TORBEN BOTKER BJORNSKOV
また、聴き返そうとするのに少しばかりの勇気を必要とする
"CHANGES"
KASPER VILLAUME(p), TORBEN BOTKER BJORNSKOV(b), KARSTEN BAGGE(ds)
2003年8月 スタジオ録音 (MUSIC MECCA CD4061-2) 


ベーシストがリーダーのピアノ・トリオ。ピアノにはKASPER VILLAUMEが入っている。このVILLAUMEというピアニストは期待のピアニストであり、僕のお気に入りでもある。STEFANO BOLLANI、CARSTEN DAHL(INDEX A TO Z)と並ぶ、現在考えられるヨーロッパの3羽ガラスと思っている。これまでに2枚のリーダーアルバム(JAZZ批評 243.と268. )を紹介しているが、いずれも5つ星の秀作だ。
このアルバム、Fの"CARAVAN"以外は全てBJORNSKOVのオリジナルといった具合でなかなかの意欲作だ。オリジナルが大半を占めているので、じっくりと時間を掛けて聴かれることをお勧めしたい。

@"MESSENGERS" 8ビートで始まる。2回目のテーマ演奏から急転直下、倍テンの4ビートが唸りをあげて終わる。
A"CHANGES" 
B"CLOSER" 典型的な32小節の歌もの。この曲に関しては、音作りがMARTI VENTURA(JAZZ批評 287.)のトリオとよく似ている。心地良い4ビートを刻みつつ、徐々にピアノのテンションが高まっていく。その後に続くBJORNSKOVのベース・ソロは良く歌っているし、実にいい音で鳴っている。何気ないけど、じっくり味わいたい佳曲。このアルバムの中では一番良いかな。

C"ANOTHER COUNTRY" VILLAUMEのピアノはタッチにメリハリがあって良い。最近は女性ピアニストなどでもガンガンにこれでもか!とばかりに弾きまくるプレイヤーも散見されるが、やはり、メリハリがあってこそ強弱が生きてくる。強と弱、疎と密、緩と急、美と醜、こうした相反する要素を上手に使い分けてこそ味が出てくると思うのだが・・・。
D"SEEKING SPIRITS" フリー・テンポで始まるワルツ。難しいテーマだ。単純明快とは行かない。
E"NO SPEECH" 

F"CARAVAN" ベース・ソロ(ドラムスが合いの手をはさむ) このベーシスト、只者ではないね。ベース一本でこれだけの躍動感を演出してみせた。そして、音が良い。
G"SEPTEMBER" これもベース・ソロで始まる。ベースの倍音が効果的。この曲はBJORNSKOVのオリジナルと言うけど、どこかで聞いたことがあるような・・・?
H"7/8 KATOKA" ウ〜ン、難しいテーマだ。
I"SILENCE" ピアノをバックにベースが歌う。

このトリオ、ベースがリーダーであるので主役はあくまでもベースだ。ほとんどの曲においてベースがソロをとる。そういう意味で少し鬱陶しい。ベースはベースで脇役に回った方がトリオとしての面白さは倍加するだろう。中にはこれはと思わせる演奏もあるけど、大満足とまでは行かない。KASPER VILLAUMEがピアノだっただけにその点が残念だ。
それと、どの曲もテーマに面白みがなく、懲りすぎで無機的な印象を与える。意欲的なアルバムであることは認めるが、もう少し艶っぽさがあれば良かった。例えば、2〜3曲、スタンダード・ナンバーを入れれば良かったかも知れない。当然ながら、曲の良し悪しはアルバムの良し悪しに直結する。
僕は何回となく聴いているが、一向に愛着が湧いてこないし、また、聴き返そうとするのに少しばかりの勇気を必要とする。
DAG ARNESEN(JAZZ批評 284.)の全曲、オリジナル・アルバムに比較するとこの点が決定的に弱いと思う。   (2005.09.22)



独断的JAZZ批評 296.