独断的JAZZ批評 353.




MIKE KOCOUR
アメリカのジャズの裾野の広さと底力を再認識させるアルバムでもある
"HIGH STANDARDS"
MICHAEL KOCOUR(p), KELLY SILL(b), JOEL SPENCER(ds)
2003年7月 スタジオ録音 (SOUNDHILL FSCD 2034)


先日購入した"PIECES OF STRING"(JAZZ批評 349.)と同時購入したアルバム
こちらは店頭で試聴してから買った無名ピアニストの自主制作盤
タイトル通りの"HIGH STANDARDS"か?
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@"BATTLE ROYAL" 
いきなり来たなあ!この曲を店頭で試聴した時には、これは「買いだ」と即座に思ったものだ。最初のワンコーラスをブラッシュとベースのウォーキングがアップテンポの4ビートを刻んでいく。そして切れ味の鋭いピアノがテーマをオクターブ奏法で奏でる。D. ELLINGTONの書いたA A' B A' 形式の32小節の歌モノ。8小節交換〜4小節交換〜2小節交換を経てテーマに戻る。良い演奏だ。ドライブ感と、快いスウィング感に溢れたガッツな演奏。このアルバムの極めつけ。
何故、このアルバムが自主制作盤なの?アメリカのレコード会社には目(耳)利きのプロデューサーはいないのか?!と思ってしまった。録音も良いし、先に紹介したJOHN FREMGEN "PIECES OF STRING"(JAZZ批評 349.)とあわせて、アメリカの底力を感じさせるアルバム。


A"THE VERY THOUGHT OF YOU" 
一転して、しっとり系バラード。なかなか歌心もあるねえ。
B"THE SHADOW OF YOUR SMILE" 
このアレンジがまた、面白い。バラードでもないし、ボサノバ調でもない。アドリブではビシビシとした4ビートを刻むところが面白い。指でも鳴らしながら楽しんで欲しい演奏だ。洒落っ気もあるしユーモアもある。ご機嫌な1曲。頭でっかちのピアニストにはこういう演奏は出来ないだろうな。
C"I'LL REMEMBER APRIL" 
これも有名なスタンダード。強烈なドライブ感でグイグイ押し捲る。けれんみのない演奏が気持ちよい。

D"LET'S FACE THE MUSIC AND DANCE" 
軽いボサノバ調。
E"STAR EYES" 
定型パターンで始まる賑やかな演奏だが、サビの部分では快い4ビートを刻む。アドリブでもベースとシンバリングが4ビートを刻んでいく。このグループの基本はいつも4ビート。
F"HELLO YOUNG LOVERS" 
G"BODY AND SOUL" 

無名のグループということらしいが、3人の実力のほどは確かで、長いこと演奏を共にしてきた仲らしい。数ヶ月前に初めてこのアルバムが入荷したときはあっという間に売り切れて話題になったアルバムらしい。確かに、これは売れるでしょう。演奏にけれんみがなくて良いと思う。特にドライブ感に溢れた@やユニークなアレンジのB、グイグイ・ドライブ感のC等は大いに楽しめる。後半の4曲に若干の物足りなさが残るが、総じて良いアルバムだ。
最近、矢鱈と多い全曲スタンダード尽くしの中でも、このアルバムはプレイヤーが自分たちの演りたい音楽を演りたいように演ったという満足感を共有することが出来る。同時に、理屈抜きにエンジョイできるアルバムであり、更には、アメリカのジャズの裾野の広さと底力を再認識させるアルバムでもある。   (2006.07.15)