものだが、その一方で、アバンギャルドすれすれでありながら際どく徳俵で残った"MOON WATER"(JAZZ批評 246.)のようなアルバムもある。
このアルバムは前述の"BLUE TRAIN"と同じメンバーだ。1998年録音のこのアルバムはDAHLの初期のアルバムと言えるだろう。
DAHLは1967年生まれというから、録音時31歳という若さだ。今年、丁度40歳を迎えることになる。ジャズの世界では脂ののり切った時期と言えるかもしれない。最初はドラマーのED THINGPENに師事したという。特異なリズム感覚はこの時に養ったのかもしれない。その後、ピアノへ転向したわけだ。
DAHLはこの"STORYVILLE"からデビューし、本アルバムが2作目に当たるという。しかも、このアルバムではアナログ機器で録音され、なおかつ、モノラル録音に拘ったという。相棒にはチョイ悪風の二人、LENNART GINMANとFRANDS RIFBJERGが付き合っている。

@"MESSAGE FROM BUD" 
あたかも、これはBUDではないか!
A
"OVER THE RAINBOW" こういうテーマの弾き方って好きだなあ!素っ裸なテーマ演奏なのだ。小難しいアレンジは一切ない。アドリブで違いを見せ付けるという算段なのだろう。これぞ、正解。このアルバムの中では一番印象に残る演奏だ。
B"BLUES FOR LENNIE AND FRANDS" 
タイトルから想像するに、二人のサイド・メンに捧げたブルースだろう。
C
"BUT NOT FOR ME" これも単純明快なシングル・トーンによるテーマ演奏。ベースとのコンビネーションがいいね。

D"I WANT TO BE HAPPY" 
1950年代のジャズを彷彿とさせる演奏だ。
E"BLUE IN BREEN" 
しっとり系のこの曲はちょっと場違いという気もしてくる。
F
"I LOVE YOU" シンプルな演奏だ。
G"BEAUTIFUL FRIENDSHIP" 
歯切れのよさが気持ちよい。
H
"LOVE FOR SALE" 聞き古されたこの曲が何故か新鮮に聴こえる。
I"KELLY'S BLUES" 
DAHLのオリジナル。想像するにWYNTON KELLYに捧げたブルースのようだ。

タイトル通りに、BUD POWELLとその影響を受けたピアニスト(例えば、WYNTON KELLY)に捧げたアルバムともいえるだろう。アメリカのジャズで、しかも、黒人のジャズでこういうハード・バップのピアノ・トリオ演奏が近年は少なくなった。北欧の白人ピアニストが一生懸命、BUDの伝承をしようとしているところが味噌だ。
特に聞き古されたスタンダード・ナンバーに味がある。そうなんだ!下手に細工する必要はないのだ。実力があれば、このアルバムのようにストレートな演奏がベスト。なまじ、実力がないからテーマに厭というほどアレンジを加えて自分の色を出そうとするんだよね。スタンダード・ナンバーの
ACFHあたりが面白いと思う。
この"STORYVILLE"レーベルの再発・第1弾にあたり、次回もその中からピック・アップした1枚をレビューしたいと思う。   (2007.02.07)