CHICK COREA & FRIENDS
たまには、趣向を変えて浮気をしてみるのもいいもんだ!
"REMEMBERING BUD POWELL"
CHICK COREA(p), CHRISTIAN McBRIDE(b), ROY HAYNES(ds), KENNY GARRETT(sax),
JOSHUA REDMAN(sax), WALLACE RONEY(tp)
1996年 スタジオ録音 (STRETCH MVCR-247)
前掲(JAZZ批評 289.)のDON FRIEDMANのピアノトリオ・アルバムに含まれていた"BUD POWELL"に触発されて戸棚から引っ張り出したのがこのアルバム。この曲はFに2管編成で演奏されている。この曲だけがCHICK
COREAのオリジナルで、それ以外は全てBUD POWELLの書いた曲。このアルバムでは3管編成〜2管編成〜ピアノ・トリオ〜ピアノ・ソロまで曲によって編成が変わっている。
このアルバムはCHICK COREAが敬愛するBUD POWELLを20世紀の大いなる遺産として再認識してもらうために世界ツアーまで敢行した1大プロジェクトだったと言う。因みに、1996年7月に、このメンバーで来日し好評を博したという。
兎に角、リズム隊が素晴らしい。前掲のJAZZ批評 289.にアップしたドラマー、TERRI LYNE CARRINGTONなどもこのHAYNESのドラミングを見習って欲しいものだ。
ジックリと強力リズム隊の底力を堪能していただきたい。サックスはBとDのみにKENNY
GARRETTが入る。
@"BOUNCIN' WITH BUD" 2管編成。KEITH JARRETTなども良く取り上げているバップ色満載の佳曲。伸びやかなRONEYと力強いMcBRIDEのソロが歌っている。でも、ポイントはHAYNESのドラミングだろう。
A"MEDIOCRE" 2管編成。トランペットのRONEYが泣いている。
B"WILLOW GROVE" 3管編成。ブラスのソロではピアノのバッキングがほとんどない。HAYNESのドラムスとMcBRIDEのサポートが最高にセクシーでスウィンギー!リズム陣がしっかりしているとピアノのバッキングが必要ないと感じるほど!だからこの曲の大半はベース、ドラムス、ブラスのトリオ演奏になっている。力強いMcBRIDEのベースを堪能頂きたい!
しかし、何と言っても、注目して欲しいのはHAYNESのドラミングだ!
C"DUSK IN SANDI" ピアノ・トリオ。
D"OBLIVION" 2管編成。アップ・テンポの快演。
E"CLEOPATRA'S DREAM" 2管編成。この曲だけがこのアルバムのボーナス・トラックで、再発盤には必ずしもこの曲が入っているとは限らないようだ。(要・注意) BUD POWELLの定番というと、この曲が思い浮かぶが、やはり、しっくりと収まるところに収まった感じ。この演奏を再発盤では聴けないのが返す返すも残念だ。ベースが唸り、ドラムスが踊り、ブラスが咆える!CHICKのピアノも冴えに冴える!McBRIDEのベース・ソロも力強く良く歌っている。
F"BUD POWELL" 2管編成。COREAのオリジナル。RONEYのミュートでテーマが始まる。僕はこの曲は12小節のブルースかと思っていたのだが、どうも違うようなので数えてみた。12小節/12小節/18小節/12小節という54小節で1コーラスの構成になっているようだ。2コーラスのアドリブの後テーマに戻る。ちょっとひょうきんな面白さがある。
G"I'LL KEEP LOVING YOU" ドラムレス・トリオ。美しいバラードをJOSHUA REDMANのテナーが切々と歌い上げる。勘所を押さえたCHICKのピアノとMcBRIDEのベースがいいね。
H"GLASS ENCLOSURE" 2管編成。ちょっと大仰なテーマではある。
I"TEMPUS FUGIT" 2管編成。躍動感満載で、なおかつ、スリリング!CHICKのピアノが活き活きと歌い、RONEYのペットもJOSHUAのテナーもスリルに満ちている。極めつけがHAYNESのドラミングだ!
J"CELIA" ピアノ・ソロ。
2〜3管編成のジャズを聴くのは久しぶりだ。ひょんなきっかけで戸棚から引っ張り出しきたアルバムだが、実に刺激的な体験だった。いつもピアノ・トリオ中心に聴いているのだが、たまには、趣向を変えて浮気をしてみるのもいいもんだ!「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。 (2005.08.27)