DON FRIEDMAN
ジャズの世界も政治の世界と同じように、50〜60歳は洟垂れ小僧で、70歳で一人前か?!
"SALZAU TRIO LIVE AT JAZZBALTICA"
DON FRIEDMAN(p), MARTIN WIND(b), TERRI LYNE CARRINGTON(ds)
2004年7月 ライヴ録音 (SKIP SKP 9058-2) 


DON FRIEDMANのアルバムを紹介するのは9枚目にあたる。よく比較の対象になるBILL EVANSのアルバムが6枚であることを考えれば多いかもしれない。何故なら、FRIEDMANのファンを自認しているからだ。それともうひとつ、EVANSは過去の人であり、FRIEDMANはバリバリの現役だということ。'04年のこのアルバムの録音時、FRIEDMANは70歳を数えていたようだ。ますます、元気!年を取る毎にかくしゃくとしてバリバリ弾いている。若いときより、より雄弁に語るようになったと思う。
今回のトリオはベースにドイツ人の期待の新鋭、MARTIN WINDを従えている。このMARTIN WINDと言えばBILL MAYS(JAZZ批評 130.176.)を直ぐ連想してしまうが、今回は興味深い組み合わ
せとなった。更にドラムスには女性ドラマーのTERRI LYNE CARRINGTONが参加している。しかも、ライヴだ。
既に発売されている"WALTZ FOR DEBBY"(JAZZ批評 119.)とは
ABEが重複しているし、"TIMELESS"(JAZZ批評 198.)とはCが重複している。いわば、FRIEDMANの十八番を集めたライヴ・アルバムといっても良いかも知れない。DEFがFRIEDMANのオリジナル。

@"I HEAR A RHAPSODY" 
録音があまり良いとは言えない。ベースの音がモゴモゴしているのが残念だ。
A"YOU MUST BELIEVE IN SPRING" 
MICHEL LEGRANDの書いた美しい曲。ピアノのイントロ〜テーマと入りベースとドラムスが絡んでいく。ドラムスがバタついており、気配りも足りない。従って、緊密度に欠ける。13分もの長丁場だし、冗漫な印象を拭いきれない。
B"BUD POWELL" 
この曲はCHICK COREAの書いた曲。この曲に触発されて、CHICK COREA & FRIENDSの"REMEMBERING BUD POWELL"を戸棚から引っ張り出して聴いてみた。次回、(JAZZ批評 290.)アップしようと思う。
C"ALONE TOGETHER" 
長いイントロの後、インテンポと同時にテーマに入る。ここでもドラムスの手数が多く、配慮が利いているとは言い難い。長いドラム・ソロの後、テーマに戻る。約11分。

D"MEMORY OF SCOTTY" 
"SCOTTY"というのは、恐らく、FRIEDMANが昔、一緒に生活を共にしたことのある天才ベーシスト、SCOT LAFAROのことだろう。WINDがアルコでテーマを奏でる。
E"35 W 4TH STREET" 
F"HALF & HALF" 
テーマは面白いのだけど、ドラムスがドタドタバタバタとうるさい。余裕全くなし。

女性のドラマーが参加したアルバムは初めてだ。女性ピアニストにもよくある事だが、やはり「男勝り」のプレイを試みるプレイヤーが多いように思う。ピアノの場合はタッチは強く、ギンギンギラギラの演奏だ。男に引けを取りたくないと思うのだろうか?
僕は女性には女性ならではプレイがあっても良いように思う。「男勝り」のプレイというのは、持てる力の100%、もしくは、それ以上を狙うため、得てして余裕がない。体力差は歴然とあるわけだから、その認識の上で、己がプレイを確立した方がもっと活躍の場が広がると思うのだが・・・。 

齢70を重ねたFRIEDMANのピアノは素晴らしいの一言。ますます力強く、雄弁になっているような気がする。ジャズの世界も政治の世界と同じように、50〜60歳は洟垂れ小僧で、70歳で一人前か?!

残念ながら、このアルバムにおけるCARRINGTONの参加はネガティブな方向に出ていると思う。これは女性だからということではなくて、一ドラマーとしてみての話だが。  (2005.08.20)



独断的JAZZ批評 289.