JACOB CHRISTOFFERSEN
美しいバラードを書く反面、無機的な曲も書くということで、得体の知れないところがある
1週間にわたって聴いてきたが、その靄が晴れることがない
"FACING THE SUN"
JACOB CHRISTOFFERSEN(p), JESPER BODILSEN(b), JONAS JOHANSEN(ds)
2005年3月〜5月 スタジオ録音 (STUNT RECORDS STUCD 05072)

STUNT RECORDSとJESPER BODILSEN(b)の組み合わせは、今までに外れたことがない。STEFANO BOLLANIの2枚(JAZZ批評 210. と 264.)とKASPER VILLAUMEの1枚(JAZZ批評 243.)はいずれも5つ★を献上した優れものだ。そうそう、ベースはBODILSENではないがCARSTEN DAHLの1枚(JAZZ批評 246.)もSTUNTの味わい深いアルバムだった。
今回、このアルバムが紹介されたときにSTUNTとBODILSENの組み合わせなら、試聴するまでもないと直ぐに予約を入れた。待つこと、およそ1ヶ月でゲット。ひょうきんなジャケット・デザインが期待感を煽った。
海外ではこのSTUNT RECORDS、日本では澤野工房やMARSHMALLOW RECORDSのように真摯なレコード制作を続けるマイナー・レーベル(失礼!)は絶対に生き残って欲しいと思う。一方で、山中千尋のように好んでこういう真面目なマイナー・レーベルから去っていくミュージシャンもいるから世の中不思議だ。

さて、このアルバムであるが、評価の分かれるところだろう。僕としては、色々な点で不満の残る部分がある。例えば、BとFの無機的な演奏。その一方でCやFの美しいバラードが配置されているが美しいだけで終わっているところが物足りない。また、DやIのような難解なリズムの曲もあって、掴み所がない感じなのだ。この感じは最初から最後まで、僕の中にわだかまっていて、スカッとさせてくれない。

@"FACING THE SUN" 
A"EVERY THING I LOVE" COLE PORTERの書いた曲。
B"FENSTER AND MCMANUS" 無機的なテーマ。美しさのかけらもない。
C"REMEMBERING" 一転して美しいバラード。美しいだけでなく、もう少しの「突込み」が欲しいところだ。
D"ON THE HORIZON" 何か、スカッとしないなあ。
E"SING SONG" ミディアム・テンポの軽快な曲。BODILSENのベースが快い4ビートを刻む。
F"APOLOGY" 急速調の4ビートで始まるが、テーマがこれも無機的。当然、アドリブも無機的。面白味がないんだなあ。
G"HOMECOMMING" 今回も一転して美しいバラードの展開に。
H"ALL OF YOU" これもCOLE PORTERの曲。
I"TRANSFORMATION GAME" 難解なリズムだ。

COLE PORTERの曲が2曲。それ以外の8曲全てがCHRISTOFFERSENのオリジナル。美しいバラードを書く反面、無機的な曲も書くということで、得体の知れないところがある。1週間にわたって聴いてきたが、その靄が晴れることがない。
ピアノに今ひとつ「華」がないし、グループとしての緊密感、一体感ももうひとつというのが率直な感想だ。   (2005.10.08)



独断的JAZZ批評 299.