独断的JAZZ批評 336.


JAN LUNDGREN
ジャズ本来の渋みや苦さがやんわりとオブラートに包まれた感じで刺激が足りない
"IN NEW YORK"
JAN LUNDGREN(p), PETER WASHINGTON(b), KENNY WASHINGTON(ds)
2005年5,6月 スタジオ録音 (MARSHMALLOW RECORDS MMEX-106)

ヨーロッパのバップ・ピアニストとアメリカン・リズム陣の融合か?
メンバーを見ただけで好奇心と期待感が沸々と湧いてくる
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スウェーデンのピアニスト、JAN LUNDGRENはノリの良い躍動感溢れる演奏で名盤も多い。特にデンマークの雄、JESPER LUNDGAARD(b)とALEX RIEL(ds)と組んだコンビはお奨めである。ちょっと古いが、1994年録音の"CONCLUSION"(JAZZ批評 185.)あたりは僕のお気に入りでもある。
今回、MARSHMALLOW RECORDSがアメリカのリズム陣とのセッションをCD化したというので早速、購入してみた。PETERとKENNY、両WASHINGTONとの共演である。両WASHINGTONの競演盤というとBILL CHARLAPの"WRITTEN IN THE STARS"(JAZZ批評 34.)などが思い起こされる。バビッシュな4ビート・ジャズにはうってつけのサイドメンという役割だろう。

@"NEGOTIATIONS" 
テーマの後、快い4ビートが刻まれていく。ベースの録音のセッティングが良くないのか、増幅が強いのか、モゴモゴ・ベースなのが残念。結構長めのベース・ソロが用意されているが、あまりスリリングではない。8バース〜4バースときてテーマに戻る。
A"EAST OF THE SUN" 
これも快い4ビートを刻んでいく。ここでも長めのベース・ソロ。モゴモゴだ!KENNYのドラミングは配慮が利いている。若干、利きすぎという面も否めない。アフタービートのハイハットが心地よい。
B"AUTUMN IN NEW YORK" 
先ず、曲がいいね。この曲がタイトル名になったNAJ PONK(JAZZ批評 236.)のアルバムも機会があったら聴いてみて欲しい。このサイドメンはあまり歌うほうではないから、こういうバラードは不向きかな。

C"STABLEMATES" 
BENNY GOLSONのグルーヴィな佳曲。こういう曲こそお手の物だ。
D"THE GYPSY" 
バラード・プレイ。
E"STRAIGHT STREET" 
F"M.Z." 
G"CHEROKEE" 
高速の4ビートでいきなり始まるが、これでベースに切れがあったら最高だ。
H"I CAN'T GET STARTED" 
この曲をMADS VINDING / CARSTEN DAHLの演奏(JAZZ批評 322.)と比べると緊密感、歌心で比較にならないね。どうもこのサイドメンは歌モノに弱いようだ。
I"THIS IS FOR ALBERT" 

僕の視点としては、前述の"CONCLUSION"におけるヨーロッパのリズム陣対アメリカのリズム陣という対比で述べてみたいと思う。
今回のアメリカリズム陣との演奏は、ひとつにはベースのモゴモゴ音の影響もあると思うが、ジャズ本来の渋みや苦さがやんわりとオブラートに包まれた感じで刺激が足りない。LUNDGRENのピアノにも切れがないんだなあ。PETERのベース・ワークはソロを執ると長広舌で面白くないし、KENNYのドラミングも少し遠慮が過ぎたか。妙にこざっぱりしているのが物足りないところだ。
対して、ヨーロッパ・リズム陣の方が丁々発止のやり取りがあって、面白いし、演奏に躍動感と切れがある。
LUDGRENも内心「これはヨーロッパで演奏しているほうが面白いワイ!」と思ったかどうかは知るところではないが・・・。   (2006.04.29)